大好きだと言えること
魔王城でお留守番をしているお二人へのお土産を購入し、アカネさんとのデートは終了しました。
初めての国での、初めての街での観光はとても楽しかったです。
あっちの世界で体験した修学旅行よりもずっと、楽しかったです。ただのクラスメイトと生涯を尽くす嫁とで比べるのは違うかもしれませんが、やはり相手が違うと楽しさも大きく変わるのでしょう。
途中でウンディーネとミリアさんが加わって賑やかになりましたし、満足のいく観光だったと言えます。
でも、次は最後まで二人きりのデートを楽しみたいなとも思います。
その気持ちを素直に伝えると、アカネさんは嬉しそうに顔を緩ませながら満足そうに頷きました。
これは肯定されたと受け取っていいでしょう。
──やはり私の嫁は可愛いです。
もちろん、アカネさんと行くのですから、ウンディーネとの二人きりの時間も作ります。
あの子なら気にしなくていいと遠慮しそうですが、本音は一緒に居て欲しいと思ってくれているはずです。
外出から帰った私は、すぐに自室へと戻りました。
嫁とのデートも楽しいですが、やはり私は睡眠が一番です。
着ていた男装用の服を脱ぎ捨て──るとアカネさんが「しわになるじゃろ!」と怒るので、ちゃんと畳んで収納空間に仕舞いました。
「はぁ〜〜〜〜ぁ」
朝方ぶりのベッド四号。
出掛けている間に侍女さんがシーツを替えてくれたのか、洗剤と太陽の良い匂いがします。
でも、やっぱり…………。
「アカネの匂いの方が落ち着きますねぇ」
「なに恥ずかしいことを言っているのじゃ」
──噂をすればなんとやらですね。
「お帰りなさい。ご両親への挨拶は終わりましたか?」
「ああ、問題なく、な……」
絹の擦れる音が聞こえました。
その後、パサリと何かが地面に落ちます。
「失礼するぞ」
しばらくして、アカネさんが布団の中に入ってきました。
すべすべな肌の感触が、私の肌に伝わります。
「……アカネ?」
「妾も疲れてしまった。
……一緒に、いいじゃろうか?」
「もちろんですよ」
嫌だ、なんて言うわけがありません。
むしろ一緒に眠れることができて嬉しいです。
これにウンディーネも加われば最高なのですが、彼女は今、ちょっとした偵察に行っています。
…………あの子は、大丈夫でしょうか。
あちらからの連絡は、今のところありません。
やはり声を聞いていないと心配になってしまいます。
私達は見えない線で繋がっているので、何も起こっていないとわかりますが……それでも心配するものです。だってあの子は私の大切な契約精霊なのですから。
「リフィ……?」
「ん、どうしました?」
体を動かし、妻と向き合います。
ちょっと首を動かせば唇が付いてしまう。
いつの間にか、この距離が当たり前になりましたね。
「ウンディーネは、その……大丈夫なのか?」
「…………気付いていましたか」
「少し、な……本人達が隠そうとしているので、あの場では黙っていた。ミリアは気付いていないじゃろう」
「でしょうね」
もしかしたら……とは思っていましたが、流石は魔王軍随一の知将です。
私の妻は本当に凄いです。
それとも私がわかりやすいのでしょうか?
……どっちも、ですかね。
「大好きですよ、アカネ」
「なんじゃ、いきなり。流石にもう驚かないぞ?」
「あらら……飽きられちゃいましたかね?」
「そんなわけがあるか。妾も同じくらい大好きじゃから、両想いだとわかって嬉しいのじゃよ。だからもう驚かない」
「つまり、めちゃくちゃ嬉しいと?」
「違う。今すぐに小躍りしたいくらい、嬉しい」
その返答に、くすりと笑ってしまいます。
「可愛いですね」
「もっと言ってくれてもいいのじゃぞ?」
「ええ、何度でも言いましょう」
大好きな人に「大好き」だと言える。
当然のことかもしれませんが、それが何よりも嬉しいと感じます。
「大好きです。いつまでも」




