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邪魔者は帰ってください

「お断りします」


『なっ!?』


 何を驚いているのか知りませんが、私は気持ち悪いって言っているでしょう。どうして嫌だって言っていることをやらせようとしているんですか。あなた達はブラックですか。退社させていただきますよ?


「リーフィア、すまんがこの時くらいは我慢を──」


「だから嫌ですって。どうして私がそんな仕事をしなければいけないんですか」


「だが、お前くらいしか勇者の様子を見れるものはいないのだ」


「ミリアさん。今回の目的は何ですか? 勇者を殺せばいいですか?」


「……いや、殺すのはダメじゃ。そうすれば反感を買ってしまい、人間との戦争になってしまうやもしれん」


「そうだな。アカネの言う通りだ。殺して奴らの戦力を削ぐのはいいかもしれんが、その後の奴らの行動が面倒だ。……それに、どうせ殺しても早くて一月で新たな勇者が召喚される。戦力を削るなら、一気に削いだ方がいい」


 アカネさんが答えてくれました。それにミリアさんも同意見のようです。


 それに、気になる言葉が出てきましたね。

 ──殺しても早くて一月には新たな勇者が召喚される。

 誕生ではなく、召喚。つまり、私と同じように何処かの世界の者が、この世界に召喚されるということなのでしょうか?


 ですが、それは神様を通じての転生ではなく──転移と言った方が適切でしょう。

 ……よく見たら、勇者の女の子は日本人の容姿と類似しています。もしかしたら、同郷なのかもしれませんね。

 確かに殺すのは避けた方がいいかもしれません。……ああ、いや、別に情が湧いたとかではありませんよ。同じ異世界人であり、同じ世界の住人だった者ですから、何か有益な情報を持っているかもしれません。

 殺すのは少し話して情報を聞き出してからの方が得です。


「殺すのはダメ、ですか。なら、追い返せばいいんですよね?」


「あ、ああ……じゃが、それをするのにも軍を動かす必要がある。そのためには入念な打ち合わせが必要となる。その間に勇者が予想外な動きをしてきたら、妾達の被害は大きい。じゃから、どうか勇者を監視してはくれないか?」


「……………………」


 ……はぁ、もう話し合っているだけで疲れました。いいです。私は私のやり方でやらせていただくとします。


「お、おい、リーフィア?」


「ふむ、方角はちょうど西ですね。……お、いいところに窓があるではないですか」


 私はそちらに歩き、カーテンを退けて窓を開きます。


「リーフィア! おいリーフィアってば!」


「何ですかミリアさん。邪魔をしないでくれますか?」


「いや待て。お前はさっきから何をしようとしているんだ?」


「何って、勇者を追い返そうとしているんですよ。弓で」


「弓で!? ここから当たる訳がないだろう!」


「……ふむ、ここと勇者との距離は約百キロですか。相当遠いですね。肉眼では絶対に認識出来ません。こんなの──外す気がしませんね」


 突然ですが、ここでスキルのおさらいをしましょう。

 スキルのレベルを上げるには、スキルポイントというのを消費します。そのスキルポイントの数は対象者──つまり私ですね。その魂の質によって変化します。

 私の場合、質だけはよかったらしく、多くのスキルポイントを得ていたらしいです。詳しい量は知りません。全て神様に任せてしまったので、どうやらそうだったらしいということしか理解していません。


 スキルはレベルが上がるごとに、スキルの効果が上がります。

 例えば私の弓術。これはレベルが上がれば上がる度、以前に弓を使っていなくても、名人やそれ以上に弓の技術が上達していきます。ですが、スキルにも一つだけ違うことがあります。


 それはレベルカンストです。

 スキルレベルの上限は10。どのスキルもそれが上限値で設定されているようです。

 カンストすれば何が今までと違くなるのか。

 今まではスキルの熟練度というのが勝手に上がっていくだけでした。でも、カンストになると、それは必中になります。射れば必ず当たる。振れば必ず当たる。剣術や弓術といった戦闘系のスキルは、そのように変わるらしいです。

 ちなみに耐性系のスキルがカンストされると無効。属性魔法系は使用する際の詠唱省略と魔力消費の激減といったように、それぞれカンストによる恩恵が異なるようですね。




 ということで長々と説明しましたが、結局言いたかったことは、私は対象を認識して矢を射れば必ず当てることが出来ます。

 鷹の眼と弓術。自分のことながら、結構ずるい組み合わせだと思います。

 勇者もこんな化け物がいると思わないでしょう。だからのこのこと魔族領に侵入して来た。


「──マジックウェポン・弓」


 ま、使えるものは使っていく性分なのです。今回は運がなかったと思ってお帰りください。


 放った矢は真っ直ぐに線を描き、ぐんぐんと加速して飛んでいきます。

 勇者もそれに反応することなく、飛来した矢が右足に深く刺さり、断末魔の叫びを上げました。敵襲かと警戒した三人組ですが──甘いです。


 連続して放たれた矢は三人の隙間を縫うように、勇者の左足、右肩、左肩、腹部に刺さります。

 その度に勇者は血を吹き出し、どうにかして飛来する矢から身を守ろうと防御結界のような薄い膜を前方に展開しました。


「甘いのは連れだけかと思いましたが、勇者も同じだったようですね」


 魔王と対峙する時のために魔力の消費を抑えているのでしょうか?

 ですが、その本命と出会う前に倒れてしまうのは愚の骨頂というものですね。


「どうせ張るなら、全方位に張れば結果は変わったかもしれません、ね」


 風属性の魔力を込めた矢を放ちます。

 それは勇者達の遥か上空を過ぎたかと思えば、急激に旋回して勇者の背中、心臓をギリギリ外したところに刺さりました。


「──これで六箇所です」


 勇者は力なく倒れました。荒いですが呼吸はしているようです。……どうやら気絶してしまったらしいですね。

 流石に危険だと連れの人達も思ったのか、気絶した勇者を背負って退却して行きました。


 ……あ、その内の一人が何か言っていますね。

 ふむふむ『この腐れ魔王が』ですって? …………うん、なんかムカつくので一発肩に撃っておきましょうか。


 よし、当たりましたね。ちょっとスッキリしました。今日はこのくらいにしておいてあげます。ですが、もう次はありません。次勝手に侵入して私の睡眠を邪魔するようならば、容赦はしません。


 と言ってもどうせ聞こえていないのでしょうから、後は勇者が馬鹿ではないことを祈るしかないでしょう。


「……勇者は去りました。結構な深手を負わせたので、すぐに来ることはないでしょう」


「え、今なんと……?」


「私は疲れたので寝ますね。あ、これ仕事の一つに数えてくださいね。……ということで最低でも一ヶ月の休みを貰いますから。それでは皆さま、おやすみなさい」


『…………』


 妙に静かになった会議室を出て、私は自分の部屋へと向かいます。

 はぁ、今日は仕方がなかったとはいえ、無駄に動きました。もう筋肉痛レベルで…………そういえば耐性が上がっているので筋肉痛はないでしょうね。


 ま、どうでもいいです。体は疲れていなくても、精神は疲れました。

 …………ああ、ベッドが恋しいです。どんなに強くなっても、ベッドという強敵に勝てる未来が想像出来ません。

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