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お任せします




 ということでやって来ました、城下町。


 馬車の中から見た通り、ほとんどが木造建築です。

 景観をぶち壊さないよう配慮しているのか、街の彩りも統一されています。そこは日本と同じなのですね。


「リフィ。絶対に妾から離れるでないぞ」


「子供じゃないんですから、それくらいはわかっていますよ」


 流石に昼ちょっと過ぎな時間なだけあり、かなりの人がそこに居ました。

 ですが、窮屈だとは感じません。馬車が二台並んでも余裕がある道幅なので、思った以上に人との感覚には余裕がありますが……まさか子供と同列に扱われるとは思っていなかったので、少しだけショックを受けました。


「だってお主、目を離したら絶対に寝るじゃろう」


「流石の私でも、そんなことはしませんよ」


「ほう? だったらもう一度同じ言葉を、今度は妾の目を見て言ってもらおうか」


 無言で両手を挙げ、降参します。


 流石は私の婚約者、私の行動はお見通しでした。



「もし逸れたら、迷子案内で呼び出すからな」


「それは勘弁していただきたい」


 この歳で迷子放送されるとか、プライドに色々と問題があります。

 ……というか、この街に迷子放送という機能があるのですね。そこに驚きです。




「──こんにちは、アカネ様、リフィ様」




「うむ」


「ええ、こんにちは」


 前から歩いて来た人が、私を見るなり笑顔になりぺこりとお辞儀をしました。

 内心困惑しながら、私も同じようにお辞儀をしておきます。


 ……以前の決闘で私の存在は認知されたのか、先程からこんな感じです。


 こうやって誰かに頭を下げられたのは久しぶりですね。

 なんかむず痒い感じがしますが、アカネさんはこの国の代表の長女であり、私は彼女の夫という設定です。今は我慢するしかありません。



 ──でも、意外ですよね。



 自分で言うのも何ですが、私はこの国の方々に受け入れられるとは思っていませんでした。


 当初は、外の者とアカネさんを結婚させることに反対する意見が多かったようです。

 それが更に……えぇと、誰でしたっけ……あの獣人さんが煽ったせいで反対意見は強くなり、軽いデモが行われるまでに発展しそうになったと聞いています。実際にデモは起こりませんでしたが、そこはお義父さまが頑張ってくれたのでしょう。


 それでも反対する人が多数居たのは事実です。

 ミリアさんが言っていたように、試合で獣人さんをホームランでさよならバイバイにしたことと、その後のイチャコラで認めざるを得なくなった……ということでしょうか。


 手の平返しが少しばかり気持ち悪いですが、変に文句を言われるよりはマシだと思うことにしましょう。



「あ、アカネ様とリフィ様だ。こんにちは!」


「うむ!」


「こんにちは」


 考え事をしていたら、また挨拶されました。

 子供にも認知されているとか、流石に周知されすぎでは?



「…………この、格好が目立つのでしょうか?」


 自分の服装を見下ろし、ポツリと呟きます。


 この国の人達は、ほとんどの方が和服を着ています。

 その中でタキシードを着ている男性が居るのは、嫌でも目立ってしまう。


「そこの服屋では、外の国から来た者にも雰囲気を楽しんでもらえるようにと、和服を貸し出ししているのじゃ。良ければ着てみるか?」


 アカネさんはそのように提案してくれましたが、私は首を横に振りました。


「和服は動きづらいので、遠慮させていただきます。それに、男物は胸元がはだけているやつが多いですから、私では色々と問題があるでしょう。」


「むぅ……それもそうか。リフィの和服姿も見てみたかったのじゃが、残念じゃ」


「城に戻ったら見せてあげますよ」


「うむっ!」


 にしても、ここでは和服の貸し出しもしているのですね。

 本当に修学旅行で京都に来ている感覚がします。


 実際の修学旅行では、クラスメイトの何人かが試着して観光していました。

 私は面倒だったので着替えませんでしたが、学生気分を味わうのであれば、やはりあのような体験をしておくと思い出になるのでしょうか?




「さて、まずはどうしようか。行きたい場所はあるか?」


「ベッドに戻りたいです……と言いたいところですが、流石にそれを言ったら殺されそうなのでやめておきましょう」


「本音がダダ漏れだぞ」




 ……………………。




「まぁ、アカネにお任せします。私はこの国のことをまだ何も知りませんので、どこに何があるのかすらわかっていませんからね」


「誤魔化したな? ……だが、そうじゃな……ふむ」


 アカネさんは顎に手を置き、考えます。


「リフィ。今日の観光は妾に任せてもらうぞ」


 彼女の中で予定表が出来上がったのでしょう。

 バッとこちらに振り返り、手を取られました。


「ええ。貴女が自慢する国を、どうか私に教えてください」


 やはり観光は地元民に任せる方が、楽しい場所を沢山見られます。

 修学旅行の時だって、案内はほとんどタクシーの運転手がやってくれました。彼らは楽しむだけではなく、効率も考えてくれます。無駄なく観光できるのは強みですね。


 そこら辺はアカネさんを信じています。

 彼女はここで生まれ育ち、瞬時に最高効率も計算してしまう。


 今日は彼女に任せっきりとしましょう。



 ────それに、



「今日はめいいっぱい楽しむぞ!」



 彼女自身がこんなに楽しそうにしているのです。

 私が口出しするのは違う気がします。


 ……まぁ、何も知らないのは事実なので、向こうが作ってくれたプランに従った方が楽だというのは否定しません。アカネさんならば私に無理をさせないような予定を立ててくれるでしょう。そこは疑っていません。




「…………アカネさん」


 私は彼女に微笑み、一言。


「手が痛いです」


 楽しみなのは十分に理解しました。

 でも、もう少し手を握る力を弱めていただけると嬉しいです。


 ちょっと、私の手が危ない音を立てながら変形しつつあるので──。




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