平穏。そして──
──さて、今回のことを纏めましょうか。
私が転生した時から、エルフ達に言われ続けていた『魔女』という単語。
それは人違いでも何でもなく、本当に私は魔女として選ばれていました。
誰が私をそのように定めたのか、数多くの魔女の中から選んだのか。本当に魔女が私を選んでいたのか、それともエルフ達の上層部的な者達が選んでいたのか……。
それはもう、わかりません。
だって、魔女の成れの果てはミリアさんによって倒され成仏しましたし、生き残りのエルフはアカネさん単騎で滅んでしまいました。
その中にはダインさんも居たようです。
抵抗すると思っていましたが、案外素直に死んでくれましたね。
……結局、彼が何を思っていたのかは、最後の最後までわかりませんでした。
でも、もう死んでしまったのですから、ああだこうだと考えても仕方ないので、気持ちを切り替えていきましょう。
彼らの本拠地であった里も、完全に焼却されてしまい、もう跡形も残っていません。世界樹があれば、エルフは自然と生まれてくるらしいのですが、その頼みの綱である世界樹は、ウンディーネによって枯れ果て、二度と復活は望めない。
つまりエルフ族は、ほぼ滅びたと言っていいでしょう。
同時に、ヴィエラさんが追い求めていた『エルフの秘術』への道も、完全に断たれました。
秘術の正体は、エルフの里を覆い隠す大規模な結界でした。
しかしそれは、結界を維持し続ける代償として、生贄として魔女を必要とする……外道の秘術でした。
ヴィエラさんは仕事のことになると社畜……いえ『鬼畜』になりますが、普段は仲間を思いやる優しい方です。そんな彼女が『エルフの秘術』の全貌を聞き、それでも欲しがるなんてことはありませんでした。
むしろエルフの所業に激怒し、「奴らを生かしておけない!」と立ち上がりましたが、もう大部分は滅ぼしているので、私とアカネさんで落ち着かせました。
まぁ、その程度のことでヴィエラさんの怒りが収まることはなく、行動できない分、仕事の苛烈さが増したようですが……そこは私には関係ないので知らんぷり。
その後、仕事が忙しすぎてぶっ倒れ、死にかけた哀れな魔王様が発見されました。
すぐに私の回復魔法で体の疲労は直しましたが、相当心の中にトラウマが植え付けられたのでしょう。
『仕事』という単語を聞いただけで、野に放たれた子猫ちゃんみたいな怯え方をするので、流石のヴィエラさんも反省したのか、完全にエルフのことは忘れ、いつも通りの通常運行に切り替えました。
今回のことで色々ありましたが、何が一番大変だったかと言われたら、ウエディングドレスに着替える時でしたね…………というのは流石に冗談で、本当に大変だったのはやはり、魔女達との戦いでしょう。
何百、何千と力を蓄え続けていた魔女達は、それは凄まじい力でした。
私とウンディーネが力を合わせても、到底及ばないほどに……。
でもミリアさんは、それを相手に何事もなく滅ぼしてしまった。
それは単純に『相性』の問題だったのでしょう。
自分で言うのも何ですが、私は防御面だけに関して言えば最強です。
全ての属性攻撃は通じず、物理攻撃も通さない。状態異常も無効化してしまい、回復魔法に長けている。
……改めて自分の能力を確かめると、凄まじいチートですよね。
しかし、魔女とは相性が悪かった。
最悪と言ってもいいです。
彼女達の漆黒の腕は、触れるだけで自分達へと取り込んでしまいます。
私の右腕はそれによって黒く変色し、異形に喰われて失いました。
ゲームでわかりやすく言うのであれば、『防御無視』や『無敵貫通』でしょうか。
どれだけ体が強靭でも、触れてしまえば奪われる。
防御に特化した私の能力では、絶対に勝てない相手でした。
だから、ミリアさんがあの場で助けに駆け付けてくれて、本当に感謝しています。
この世界でミリアさんだけが持つ能力『魔眼』は、彼女が視たもの全てを問答無用で扱えるという、チート以上にチートしている能力です。
でも私は状態異常を無効させるので、彼女の魔眼による影響は受けない。だから私とミリアさんとでは、私の方に軍配が上がりましたが、状態異常耐性を持たない者が相手では、ミリアさんは無敵です。
今回の戦いは『相性』という単純なものが重要になっていました。
チート持ちだからと油断して、自信過剰になっているのは危険だと、此度の戦いで痛いほどに学びました。
なので今後は、絶対に油断することなく、防御面だけを活かし、魔王城に引き篭もることにします。
幸いなことに、私に付きまとっていたエルフは完全に消えました。
もう私の邪魔をする存在は居ない……と信じたいです。いやまじで頼みます。
本当に、これ以上何かに巻き込まれるのは御免です。
久しぶりにやる気を出して、エルフの里に単独で行ってみた結果、片腕を失って、しかも仲間に助けられるなんて……。
……ええ、この際なのでぶっちゃけます。
めちゃくちゃ恥ずかしいです。
ドヤ顔で帰ってくるつもりが、ミリアさんにドヤられたのですよ? もう私のプライドはズタズタに引き裂かれて、精神のライフはゼロですよ。
もうなーんもやる気が出なくて、今現在、一ヶ月くらい引き篭もり生活していますけど、何か?
毎日のようにミリアさんは遊びに来ていますが、誰のせいでこうなっとるんじゃいと、追い返しています。それでも懲りずに遊びにくるのですから、あの人も大概暇ですよね。
──ああ、そうそう。
なんか、色々な方から「その腕どうした?」と言われるのですが、安心してください。もう大丈夫です。
……まぁ、あの時はマジで焦りましたよ。
回復魔法を何度掛けても腕が生えてこないし、普通に右腕が無いのは不便だし、もうこの生活で頑張るしかないのかと諦めていました。
でも、よくよく考えたら私って寝ているだけですし、腕が無くてもその分ウンディーネが看病してくれるので、むしろそっちの方がありがたいですし、「あれ? これ別に不便じゃないな?」と思っていたのですが、そんな私にアカネさんから朗報が。
なんと、魔王城の宝物庫にあった古代の宝で、失った右腕を元通りにすることができたのです。
すっごく貴重なものだったらしいのですが、アカネさんは「この程度、お主の右腕を取り戻すためと考えれば安い」と笑っていました。──やだこの人めっちゃイケメン。
ってなわけで、なんか普通に戻ってきた私の右腕ですが…………こういう適当な感じも『ザ・ファンタジー』って感じがしますよね。
とりあえず魔法とか、古代の秘宝とか、それでどうにでもなるという世界?
生前は「なんだそりゃ……」と呆れていたことも、いざ自分の身に起きるとなれば、深く考えることも面倒になって、だったらもう受け入れた方が早いってなるのです。
そんな訳で、私はもう完全体です。
…………そう言うと、球を7個集める作品に出てくる顔色悪い緑色の人造人間を思い出しますが…………とにかく私は全てが元通り。今まで邪魔だったエルフも居なくなり、私の周りは平和そのものとなっていました。
謎はまだ残っています。
気になることも、沢山残っています。
でも、それを考えることはありません。
だって私達には、もう関係のないことなのですから。
エルフ族の大半が滅んだ今、もう究明することもありません。
それが私の障害となることも無いでしょう。
だから、過去のことは終わり。
長く続いたエルフとの争いは、もう終わったのです。
「……………………」
私は寝ぼけたまま、窓から見える青空を見つめます。
『リーフィア……起きた?』
そんな私の視界に、超絶美少女の顔がひょこっと映り込みました。
『今日もミリアちゃんが怒っていたよ? リーフィアが遊んでくれないー、って』
「だって、面倒なんですもの」
ゴロンと、私はベッドの上で寝返りを打ちます。
「ようやく戻ってこれたのですから、少しくらいはゆっくりさせてほしいですよ、ったく……」
そうやって悪態を付く私に、ウンディーネは微笑みます。
『そう言って、本当は嬉しいくせに』
「………………」
『沈黙は肯定……でしょ?』
「…………生意気な口を聞くのはどこの誰ですか、この、このっ」
『くすぐったいよ、ちょリーフィ、あははっ……!』
確かに私は、嬉しいのでしょう。
この平和な生活は、私がずっと望んでいた自堕落生活そのものなのですから。
それを手にした今、私は満足しているのです。
ずっとこの生活が続けばいい。
それを永遠に願います。
「──リーフィア。ちょっと良いじゃろうか?」
でも、そう願った時に限って、物語は進むのですよね。
「失礼するぞ」
部屋に入ってきたのは、綺麗な和服を着こなした、額から二本の角を生やしている鬼族──アカネさんでした。
彼女が一人で私の部屋を訪ねるのは珍しい。
この時、そんな些細な異常をいち早く察して、窓から逃げ出すべきでした。
「リーフィア。驚かずに、どうか、妾の話を聞いてほしい」
いつもとは違った彼女の雰囲気に、私もウンディーネも、口を閉ざしました。
「単刀直入に言おう。妾と」
そして、彼女から出てきた言葉は──
「妾と婚約してほしい」
新たな波乱の幕開けを報せる、一つの合図なのでした。
お久しぶりです!
今日からまた転生エルフさんの連載を再開したいと思います!
この話が一応第二章の最後として、次からが第三章の始まりとなります。
(……あ、話数が多くなってきたので、管理しやすくするために章分けしましたと今更報告します)
初っ端からトラブルに巻き込まれそうなリーフィアさんですが、今後も転生エルフさんを応援していただけると嬉しいです!ではまた明日!




