輪廻転生
……いや、まさかとは思っていましたよ。
もしかしたら居るかもなぁと内心思っていましたが、本当に居るとは思わないじゃないですか。
「えっと、こんにちは」
「う、うむ。こんにちは、だな」
とりあえず挨拶しました。
最初の時も、こうでしたね。
「何じゃリフィ。知り合いか?」
アカネさんが私の顔を覗き込んできました。
「え、ええ……一応、知り合いという感じになるのでしょうか?」
「わしに聞くな。……そちらのべっぴんさんな鬼族は誰じゃ?」
「ああ、紹介しますね。こちらは私の婚約者となったアカネです。そしてアカネ、あの子は……えっと…………」
どうやって説明しましょうか。
流石に「輪廻転生の神様です」と言うわけにはいきませんよね。
彼女の名前を聞き忘れていたことが、ここでアダになるとは思いませんでした。
……そもそも、神様に名前ってあるのでしょうか?
悩みに悩んだ末、私は彼女のことをこう紹介することにしました。
「ロリです」
「ちょっと待て貴様! 名前を知らないからって適当すぎるだろう!」
「名前を教えない貴女が悪いのです。チョロリンです」
「あ、またちょろいって言いおったな! しかも組み合わせやがったな!?」
流石は神様。
私の考えを見事に見抜きましたね。
ロリとチョロインを組み合わせた『チョロリン』。
我ながらに良いあだ名が出来たと自負しています。
「何だか……ミリアを思い出すな」
「あ、それ思いました。反応が面白いところとか、チョロいところとか、少し馬鹿っぽいところとか、チビなところとか一緒ですよね」
「おまっ、わしに向かって馬鹿とかチビとか不敬であるぞ! ……ったく、まぁ良い。そこがお前らしい」
あ、良いんですね。
やっぱりチョロい神様です。
「ミリア……この世界の魔王だったか。そういえばお前は魔王軍に所属しているのだったな。……ん? というか名前は、」
「ちょっとした事情があるのですよ。察してください」
「…………なんだ、また面倒事に巻き込まれているのか」
「ええ、後先考えずにエルフをお勧めしてきた誰かさんのおかげで」
『また』と言ったということは、やはりロリ神は私のことを見ていたようですね。
魔王軍に所属していることも、名前を変えたことも、全て知っているとは…………さては私のファンですか?
「何を考えているのかはわからぬが、違うとだけは言っておくぞ」
「それ、半分以上わかっていますよね?」
「お前の考えていることは予想しやすいからな」
ロリ神は周りをキョロキョロと見回し、こちらに歩み寄って来ました。
「ここで話すのも邪魔になる。お主ら、時間はあるか?」
「残念ですが、今はアカネと」
「リフィ。久しぶりの知人との再会なのじゃ。少し話すくらいはしても良いのではないか?」
アカネさんとのデート中なので、残念だけど断ろうかなと思っていたところ、まさかの婚約者の方から許可を得てしまいました。
「幸い、次の予定までは時間がある。次にいつ会えるかもわからないのじゃろう?」
「話がわかる婚約者だな。アカネと言ったか? 貴殿には輪廻転生神の加護を与えてやろう。たとえ死したとしても、次も好きな場所で生まれ変わらせることを約束させるぞ」
私は彼女の正体を知っているので、別に何とも思いません。
ですが、アカネさんにとっては意味不明な約束です。
ほら、困って苦笑しているではありませんか。
「あまり私の婚約者を困らせないでもらえますか?」
「すまんすまん。では、移動しようか。……こっちだ」
ロリ神はくるりと方向を変え、すたすたとお堂に向かって歩き出しました。
私達はその後を追いかけます。
「輪廻転生、か……」
ふと、アカネさんがポツリと小さく呟きました。
「アカネさん?」
「……もし妾が死に、次は好きな場所で生まれ変われるとなったら、どうなるだろうと考えていた」
普通は、死んだらそこで終わりです。
生まれ変わったとしても、それは前世の自分ではない。
記憶は引き継げず、体も異なる。
次の人生を自由に決められるのであれば、それに越したことはないでしょう。
……そう考えると、私はラッキーだったのでしょうね。
そしてまた次を選べるのなら、私は再び魔王軍に戻りたいと思うに違いありません。
認めるのは癪ですが、あの場所ほど私に合った居場所はありません。
今更人間側に行ったとしても、私は上手く馴染めないでしょう。
この性格を受け入れてくれる場所は、魔王軍だけなのです。
「きっと妾は、また魔王軍に戻りたいと思うのじゃろうな」
「っ、……」
驚き、アカネさんに振り向きます。
「妾が死ぬ時は、皆を守り抜いた時だと思いたい。魔王軍の皆のために死ねるならば本望……じゃが、それでももう一度、皆と一緒に居たいと思うのじゃろうな」
繋いだ手を、強く握ります。
「死なせませんよ」
微笑み、彼女の頭に手を置きます。
「私がいる限り絶対に死なせません。……だから、もし死んだならとか、そんな悲しいことは言わないでください」
「……そう、じゃな。すまん。変なことを言ってしまった」
「わかればよろしい。行きますよ」
──絶対に死なせませんよ。
私の護衛対象は魔王です。
でも、私が守りたいのはミリアさんだけではない。
ウンディーネ、アカネさん、ヴィエラさん、ディアスさん……皆さんを守るためなら、私は頑張れるでしょう。
誰一人として欠けてはいけない。
出来るか出来ないかではありません。やるのです。
「……なんだ。ちゃんと居場所を得ているではないか」
気が付けばロリ神はこちらを振り向き、満面の笑みを浮かべていました。
「何ですかその笑顔。気持ち悪い」
「そういうところがなければなぁ! ほんと、お前はなぁ……!」




