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悩みは私に似合いませんね




 神様の乱入により、事態は収束へと向かいました。


 一応、何かあった時のために警戒はしていたのですが、バリツさんの中に巣食っていた魔力は完全に消え失せ、道中もこれと言った邪魔は入らず、私たちは無事に帰還することが出来ました。


 和の国も、お義父さまやお義兄さんの指揮により被害は最小限に抑えられたとのことで、復興は必要ですが最悪の事態になることは免れたようです。


 こちらも特に被害はありません。

 ミリアさんも軽傷で済みましたし、私の回復魔法でそれも完治しています。




 物語風に言うならば、これで一件落着です。

 少し思うところはありますが、今は無事に終わったことを喜ぶべきなのでしょう。





「……………………」


 私は一人、窓に腰掛けて空を眺めていました。

 今は深夜。周りは静かで、星はキラキラと美しく輝いています。


「なんじゃ、浮かれない顔をしおって」


「…………アカネ」


 ベッドで先に休んでいたはずですが……起こしてしまいましたかね。


「勝手に目が覚めただけじゃ。気にするな」


「そうですか。……こっちに来ますか?」


「うむ」


 手招きをすると、アカネは上着を羽織りながらこちらへ寄ってきました。

 二人で窓際に寄りかかるのは、流石に狭いです。風を操って椅子を手繰り寄せ、二人でそこに腰掛けます。


「昼間のことを考えていたのか?」


 私の考えなど、アカネにはお見通しだったようです。

 今更隠し通せるとは思っていなかったので、素直に頷きます。


「少し……自分の力不足を嘆いていました」


 神様のおかげで被害は最小限に済みましたが、手助けが無ければ、私はバリツさんを見捨てることになっていたでしょう。


 その選択をすることに後悔はありませんが、自分の力不足を嘆くには十分な理由です。


「妾は、リーフィアが居てくれて良かったと思っているぞ。……父上や兄上から聞いた。お主が手を貸してくれたおかげで立て直せたとな。それが無ければ、今頃この国はもっと酷いことになっていた。今日は誰もが眠れない夜となっていたじゃろう」


「ですが……」


「うじうじとリーフィアらしくないぞ? 皆がお主に感謝している。妾たちも同じだ。それで良いではないか」


 私らしくないのは、理解しています。

 今までは結果オーライで全て済ませていました。


 しかし、今回は違う。


 私の大切な人たちばかりが危険な目に遭ったことで、気持ちが落ち込んでいるのです。


「あの御方に言われたこと、気にしているのか?」


「……そう、かもしれません」



『やがてお前は全てを失うことになる』


 今回がその言葉通りになる可能性もありました。

 だから、余計にそれを引きずっているんでしょうね。



「妾の考えを言わせてもらうのであれば、何も問題はない」


「……はい?」


「お主は一人で抱え込みすぎなのじゃ。妾たちのことを頼ってくれたら嬉しいのに…………ったく、面倒臭がりな癖に、そういうところだけは真面目な奴だから困るな。もっと堂々と構えていればいいものを。……もしや睡眠不足なのではないか? もっと眠ればいつものリーフィアに戻るか? ほれ、さっさと寝るぞ。今のお主は扱いづらくてしょうがない」


「あの、え、ちょ……アカネ?」


 抵抗する暇もなく、私はベッドに運ばれました。

 慌てて起き上がろうとしたところを、アカネさんの馬鹿力によって抑え込まれます。


 完全な抱き枕状態です。

 まさか、私がそれを味わうことになるとは思いませんでした。


「リーフィアは一人ではない。もっと頼ってくれ。……大好きな旦那様に信じられていないのは、寂しいのじゃ」


「…………はい。ごめんなさい」


 信じていないわけではありません。

 でも、そのせいで傷ついてほしくない。



 その気持ちが、彼女たちを悲しませているのですよね。



「本当に、頼ってもいいのですか?」


「ああ、遠慮するな」


「……後で文句を言いませんか?」


「今日のように、もっと頼れと文句を言うかもしれないな」


「…………アカネ」


「なんじゃ?」


「好きです。ずっと一緒にいてください」


「っ! お、おおお主、急に何を──むぐっ!?」


 私は、自然とアカネさんの口に吸い寄せられました。

 気が付いた時には、その口を私の口で塞いでおり、間近には目を見開いた彼女の顔がありました。


「キャラじゃない私は、今日で終わりです」


 明日からは『自分』に戻ります。

 だから、今だけは情けない私を受け入れてほしい。


「ありがとうございます。アカネ」


 貴女のおかげで、今日は気持ちよく眠れそうです。




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