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選びます

 古谷さんが宝物庫に入り浸るようになって、二日目です。


「…………」


 彼は相変わらず、何を貰おうかと悩んでいるようですね。


 そんなものパパッと決めちゃえばいいんですけど、彼の馬鹿みたいに真面目な性格がここで出ちゃっているらしく、あれでもないこれでもないとずっと唸っています。


 でも、時間も経てば流石に候補は絞れて来たのか、山ほど積まれている物の中から、4品まで選んだようです。


「古谷さーん、何で迷っているんです?」


「どれも戦闘職には欠かせない物でね。これは──」


 彼が選んだ四つの品は、剣、鎧、ア◯ジンに出て来そうな空飛ぶ魔法の絨毯、スキルポイントを10振り分けられる宝玉でした。


 剣と鎧には、これだけで十分チートと言えるような機能が盛り沢山詰め込まれていて、正直乾いた笑いしか出ませんでした。


 空飛ぶ絨毯。これはとても便利な道具です。これさえあればわざわざ動かずとも移動出来ますし、馬車でも通れないような狭い通路もスイスイと進めます。しかも、馬車以上の速さが出るのに、風の抵抗を受け付けない魔法も付与されているらしく、乗っている間は快適に空の旅を楽しめる代物なのだとか。


 最後の宝玉はとても貴重でしょう。

 一つの宝玉で一つのスキルをカンストまで割り振れるのは、かなり大きいです。むしろミリアさんが使った方がいいと思うのですが、どうして使用しないまま宝物庫に眠っていたのでしょう?


 ……ただ単に忘れていた。という線が濃厚ですよね。だってミリアさんですもん。


「──と、この四つで悩んでいるんだ」


「確かに、これは悩みますね」


 でも、この中に候補から除外していい物が一つありますね。


「剣は要らないのでは?」


 私は古谷さんが腰に差している剣──聖剣を指差しました。


「あなたには神から授けられた剣があるではありませんか」


「……うーん。でも、こっちの剣の方が性能が段違いなんだよね」


「それも問題ないでしょう」


 四人の勇者に与えられる聖なる武器には、一つの特徴があります。

 それは『使用者の成長に合わせて、武器も成長する』というものです。


 勇者が成長すれば剣もそれに応え、いつまでも成長しなければ、そこら辺の剣と同じ性能のままになってしまいます。


 古谷さんが立派な勇者になることが出来れば、剣も成長する。

 昔の魔王は、同じ聖武器によって討たれたと聞きます。今はまだ性能が悪いからと手放すのは、とても勿体無いことです。


「それじゃあ、剣は除外だね」


 私が説明すると、古谷さんは納得してすぐに候補から外しました。


 って、なんで私ってば勇者に助言しているんですかね。……まぁ、今更か。


「後は三つだけど……」


「魔法の絨毯も除外ですね」


「え?」


「魔法の絨毯も除外ですね」


「え、でも──」


「除外です」


 いいですか? と私は言葉を続けます。


「魔法の絨毯を見てください。これはどう見ても一人……詰めればどうにか二人は乗れる程度の幅です。勇者だろうと一人で旅を続けるのは危険です。いつかは仲間を集めることになるでしょう。魔王と戦うのであればなおさらです。今の時点ではかなり便利な物でしょうけど、仲間が出来た時のことを考えてください。古谷さんだけ絨毯で飛ぶのですか? どうせなら仲間で揃って馬車に乗った方がいいでしょう。なので、絨毯は除外するべきだと思いました」


 私の熱弁に、古谷さんは圧倒されていました。

 後ろの方で浮遊しているウンディーネも、ここまで私が一気に喋るとは思っていなかったのか、とても驚いたような視線を向けてきます。


「う、うん。それじゃあ絨毯も排除だね」


 ……となると、残りは鎧か宝玉ですね。


「リーフィアさんはどっちがいいと思う?」


「私は鎧を勧めます」


「やっぱり鎧か……」


 やっぱりということは、古谷さんも鎧を優先したいのでしょうか?


 まだ彼はこの世界の知識が十分ではない。だからスキルの重要さに気づいていないのでしょう。だからって教えることはしません。一応、敵同士ですからね。そこまで親切に教えてあげる義理はありませんよ。面倒ですし。


「鎧は使用者に応じてサイズが変わるみたいです。まだ古谷さんは高校生なので、身長はもう少しだけ伸びるでしょう。その度に鎧を新調するのは金もかかるし面倒です」


「確かに、リーフィアさんの言う通りだ」


「それに、勇者なのだから見た目にも気を配る必要がありますね」


「見た目か……」


 私は視線を下げ、古谷さんのご自分の体を見下ろしました。


 彼は使い古した安っぽい鎧と、その上にボロマントを装着しています。誰が見ても勇者……だとは思いません。ただの弱っちい旅人程度としか判別しないでしょう。


「それでは見た目が悪いですし、下手したら舐められます。人間の国のギルドに行ったら『ここはガキが来るところじゃねぇ!』とか言われるんじゃないですか?」


「うぐっ……ソ、ソウダネ」


 古谷さんは気まずそうに視線を逸らしました。

 ……もしかして、すでに経験済みでした?


「外は色々と危険なので、身を守る装備を優先することは大切です。ちょっと厨二感が強いかもしれませんが、この世界では案外普通の格好ですよ。古谷さんだと厨二感凄いですけど」


「二回も言わなくていいよ! ……はぁ……恥ずかしいけれど、死ぬよりはマシか」


 古谷さんは鎧を持ち上げ……少し悩んだ末に「うんっ!」と顔を上げました。


「決めたよ。俺はこの鎧を貰う!」


 そうして、古谷さんの褒美選びはようやく終わったのでした。

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