本気を出します
お待たせしました…!
私には、ゲームで言う『火力』がありません。
固い相手や耐久値のある相手に対して、決定打になるような攻撃ができない。
暴走している癖に無駄にタフなバリツさんを相手にすると、厳しい戦いになってしまいます。
魔力が周囲にある限り絶対に倒れることはありませんが、それは相手も同じ。
しかし、今の私にはアカネがいます。
鬼人の特性……というより、最早アカネさん自身の特性となっていそうですが、彼女の腕力は凄まじいものがあります。それはもう、私の防御力を貫通するほどに。
『あれ? チート能力を授かっていらっしゃる?』と思ってしまうほどの、人外の力です。
そんな嫁が一緒に戦ってくれる。
これほど頼もしいことはありません。
でも、彼女を頼ってばかりではいけません。
何より、夫になる者として少しは頼れるところを見せていかないと……ですよね。
「アカネ。数分だけでいいです。時間を稼いでください」
「了解した!」
合図と同時に、アカネさんは地を蹴って飛び出しました。
目にも留まらぬ速さで肉薄し、そのまま力任せの肉弾戦を繰り広げます。
「あの人、魔力で身体強化している感じもないのに……どうして暴走しかけているバリツさんと互角にやりあっているのでしょう?」
その様子を眺めながら、ポツリと呟きます。
『あの鬼、普通じゃないわよ……あんなデタラメな力は初めて見たわ。リーフィアのお嫁さんだって聞いたけれど、なんなの?』
「さぁ、私にもちょっと……」
シルフィードも同じ気持ちだったのか、目の前で繰り広げられる打撃の応酬を呆れ口調で見守っていました。
『あなた、やっぱり近い将来尻に敷かれるわよ。間違いないわ』
「お気になさらず。逃れられぬ運命だと思っていますので」
『あ、そう……御愁傷様』
「問題ありませんよ。好きな人の尻に敷かれるというのは、案外悪い気はしませんから」
と、雑談をしている間も、準備の手は止まっていません。
アカネさんが稼いでくれている時間ですもの。
それを無駄にはできません。
「お二人も、協力をお願いします」
『任せて……!』
『ディーネに同じく。サポートは得意分野よ』
準備をしつつ、アカネさんの様子も逐一観察します。
両者、今の所は互角に戦っています。
ですが、油断はできません。
互角とは言え、アカネさんが得意とするのは肉弾戦のみ。それに対して、今のバリツさんは未知数です。あの禍々しい魔力によって新たな力に目覚めていても、おかしくは────
「き、ぇろおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
苛立たしげに轟いた咆哮。
それに応えるように、バリツさんの体から魔力が飛び出し、数本の触手となってアカネさんの体を襲います。
多勢に無勢。
どうにか応戦しようとしていたアカネさんですが、程なくして触手に捕まってしまい、全身の自由を奪われてしまいました。
「アカ、!」
「──ふんっ!」
気合いの入った声。
彼女を拘束していた触手は、いとも容易く引き千切られました。
「ん、どうしたのじゃ?」
「…………あ、いえ。お構いなく」
あー、そうですか。
あんなにヤバそうな触手を「ふんっ!」で対処しますか。
…………わぁー、すごーい。
『ほんと、なんなのかしら、あれ……』
後方に待機しているシルフィードの呟きが聞こえました。
……ええ、私も同感ですよ。
「でも、まぁ……」
ここまで見せつけられたら、私も頑張らなければなりません。
だから、少々──本気を出します。
活動報告の方にも載せましたが、今日から活動再開します!ご迷惑をおかけしました!!!
首を長くしすぎてろくろっ首になってしまった読者の方々、そろそろ人間に戻ってもろて……(何を言っているんだ)




