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お客様です

新章突入です!

よろしくお願いします!





 時刻は昼の真っ只中。


 魔王城の廊下にて、そこら辺で適当に拾ってきた木の棒で体を支えながら老婆のように歩く影が一つありました。


 透き通るような金色の髪。宝石と見間違えるほどの鮮やかな翡翠眼。

 特徴的な尖った三角耳は、その人が人間ではなく亜人、今はとある理由によって絶滅寸前となった『エルフ』だと証明しています。


 それはそれは美しい見た目の女性でした。

 人通りの多いところを歩けば、ほとんどの人が振り向いて二度見をするほど……。


 百年に一度。

 絶世の美女。

 神の奇跡。


 そう言っても過言ではないほどの容姿を体現した彼女は──私です。


 …………はい。

 久しぶりに調子に乗りました。


 そんな絶世の──コホンッ。失礼。

 そんな私は今、過去最高に内心が荒れ果てていました。


 理由は一つ。


 我が主人にして、最強のお子様──魔王ミリアさんが原因です。



「はぁ、はぁ……ったく…………あのチビ……」


 城で働く従者の方々が聞けば、その無礼な口調に恐怖するところですが……幸いなことに今は周囲に誰もいません。

 だからって悪口を言いまくっていいのかと問われたら、まぁ細かいことは気にするなと私は答えます。それほどまでに今だけは愚痴を垂れ流したい気分なのです。



 ──っと、まだこうなっている理由を話していませんでしたね。


 あの事件は早朝、唐突に起こりました。

 と、わざわざ壮大な入り方で説明するのも面倒なのでサラッと言っちゃいますが、早朝から魔王が私の部屋に乗り込んできて、いつもの『遊んでコール』をかましてきたのです。


 まぁ当然「嫌だ」と答えたのですがそこは魔王。人の言葉なんて聞いちゃいません。

 結果私は部屋を壊されそうになりながら窓の外へ緊急脱出を成し遂げ、いつぶりかの城下街を巻き込んだ逃走劇が始まったのです。


 今はその帰りですね。


 寝起きで体が本調子ではなく、完全に撒くのに時間がかかってしまいましたが……あの魔王、未だに私が街の中に隠れ潜んでいると思って、必死に探していることでしょう。ざまぁ。


 もう少しすれば、ウンディーネとアカネも戻ってくるでしょう。

 共に行動すれば目立つと思って別々に行動しましたが、まさかここまで完璧に引っかかってくれるとは思いませんでした。……ちなみにこの作戦はアカネさんの提案です。妻が有能で助かりました。




 と、そうしているうちに自室へ辿り着きました。


「はぁ……疲れた。もう4ヶ月くらいは引き篭もってやる……」


 扉を開け、愛しのベッドちゃんへ視線を向け────私は停止しました。



『遅かったではないか、娘』


 そこに先客がいました。

 胸元を大きくはだけさせた、ちょっとワイルドなお兄さんです。


 燃え盛るような赤い髪に、赤い瞳。

 ……って、まじで燃えてません???


 ベッドちゃんには防護魔法を掛けているので、目立ったダメージは無さそうですが……いや、やっぱり燃えてますよね。何ですか。焼身自殺の真っ最中ですか? 私の部屋で? ………………なぜ?


「あの、私の部屋を事故物件にするのはやめていただけます?」


 とりあえず注意をしてみました。


『はぁ? 何を言っているのだ貴様は』


 めちゃくちゃ呆れられました。

 そうしたいのは私の方なのですが、今は我慢しましょう。


『…………まぁいい。俺は貴様に用があって来たのだ』


 どうやらお客様のようです。

 焼身自殺中のお客様なんて初めてで、どう反応していいのか分かりませんね。

 初見のインパクトでも狙っているのでしょうか? 見た目も心臓にも悪いので、そういうのはやめていただきたいのですが……言って聞くような方では無さそうですね。


『あの二人を返してもらうぞ、娘』


 はて? あの二人……とは何のことでしょう?

 すぐに思い浮かぶのは妻たちの姿ですが……返すも何も、彼女たちは私の妻です。そう言われて「はい分かりました」とは頷けません。


 なので、私の答えは一つです。


「お断りしま────」


『では、力づくで奪い返すのみだ』


 男性の手を向けられ、部屋を埋め尽くすほどの巨大な火球が放たれました。




開始早々、魔王へのヘイトが高まるリーフィアさん。

そして現れた焼身自殺者の正体とは……!?


次回もお楽しみに、です!

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