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籠城です




「おーい、おーいリフィ、アカネ。そろそろ部屋から出てきたらどうだ?」



 部屋の扉が、ドンドンッと叩かれます。


「そろそろ決闘のお祝いをしたいと、ミカゲ殿も言っていたぞ。だから早く出てくるのだ」


 先程から出てくるようにと促してくるのは、我らがクソ魔王ことミリアさんです。


 魔王城のように問答無用で扉をぶち壊してこないのは、ここが他国であり、私達は客人として迎えられている立場だからなのでしょう。



 そんなところで騒ぎを起こし、ヴィエラさんの元に報告が上がれば、私達の脳天には雷という名の拳が降ってくることでしょう。だから流石のミリアさんも大人しくしているようです。




「おい。余が扉を壊さないからって、籠城作戦とはいい度胸をしているな。アカネの作戦か? それとも単にリフィが怠惰なだけか?」



 ──どっちもです。



「あの件を引きずっているなら心配ないぞ。皆気にしていない。むしろ婚約者同士、仲睦まじいと評判が良い」



 だから嫌なのですが……と言っても、ミリアさんには私達の気持ちなんてわからないんでしょうね。




 『あの件』とは、決闘後のイチャイチャのことです。


 あの時は私もアカネさんも気が緩んでいたのでしょう。

 だから公共の場で婚約者同士イチャイチャしてしまい、その痴態を公衆の面前に晒してしまった。


 ミリアさんが言っていることが本当ならば、私達は本当に仲睦まじく、そしてお似合いの夫婦になるのだと認められているのでしょう。



 私はバリツさんに圧勝して力を示した。

 アカネさんはそんな私を信じて、応援してくれた。


 もう、誰も文句を言わないはずです。


 認められたのは嬉しいです。

 今後、このような面倒事に巻き込まれないのであれば、それに越したことはありません。




 ──でも!

 やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいのです。



 見てください。

 アカネさんなんてその時のことを思い出すたびに顔を真っ赤にして、「ぬぐぉ……!」とか「ふんぬぅ……!」とか、奇妙な声を上げながら身悶えるようになってしまいました。


 私はそこまでダメージは負っていませんが、それなりにやってしまったと反省しています。


 だから二人して部屋に閉じこもり、ミリアさんから出るようにと説得されているわけです。




「いや、あの二人を見た時は、見せ付けやがってこの野郎……と素直に思ったが、婚約者同士ならばあれぐらいが普通なのではないか? というか、ここに来てからもずっとイチャイチャしまくりだったのだから、今更変わらないだろう。何を恥ずかしがっている」



「…………ウンディーネ。ちょっとミリアさんを物理的に黙らせてきてください」


「妾からも頼む」



「おい待て! 何やら物騒な言葉が聞こえたのだが──おおウンディーネか。最近は姿を見せなかったから心配していたのだ…………って、お、おいウンディーネ? そうやってじりじりと余に滲み寄ってくるではない。まさかとは思うが、お前もそっち側なのか? ちょ、本当に待って。お願いだから、ほんとたの──わかった。ほれ飴ちゃんだ。余の飴ちゃんを特別に分けてやろごばばばば……!」



 扉の向こう側が静かになりました。

 …………やったか。





「なわけあるかぁああああああ!!!!!」


 ゴガァンッ! という盛大な破壊音が鳴ったと思った時には、部屋の扉が木っ端微塵に吹き飛んでいました。



 ──チッ。



「あらミリアさん。おはようございます。お久しぶりですね」


「久しぶりじゃ、ミリア」


「ああ、久しいな我が配下達よ!」


 まぁ、破られてしまったのであれば、仕方ありません。


 何事もなかったかのようにあっさりと挨拶をかければ、やけくそ気味に挨拶を返してくれるミリアさん。何が悔しいんだか、その場で地団駄を踏んでいます。



「くそっ、最初からこうしておけば良かった!」


「いや。借りている部屋なので、そう簡単に壊されるのは困るのですが……って、今更ですけど」


 さっきの音を聞いて誰かがやって来る前に、私は魔法でちょちょいと扉を修復してしまいます。



「貴様ら、余を差し置いて引き篭もるとは、良い度胸をしているではないか……」


「敵を我が根城に入れるわけにはいきませんので」


「敵? ……もしかして余のことか? なぁリフィ……余のことを今、敵と言ったか?」


「むしろ、この状況で貴女以外に誰がいますか?」


「余は魔王だぞ! お前達の主人でもある!」


「その魔王があの時、一番の敵でした」


 私がはっきりと物申せば、横に座るアカネさんがうんうんと頷きました。



「なぁ!?」


 ショックを受けたように狼狽え、そのまま固まるミリアさん。

 …………あれぇ? 今の言葉に石化の魔法は使っていないはずなのですが?



「リフィ。あれは放っておいても良いじゃろう。それより腹が減った。共に食堂に行かぬか?」


「あ、それは良いですね。私もそろそろ何か食べたいなぁと思っていたところです」



 ──では行きましょう。


 ──うむ。



 私達は手を繋ぎ、石像化したミリアさんを放置して食堂に向かいます。


 使用人の方々はすぐにご飯を用意してくれました。

 二人きりで食事を楽しんでいたところ、号泣した魔王が食堂に突っ込んできて、ちょっとした騒ぎになりました。


 ……相変わらず、どこに行っても私の周りは騒がしいですね。



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