正解の扉を見つけた先には
二度の水濡れでタイムロスした私達は、急いでアカネさんとミリアさんの救出に動き出しました。
「私は痕跡とか魔力の淀みとかわからないので、そこはお二人に任せます」
『うんっ、任せて!』
『大船に乗ったつもりでいなさい』
ウンディーネとシルフィード。
二人の魔力が可視化されるほどに高まりました。
肌がチリつくような感覚を間近で触れた私は、思わず息を飲み込みました。
『────────』
『────────』
二人は目を閉じ、極限まで集中しています。
どちらも聞き取れない言葉ですが……精霊の言葉でしょうか?
【言語理解】を取得している私ですら翻訳不可能とは、これぞ『人智を超越した力』というものなのかもしれませんね。
『『見つけた』』
声は同時に。二人は目を開け、一点を見つめます。
そこは、森の入り口だった場所。
無数にある扉の正解は、最も始まりに近い場所だったというわけです。
ほんと、ふざけてますね。
『リーフィア、あそこに扉がある……気がする。変な淀み。特に強くなっているから……』
『あそこが正解で間違いないわ』
と、言われても私には何が何だか。
二人の見ている方向を見ていますが、何も感じません。
「私はどうすればいいですか?」
『リーフィアは補助に回ってくれるかしら? 今から私達が扉を開くから、足りない分の魔力を頂戴』
「お安い御用です」
二人の間に立ち、手を握りました。
そこから均等になるよう、私の魔力を注いでいきます。
『……これは、想像以上に凄いわね。精霊と波長が合うどころの話じゃないわよ』
『温かい……リーフィアの魔力、大好き』
おそらく、それは【精霊の加護】による影響なのでしょう。
このスキルがあるおかげで私は精霊に好かれる体質になりました。ウンディーネと出会えたのも、精霊の加護のおかげなので、この世界に来て一番感謝していると言っても過言ではありません。
『っ! り、リーフィア……! 恥ずかしいよぉ……』
『熱々ねぇ。見せつけられているこっちの身にもなってほしいわ』
あら、私の思っていることが魔力にのって流れていたようですね。
ウンディーネは顔を赤くして、シルフィードは呆れたように笑っています。まぁ、今の内にウンディーネは私のものだと主張しておくのも良いでしょう。
『リーフィア……!』
「おっと、失礼」
どうにもウンディーネのことを考えると、変な方向に行ってしまいます。
ここは集中しましょう。
アカネさんとミリアさんのためと思えば、頑張れます。
……でも、いつまで魔力をやっていればいいのでしょう。
注ぎすぎてキャパオーバーされても困りますし、少なすぎても足を引っ張ってしまう。二人は集中し始めちゃったので、途切らせるのも申し訳ないです。
とりあえず、こちらがガス欠しない程度に注ぎ続けましょう。
──と言ってから、一時間が経ちました。
流石に長くないです?
ずっと絶え間無く魔力を送り続けていますが、もう送るというよりも吸われている感覚です。
というか、一時間も二人に魔力を送り続けている私って凄くないですか?
まだまだ余裕ではありますが、若干疲れてきました。負担にならないように魔力を与えるのって、意外と精神使うんですよ、これ。
「あの、お二人とも? そろそろ進捗の方は……」
『っ、なにこれ!』
「ひえっ、申し訳ありませ──何があったんです?」
突然、シルフィードが顔を強張らせました。
私が原因で何かが起こったわけではありませんよね? ね??
『……内側からっ……破られる!』
ウンディーネの悲痛な叫び。
それと同時に、ガラスが割れるようなけたたましい音が間近で鳴り響きました。
驚きに耳を塞いで目を閉じ、ゆっくりと開くと、そこには────
「は?」
「む?」
「ぬ?」
『え?』
『あら』
重なる五人の声。
「あ、は……はぇ?」
私は訳が分からず、変な声を出します。
ですが、それは仕方ない。
私達の前の前には、二人の人影がありました。
片方は背が小さく、どこか勝気な雰囲気を保った少女。
もう片方は、私と同じくらいか少し小さい背丈の、額に二本の美しい角が生えた女性。
その人物は、私が探し求めて二人で──。
「お? おおっ、リーフィアがいるぞ!」
「外に出られたのか? ……何はともあれ、会いたかったぞ。リーフィア」
「ミリアさん? アカネさん……?」
私は、やはり現状を理解できませんでした。




