違和感の正体です
アカネさんと別行動になった後、私は使用人の方々に連れられて着付け部屋まで来ました。
……ですが、何ででしょう。
なぜか無性に違和感を感じてしまいます。
それはアカネさんと別れてすぐに気が付きました。
その正体を突き止めようと道中考えていましたが、結局それは分からないまま。
「リフィ様、こちらです」
「……………………」
「リフィ様?」
「……ああ、はい。今行きます」
これ以上考えていても、分かりそうにありません。
仕方ないと諦め、今は目の前のことに集中しようと部屋に入り────
「は?」
そこにあった光景を見て目を丸くさせました。
部屋の中心に鎮座していたのはウェディングドレス。
花嫁衣裳と言ったらこれでしょう。と断定できる、前世の世界でも浸透していた純白のドレスです。
和の国に西洋のドレスがあるのは場違いなのかもしれませんが、私にとってはこちらの方が馴染み深く、懐かしいとさえ思えてしまいます。
しかし、なぜここに?
これを着るに相応しいのは、アカネさんです。
新郎役のリフィ・ウィンドではありません。
「あの、部屋を間違えていませんか?」
「いいえ、こちらで間違いありません」
「えぇと……? それは、どういう」
「──驚いたかな?」
と、誰かが着付け部屋に入って来ました。
その人物を目にして、私は再び呆気に取られました。
「お、お義父さま?」
なぜ、彼がここに居るのでしょう。
ここは普通、娘の方へ行くのでは?
そして「驚いたかな?」とは、一体……。
「おや、リーフィアさんはまだ分かっていないようだ。……くくっ、サプライズ成功だな」
「っ、気付いていたのですか」
彼の口から聞くことはないと思っていた、私の本名。
今まで気付かれている様子が無かっただけに、驚きは大きいです。
それと同時に、先程まで感じていた違和感の正体が分かりました。
私の周りには女性の使用人しかいません。普通、新郎の着替えの手伝いをするなら男性が付いてくるはずです。
いつバレたのでしょう。
…………いいえ、そんなことよりこの状況をどうするかですよね。
アカネさんのお願いとは言え、私は彼らを騙していた。それを謝るのが先でしょう。
「申し訳ありません。皆様を騙す形となってしまいました」
「ん? ……ああ。いや構わないさ。そのことについては別に怒っていない。むしろ、娘が一人増えたと言ったら皆喜んでいたぞ」
「………………はい?」
ちょっと、ステイ。
急に色々ありすぎて、私の脳が追いつかないのですが?
「男装していた理由は分かっている。アカネに言われたのだろう?」
「まぁ、はい……そうですね」
「まったく、あの子は何十年前の話を…………確かに昔は男女の婚約しか認めていなかったが、今では同性婚も法律で認められている。あの子はしばらく帰っていなかったため、知らなかったようだがな」
同性婚の申し出は案外多いぞ?
と、お義父さまは言います。
「……………………まじですか」
では、今までの苦労は?
息苦しいサラシを巻いてた私の頑張りは?
うっっっっっわぁぁぁぁ…………。
「すまない。此度は娘の暴走で迷惑をかけたな」
「あ、いえ……お構いなく」
力が抜けすぎて、変なことを言っていますね。
……でも、仕方ないでしょう。私の性別がバレていて、しかも和の国では同性婚が認められているなんて。
「予想以上に驚かせてしまったことには謝罪する。だが、これだけは忘れないでほしい。私たちはどちらの君も大歓迎だ。……あの衣装は、我が一族の気持ちだと思ってほしい」
そう言われ、ウェディングドレスに近づきます。
最高品質の布生地で作られた物だと、素人の私でも分かります。今は復興だ何だで忙しく、資金面も厳しいのに……私のためにこのような素晴らしい物を贈ってくれた皆さんには感謝しかありません。
──ああ、ダメですね。
涙を流すのは柄じゃないのに、我慢できそうにありません。




