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はい、どーん




 洞窟全体を震わせる絶叫が轟きました。

 それは山のように大きなゾウさんから発された声です。



 何をしたのかって?



 そこに隙だらけな穴があったので、全力の魔力砲を何度も打ち込んでいるだけですが……なにか?



「はいどーん。もう一回どーん。ついでにどーん。おまけでどーん」


 次々と打ち込む度に、ゾウさんの体は大きく揺れました。

 どうにかしようと拳がこちらに振り下ろされますが、それは逆に自分自身を追い込む結果になります。その上私には一切のダメージがないのですから、こっちはやりたい放題です。


 勘違いしないで欲しいのですが、遊んでいるわけではありませんよ?


 私の攻撃は、ゾウさんの皮膚に通りません。

 魔法はもう無害。スキルカンストしている剣術でさえも、かすり傷を与えられないときたものです。


 なので、正面突破は無理だと理解しました。


 ですが、それは表面でのお話。

 どんなに強靭な肉体を持っていたとしても、内側は弱い。


 外側がダメなら内側からってよく言いますからね。知りませんけど。




 ──とまぁ、そんなこんなで私は魔力砲をぶっぱしているわけです。




「でも、耳障りなのが唯一の欠点ですよねぇ……」


 ドッカンドッカンうるさいですし、パオーンパオーンとうるさいです。

 前者は私がやっているのですが、後者は思い切りゾウさんが悪いと思います。馬鹿みたいに大きくて固いのですから、ちょっと脳味噌あたりが爆発する程度のこと、声くらいは我慢してほしいものですね。


「ごめんなさいね」


 急いでいるのと、そろそろ私の耳が限界を迎えているので、もう終わりにしましょう。




「魔力砲、最大火力です」


 普段、私は魔法を使う時は詠唱をしていません。

 やったとしても『風よ』という適当なものです。細かい詠唱はしません。


 単純に必要ないというのが一番の理由ですが、他にも大きな理由はあります。


 私が直接こうして魔力に語りかけると、周りにいる微弱な精霊たちが張り切ってしまうんですよね。そのせいでこちらの意思に反して規模が大きくなってしまい、私ですら収集がつかなくなります。ついでに魔力もごっそりと持っていかれるので、連発はできないのです。


 なので、細かい指定をすることは比較的少ないのですが……今はそうなることを私が『許可』しました。


 私の仕事はとても簡単です。

 ただ求められる魔力を与えるだけ。

 それだけで、後は全て身近にいる精霊がやってくれます。


「後は、よろしくお願いします」


 瞬間、魔力の暴風と称するべき渦が周囲に巻き起こりました。

 ゾウさんはそれを耳元で感じて焦ったのでしょう。先程から何度もぶつかってくる拳が、更に勢いを増しました。


 ですが、本能の危機を今更感じても、もう遅いです。




 ──デキタヨ。

 ──デキタ、デキタ。

 ──スッゴイノ、デキタ。

 ──イツデモ、ダイジョウブ。




 微かに届いた、子供のような第三者の声。

 私はそれに従い、人差し指を目の前に広がる巨大な空洞に向けます。


「はい、どーん」


 放出されたのは、ビー球くらいのとても小さな丸い魔力体。

 それはふわふわと宙を漂い、ゆっくりとゾウさんの内部に入っていきました。


 それを確認した後、私は全速力でその場から緊急離脱しました。

 あれがどのような影響を及ぼすのかを、精霊が教えてくれたからです。



 ──クルヨ。

 ──オモシロイノ、クルヨ。

 ──タノシミ、タノシミ。

 ──ホラ、ソロソロクルヨ。



 ゾウさんは動きません。

 逃げる私を視界に入れているはずなのに、先程の猛攻は何だったのか、石像になったようにピタリと動きを停止させました。



「まさか、本当に像さんになりまし────っ!」


 馬鹿なことを口に仕掛けたところで、ゾウさんの頭部が風船のように破裂しました。

 素直にびっくりした私は呆然とその様子を見つめ、数秒後にシャワーのような血の雨が降りかかったところで我に返ります。


 ズドンッ、と巨体が地面に沈みました。

 精霊たちが張り切っていたので、なんか凄いことが起こるとは思っていましたが、まさかこんな呆気なくゾウさんを倒すとは……精霊って本気を出すとやばいんだなと再認識します。


 しかも、これは姿のない微精霊がやったことです。

 精霊としては最下位にいるような子たちですら、この威力。


 それらの頂点に位置するウンディーネの本気って…………。

 ま、まぁ、世界樹を一瞬で枯らしてしまうほどですからね、深くは考えないことにしましょう。



 頷き、その場を駆けます。

 予想以上に魔力を持っていかれましたが、止まっている場合ではありません。



 この先にウンディーネがいる。

 そして、この状況を作り出した元凶も、おそらくは……。


 ウンディーネを拉致し、ゾウさんを仕向けてきた輩です。

 何を企んでいるのかは理解できませんが、油断はせずに進みましょう。





ゾウさん、お疲れ様でした。

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