二人目の最高位精霊です
「──っ、くしゅん」
理不尽な悪天候 (私限定) が発生したことで、私達は森の入り口で休むことになりました。
「寒いです」
『ごめんね。ごめんねっ……』
現在、私は服を脱いですっぽんぽんになっています。
どこかの天気の神様が降らした滝のような雨のせいで、全身ずぶ濡れになってしまいましたからね。乾かさなければ、湿った感覚が気持ち悪くて本番どころではありません。
それに、動くよりも先に片付けたいこともありますし……。
「それで、あなたは」
『改めて自己紹介をしたほうがいいわよね。私はシルフィード。そこにいる水のディーネと同じで、原初の精霊と言われているわ』
「……………………」
『その視線、疑っているのかしら? ……まぁ、急に現れた奴を信用することのほうが難しいわよね。しかも、この状況よ。全員が敵だと思って動くのが正解よ』
「……………………愛称呼び、羨ましい」
『リーフィアっ!』
『──ぷっ、あははっ! そう、そうくるのね貴女は。風に聞いていたけれど、本当に面白い子』
ウンディーネは非難の声を上げ、シルフィードは腹を抱えて笑いました。
同じ原初の精霊なのに、ここまで違いが出るものなのですね……って、当たり前か。
「貴女のことを信用する前に、いくつか質問をしてもいいですか?」
『いいわよ。なんでも質問してちょうだい』
言質は取りました。
では、遠慮なく。
「生まれたてのウンディーネは、どんな子でした?」
『リーフィア!?』
『とっても可愛かったわよ。まだ不完全な私達だったから、完全に形を保てなくてね。すっごい弱虫で人見知りで、そのくせ甘えたがりで……水がぽよぽよ跳ねさせながら、もっと話したいって主張してきたのよ。こんな可愛い子が存在するのかと、もう胸がキュンキュンしちゃって……』
『フィーちゃん!』
『あ、記録している映像があるわよ。見たい?』
「見ます」
シルフィードに近寄る私の体が、後ろからガシッと掴まれました。
「何するのですか、ウンディーネ。あっちに行けません」
『行かなくていいから……! 怒るよ!?』
強大な魔力を感じて上を見ると、直径10メートルほどの水の塊が頭上に浮かんでいました。
……あ、これはマジでやばいやつだ。
そう思い、私は乾いた笑い声をあげます。
「嫌だなぁ、冗談に決まっているじゃないですかぁ……(まぁ、後で見ますけど)」
『そうよぉ。本気にしないのっ(まぁ、後で見せるけど)』
なんとなく、想いが通じ合ったような気が……。
私とシルフィードは見つめ合い、ほぼ同時に親指を『ぐっ』と立てました。
『……もうっ、勘違いさせないでよね……』
頭上の水球が霧散しました。
──ちょろい。
『…………何か言った?』
「いいえ、なんでもありません」
──コホンッ。
「それで、シルフィードは」
『長いからシルフィでいいわよ。貴女だけ特別』
「……シルフィは何のためにここへ?」
『言ったじゃない。貴女を助けるためだって』
と言われても、思うのはやはり「どうして?」という感情です。
『私、これでも貴女のことをずっと見てきたのよ。面白そうな子がいるって眷属の子達から教えてもらって、そしたら近くにディーネがいるじゃない。より興味をそそられて、空からずっと観察していたの』
『……フィーちゃんは風と空の支配者なの。全ての空はフィーちゃんの目になる。どこにいてもフィーちゃんから逃れることは出来ないんだよ』
『まぁ、地下に逃げられたら、流石の私も手の出しようがないけれどね』
態度は軽くても、やはり原初の精霊。
全ての空が彼女の支配下にあるとか、普通に考えてやばいですよね。
ウンディーネは全ての水があるところに目があり、シルフィードは全ての空に目がある。二人がいるだけで逃げ場は完全に断たれていると言ってもいい。
「そんな凄い精霊が、どうして私なんかに協力を?」
『知ってる? 精霊っていうのは、すっごく気まぐれなの。悠久の時を生きている影響なのかしらね〜』
「つまり、特に意味はないと?」
『そう捉えてくれて構わないわ。まぁ、単純に貴女とお近づきになりたかった。というのもあるけれど……』
シルフィードの手が私に触れる直前、それは正面に作り出された結界に遮られました。
『いくらフィーちゃんでも、うちのリーフィアは渡さないから』
『とまぁこんな感じで、不用意に近づけばディーネの嫉妬が見られるのよ。可愛いでしょう?』
「控えめに言って、めちゃくちゃ可愛いです」
『フィーちゃん! リーフィア!』
顔を真っ赤に染めて、ウンディーネは力一杯に叫びました。
…………ほら、やっぱり可愛いじゃないですか。
久々の、のんびり回です。
いやぁ……癒される(なお、次回からはまた動く予定)




