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準備待ちです




 急な城下町へのお誘い。


 私は深く考えることなく、その場では了承しました。


 いつかは行ってみたいと思っていましたし、ちょうどやることもないなぁ、今日もずっと寝ていようかなぁ……と考えていたところなので、アカネさんのお誘いを断る理由はありませんでした。



 残念ながらウンディーネは実体化できず、一緒にお店を見て回ることはできません。


 彼女と私が一緒にいると、すぐにイチャイチャしてしまうと注意を受けていますからね。そこは我慢です。

 でも、ウンディーネは確かに私の近くで見守ってくれている。それを感じられるだけで、私は十分なのです。




「ってことで、用意しましたが……」


 私は今、一人で玄関の前に立たされていました。


「アカネさん、遅いですねぇ」


 ポツリと、そう呟きます。



 彼女は彼女なりの準備があるとのことで、朝食が終わったと同時に大勢の侍女さんを連れ、どっかへ行ってしまいました。


 私の方はすぐに準備が終わったので、ちょっと早めに集合場所である玄関に来たのですが……時間ギリギリになってもアカネさんはまだ姿を現しません。


 女性は身支度を整えるのが遅いのは理解していますが、それにしても朝食から二時間が経過しているので、流石に心配になりますね。




「──お待たせしたのじゃ!」




 何か問題でも起こっているのかな?

 そう思って迎えに行こうとしていた時、数人が廊下をパタパタと小走りするような音と、アカネさんの声が聞こえてきました。


「すまぬ。待たせてしまったじゃろうか?」


「いえ。早めに来ただけなので、気にしないでくださ…………」



 振り向き、私は言葉を失いました。



 アカネさんはいつもの重そうな和服ではなく、町娘のような軽めの和服を着ていました。

 ですが、決して彼女の品位を落とすことなく、むしろ派手なものが減ったことで、彼女の魅力がより強くなったように感じられます。


 少し雰囲気も変わっています。

 このためにお化粧もしてくれたのでしょうか?


 遠くから見ただけでも十分でしたが、近くで見ると更に美しく見えてしまいますね。


 ……微かに、香水の匂いもします。

 きつすぎない花のような香り。意識してくれたのかはわかりませんが、私の好むタイプの匂いです。




「ど、どう、じゃろうか……?」


 私が何も言わなくなったことで、不安を覚えたのでしょう。

 アカネさんは俯き、もじもじしながら私をチラチラと見つめてきました。



「化粧、してくれたのですね」


「うむ。派手すぎないよう気を付けてもらったつもりなのじゃが、変……だろうか?」


 何をそんなに不安になることがあるのでしょう。

 いつもの気高い彼女はどこに行ってしまったのだろうと、内心失礼なことを考えながら、私はクスリと笑います。


「とてもお綺麗ですよ。私としたことが、アカネに本気で見惚れてしまいました」


「はうっ……!」


 アカネさんは胸元を抑え、うずくまりました。


「大丈夫ですか? 体調が悪いなら、無理しなくても」


「も、問題ない! 不意打ちを食らっただけじゃ!」



 ──え、なにそれ怖い。

 不意打ちってそんな簡単に食らうものですかね?


 本当に大丈夫かと、彼女の後ろに控える侍女さん達に目を向けると、彼女達は微笑ましいものを見ているかのように、優しく笑っていました。その表情には心配の感情が一切見られません。


 ……うーむ、私の考えすぎですかね。



「前にも言ったと思いますが、無理だけはしないでくださいね」


「うむ! ──さぁ、そろそろ出発しよう」


 アカネさんが私の手を取ります。

 あまり私と手を繋ぎたがらない彼女ですが、今はそんなことどうでもいいみたいですね。



 ──余程、楽しみなのでしょう。



 長年出ていたとしても、やはり自分の故郷です。

 こうして散策できることが嬉しいのですね。


「……ええ、今日はめいいっぱい楽しみましょう」



 子供のように無邪気に笑う彼女に、私も応えます。





 あれ、そういえば一人忘れているような気がしますね。

 ……………………まぁいいか。




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