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一旦、休みます




 侍女さんに案内された部屋は、アカネさんとの二人部屋でした。

 ……まぁ、これくらいは予想していたので驚きはしません。


 ちなみに、ミリアさんは別の部屋に案内されていました。

 案の定、文句を言っていた彼女ですが、夫婦の営みを邪魔しないようにと嗜められ、「営み? 夫婦の営みとはなんだ?」と言いながらも、渋々と了承していました。




 でも、まさかご両親が協力的になってくれるとは思っていなくて、案外上手くいったなというのが本音です。




 それだけ、アカネさんのことを大切に思っているのでしょう。


 娘のために婚約の場まで設けてしまう、若干、暴走気味なところはありますが、それは娘を想っているからというのは先程のやりとりで十分に理解しました。


 

 とりあえず、お父様の方には気に入っていただけたみたいでホッとしています。……お母様の方は最後の方まで内心を伺えませんでしたが、悪い印象は持たれていなかったと思います。




「さて、これからどうするのです?」


「まずは父上の言った通り、休もう。リーフィア……リフィも長旅で疲れているだろう? 馬車の中は忙しく、あまり眠れていないようだったからな」


「…………そうですね。正直言って、ほんと眠いです」


 眠ろうとしても、ミリアさんとアカネさんの視線が気になってしまい、あまり心地良くは眠れませんでした。

 それだけ男装姿が珍しかったのでしょう。今は流石に慣れたのか、まだ若干の視線は残っているものの、最初よりは大人しくなりました。それでも眠ることはできませんでしたが……。


 その代わり、ウンディーネが私の膝枕で爆睡している姿で癒されていましたが、やはり自分も眠れないと疲れは取れませんね。




「では、お言葉に甘えて休ませていただきます」



 折角のご厚意です。

 私は遠慮せず、ベッドにダイブします。


 うーん、流石は国の代表者が住まう建物。


 ベッドも一級品。星五つです。

 魔王城のベッドちゃん一号とは違った、ふかふか具合が心地良いですね。


 一言で言い表すならば、最高です。




「番は妾がしているから、ゆっくり休むといい」


「え、アカネさんも一緒に寝ましょう?」


「──!?」


 バッ! と音が出るくらい勢いよく振り返るアカネさん。

 ……反応が可愛らしくて、面白いですね。



「アカネさんもお疲れでしょう? 何かあったら誰かが呼びに来るでしょう。それまで婚約者同士、ゆっくりしようではありませんか」


「じゃが……」


「それじゃあ、私の抱き枕になってください」


「は!?」


「……流石にウンディーネと抱き合って寝るのは色々と問題がありますし、ミリアさんも別部屋に行ってしまいました。そもそもミリアさんとも抱き合って眠るのは問題です。でも、アカネさんとであれば、抱き合っていてもおかしくはないでしょう?」


「そ、れは……そうじゃが……」


「ほら、こっちに来る」


「──あ、」



 服を脱ぎ、アカネさんを抱き寄せます。

 あれだけ嫌がっていたから、抵抗されるかと思っていたのですが、意外と素直に従ってくれますね。


「やっぱり、アカネさんは良い匂いですね。私の好きな匂いです」


「そ、そうか……?」


「ええ。とても安心します。アカネさんとでも、良い夢が見られそうです。アカネさんは──アカネさん? どうしました?」



 ふと、アカネさんが不満そうな顔をしていることに気が付きました。

 …………はて? 何か言ったでしょうか?



「……と、…………ほしぃ……」


「はい?」


「あ、アカネと、呼んでほしい」



 そういえば、この部屋に入ってから『アカネさん』と呼ぶようになっていました。他人の目が無いからと油断していましたが、この国にいる間は、たとえ二人でも婚約者を演じた方が良いでしょう。





「わかりました。──アカネ。もっとこっちに寄って?」


「〜〜〜〜っ!!」


 見る見るうちに、その顔が真っ赤に染まっていくアカネさんは、やがて静かに『こくっ』と頷き、私に寄り添ってきました。



「ふふっ、アカネは可愛いですね」


「なっ、ば、馬鹿にしているのか!?」


「馬鹿にしていませんよ。……ただ、意外な人物の、意外な一面を見られて嬉しいのです」


 いつものアカネさんは『完璧主義者』のようなイメージでした。

 でも、今回のことで沢山、乙女のような可愛らしい反応を見られて、私は楽しいです。



 最初はただ面倒なことに巻き込まれたと思っていましたが、この旅は意外と良いかもしれませんね。……ウンディーネと自由に話せないのは嫌ですが、私だって大人です。我慢します。






「……ああ、そろそろ……眠くなってきました」


「…………うむ。お休みなさいじゃ、リフィ」


「ええ、お休みなさい……アカネ」


 そして私は、ゆっくりと瞼を閉じました。

 直後、額に柔らかいものが触れ、それが何かを察する前に、私の意識は落ちて行ったのでした。




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