日程が決まりました
「式の日程が決まった。一週間後の今日だ」
朝、皆が食堂に集まったところでお義父さまが重々しく口を開きました。
「……そうですか」
何か朝から覚悟を決めたような顔をしているなー怖いなーと思っていたら、そんなことですか。いや嬉しいですけれど、もっと嫌なことを想像してしまいました。
──やっぱり娘はやらん!
と言われたらどうしようかと思いましたよ。
とにかく、式の日程が決まりましたか。
ぶっちゃけ、さっさと終わらして休みたいです。
……いや、今までもずっと休んでいましたけれど。
休んでいても他所だと思うと十分に眠れないんですよねぇ。
それなりに生活習慣も正さなきゃいけないですし、魔王城でやっているような完全自堕落生活をここで発揮すると、それこそご両親に反対されてしまいます。
なので、ここに滞在している間は無理してでも『常人の普通』を演じなければなりません。
そのため、寝不足が続いています。
最低でも一日24時間寝なければ足りませんよねぇ。
「うむ! おめでたいな!」
ミリアさんが腕を組み、虚無感の漂う胸を張りました。
なぜ彼女が偉そうにしているのかはわかりませんが、祝福してくれている気持ちは伝わりました。
その後に、皆さんから祝福の言葉をいただきます。
私は立ち上がり、頭を下げます。
「ありがとうございます。お義父さまも、何から何まで決めていただいて……感謝いたします」
「良い良い。可愛い娘とその夫の結婚式だ。どうせなら盛大に祝いたいと思ってな。勝手にこちらが盛り上がってしまっただけなので気にしないでくれ」
どこぞの馬の骨とも知らぬエルフを受け入れ、我が子のように祝ってくれる。
アカネさんの家族は皆、お優しい方々ばかりです。
「それでリフィくん。袴は着たことがあるだろうか?」
「いえ、ありません。知識としてならありますが……式はそれを?」
「和の国と言っているだけあり、やはり式はこちらのやり方でやってもらうことになった。少々動きづらいところもあるかもしれないが、一日だけだ。我慢してくれ」
「わかりました。今更文句なんてありません」
また男装服のコレクションが増えてしまいました。
ですが、ちょっと和服というのにも興味はあったので、楽しみです。
どうせならアカネさんとお揃いの物を着てみたいと思っていましたが、流石にそれをしたら私が女だとバレてしまうので我慢です。後でこっそりとアカネさんに頼んで着せてもらいましょう。
お揃いの物を着てみたいですと言えば、彼女も喜んで協力してくれるでしょう。
…………別にちょろいとか思っていませんよ?
「準備は妾が信頼する侍女に任せることになった。気兼ねなく何でも言ってくれて構わぬ」
「アカネ、ありがとうございます」
信頼における……ということは、私達の事情も言ってあるのでしょう。
その人達が着付けをしてくれるのであれば、私も安心です。
「うふふっ、早く二人の子供が見たいですねぇ」
「「────、──」」
ここでお義母さまからの爆弾発言。
私とアカネさんは同時に動きを停止させました。
「流石にまだ早いだろう……なぁ?」
「あら、この調子だとかなり早いと思いますよ?」
問題点を先送りにしていましたが、あちらの動きが早すぎます。
孫の顔を見たい気持ちはわかりますが、ちょっとお待ちくださいと言いたいです。
「この二人の子供は、きっと可愛いのでしょうね」
「……そうだな。男でも女でも、両親に負けぬ美形に育つだろう」
お義父さまも乗り気になっちゃいました。
困りました。
これでは逃げ場がありません。
「ま、ままままぁ? そのうち、な……」
「そうですねぇ。私もアカネとの子供は欲しいです」
「おまっ! そんな恥ずかしいことをここで言うではない!」
「あだっ」
素直に答えたら、頭を叩かれました。
いつも不思議に思うことですが、何で私の物理激減を貫通してくるのでしょう? 私、レベル10ですよ? ほぼ無効化できますけれど、なぜ? それ普通の人間にやったら、多分首逝きますよね?
「ははっ、本当に仲睦まじいな」
お義父さま、楽しそうに笑っているところ申し訳ないのですが、下手したら殺人現場ですよ。朝からお茶の間に放送できない案件ですよ。
「最近はリフィもアカネもずっとこうなのだ。余だってもっと一緒に遊びたいと言うのに」
「城に帰ったら遊んであげますよ。思った以上に大人しくしてくれたので、それくらいのことはしてあげます」
「妾もしばらく暇なのでな。遊ぶ時は妾も混ざろう」
「うむ! 楽しみだぞ!」
私とミリアさん、アカネさん、ウンディーネと……四人だと遊びの幅も広がります。サッカーもいいですが、次はビーチバレーでもしてみましょうか。
……砂浜、ありませんけど。
これではただのバレーです。
今から予想しましょう。絶対にカオスになると。




