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二人目の契約ですか?




 アカネさんの拷問は続きました。

 やることは簡単。気絶したわんちゃんをぶん殴るだけです。


 しかし、彼は一向に起きる気配がありません。


 白目を剥いて完全にいっちゃっています。

 一体、あっちでどれほどのことをされたのやら……。


 想像するだけで身震いしてしまいますね。

 おお、こわっ。


「なんじゃ、これでも起きぬのか? そんなに強く滅多打ちにした覚えはないのじゃが……本当に、最近の男は貧弱すぎる。もう少しリーフィアを見習ってほしいな」


 いや、私は男ではないので。

 見習えと言われても困るというか……はい。口出しは怖いので控えます。



『ねぇねぇ、ちょっと……』


 と、拷問を観戦しているところで、シルフィードが恐る恐るといった様子で側に寄ってきました。


『あの亜人……鬼人、よね? 怖すぎるけれど、まさかあれが貴女の探し人なのかしら?』


「ええ、そうですよ。私の妻になるアカネです」


 そう言えば、彼女は『うわぁ』と顔を顰めました。


『貴女、将来尻に敷かれるわよ』


「ご心配なく。すでにそんな気がしていますので」


『手遅れなのね……ディーネも、苦労しそうね』


『え? ……ううん。アカネはすっごく優しいし、リーフィアはうちらのことを凄く大切に思ってくれるから……楽しい、よ?』


『そういう意味で言ったわけじゃないのだけれど……え? 優しい? あの慈悲もなく気絶している獣人を殴り続けている鬼人が? 嘘でしょう……?』


 信じられないと、シルフィードの目が物語っています。


 まぁ、今の光景を目にしていいれば信じられないのも無理はありません。

 アカネさんのことが大好きな私でさえ、今だけはめちゃくちゃ怖いと思っているので。


 本人に言ったら、間違いなくその拳がこちらに向くので、ここではお口チャックですけれど……。


「あれでも結構な乙女なのですよ。とにかく反応が可愛いんです」


「リーフィアぁ?」


「なんでもありません。続けてください」



 まさか私達の会話が聞こえているとは。

 ……焦りました。


 流石は地獄耳で────



「──リーフィアぁ???」


「どうかお構いなく」


 心の声まで聞こえるとか、本当に『それ』じゃないですかやだぁ。


『しばらく下界に降りていなかったけれど、人ってこんなにも……いや、やめておきましょう。私にも被害が来ることは望まないわ』


「ええ、賢い選択です」


 私達がやれることは、ただ一つ。

 この拷問を見届けることです。


『どうせだからもう一つ聞くけれど、あの鬼の隣にいるちっこいのは?』




 ──あ、そう言えば居ましたね。

 妙に静かだったので、存在すら忘れかけていました。




「あの方はミリアさんです。一応、魔王です」


「おいリーフィア! 一応ってなんだ! 余はれっきとした魔王だ!」


 っと、地獄耳がここにも一人。

 話題に出たことであの場から逃げる口実ができたのか、ミリアさんは大股でこちらに歩いてきました。


『魔王……? この、ちっこいのが?』


「なんだ。ちっこいとは無礼な奴め。……にしても見ない顔だな。おいリーフィア。こいつは何者だ?」


「彼女はシルフィードです。ウンディーネと同じ、原初の精霊の一体ですよ」


「──ブフゥ!?」


 うわ、きったね。


「お前ぇ……知らぬ間に二体目の原初の精霊と……まさか、すでに契約を?」


「いえ、まだですよ」


『リーフィアの近くにいると心地良いから、契約してあげてもいいのだけれど』


 シルフィードはそこで言葉を区切り、ちらりと横を見つめます。

 その視線の先にはウンディーネが……。


『今はやめておくわ。ディーネに嫉妬されたくないし、嫌われたくもないからね』


『…………別に、リーフィアがそれで助かるなら、うちは……』


『あら、それじゃあ契約しちゃってもいいのかしら?』


『……………………』


 途端にウンディーネは黙り込んでしまいました。

 私に抱きつく力が強められたので、頭を撫でてあげます。


 もしかして、他の精霊と契約したことで構ってもらえなくなるかもしれない。と思ったのでしょうか?


 そんなことはあり得ないというのに、ほんと可愛いですね。

 なら、私も他の精霊と契約するのは控えましょう。ウンディーネの期待を裏切るわけにはいきませんから。


『ふふっ、ディーネがこんなに嫉妬深いなんて知らなかったわ。本当に、長く生きてみるものね』


 シルフィードは微笑み、上機嫌にその場をくるりと回りました。


『そういうことで、私は貴女と契約はしないわ。……でも、力は貸してあげる。今回みたいに、ね』


 なんとも強力な助っ人ですね。

 本当に頼もしい存在です。


 まぁ、ウンディーネが一番ですけど。




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