恋バナ?です
話し合いの結果、ディアスさんを助けたお礼に、魔王城にある装備を古谷さんにプレゼントすることになりました。
ということで、私達は魔王城の宝物庫へ向かうことになりました。
「ふっふっふっ……」
「よくぞ来た。勇者よ」
彼らよりも一足先に宝物庫へ辿り着いていた私とミリアさんは、扉を開けて入って来た古谷さんを待ち構えていました。
その後ろにはウンディーネが浮遊しており、どうしていいかわからずにオロオロしています。
「何を、しているんだ?」
ヴィエラさんが眉間に手を当て、呻くように私達を睨みました。
「いやぁ、ミリアさんが『魔王権限だ!』と言ってきて、私は断れなかったんですよ」
「おいリーフィア! お前も最後はノリノリだっただろう! 余だけ悪者にするでない!」
「でも、提案したのはミリアさんでした」
「それはそうだが……なぁウンディーネ! こいつもノリノリでポーズとか考えていたよな!?」
『えっ!? え、えーとぉ、うち、は……何も……』
「いいえ。ミリアさんが強制的に命令してきました。そうですよね、ウンディーネ?」
『うーん、でも……うちは、えぇと、どうしよう……』
「二人とも! ウンディーネを困らせるんじゃない!」
「「ごふっ……!」」
私とミリアさんの脳天に、拳骨が降ってきました。
それをもろに受けた私達は、見事撃沈。
その後、宝物庫の隅っこで正座待機を命じられました。
宝物庫の床はとても硬いので、正座しているだけでもかなり辛いです。ミリアさんはそのことに苦言を言おうとしていましたが、それを口にする前に私が止めました。
逆らったらミリアさんだけではなく、私まで巻き添えを喰らいます。それだけは嫌でした。
「さて、これで馬鹿はいなくなった」
ヴィエラさんは「もう邪魔するんじゃねぇぞ」と視線だけを私達に向けました。仲間に、ましてや主人に向けるとは思えない殺気の込もった視線に、私達は恐怖しました。
そんな鬼よりも鬼らしい彼女は、すぐに外交向けの笑顔を作り古谷さんに振り向きます。
「さぁ、勇者コタニ。この中から好きなものを一品選んでくれ」
「好きなものを一品……」
「ああ。ケチだとは思わないでくれ。これでも魔王軍はかなり厳しい状況に置かれているし、普通は勇者に塩を送ることはしない。百歩譲った末の、最大限の謝礼だと思ってくれ」
「いや、貰えるだけありがたいよ。俺が思っていたのは、こんなに沢山ある中から選ぶのは悩むなぁ……と」
「欲しい物が決まるまで、ゆっくり考えてくれていい。ここにリーフィアを置いておく。決めたら教えてくれ」
「え、ちょ……何勝手に──」
「何か文句ある?」
「…………イイエ、ナンデモアリマセン」
──拒絶したら死ぬ。
それを理解した私は、頷くことしか出来ませんでした。
◆◇◆
ヴィエラさん達は、まだやることがあると言って宝物庫から出て行ってしまいました。
ミリアさんも私と同じ罰を喰らうべきだと思ったのですが、彼女も一緒に宝物庫を出るとのことなので、流石に苦情を口にすると……。
「ミリア様には別の『お仕置き』がある」
それまで勝ち誇ったような顔をしていたミリアさんの顔面が、見る見るうちに白を通り越して青くなっていき、私は哀れな魔王様を笑顔で見送ったのでした。
てな訳で、宝物庫には私と古谷さん、ウンディーネの三人だけとなったのです。
「古谷さーーん。まだですかーー?」
「ごめん。まだ」
「…………古谷さーーーーん。まぁだですかぁーーーー?」
「……ごめん。まだ」
「こぉたぁにぃさぁーーーーん」
「ごめん、ちょっと黙っていてくれるかな!?」
ちぇー、怒られちゃいました。
つまらないのでベッドに寝転がり、天井を見つめます。
……黄金に輝く天井がうざいですねぇ。
チカチカするし、チカチカするし、チカチカします。
ったく、趣味が悪いですね。
「ウンディーネぇ…………」
『ん? どうしたの?』
「ぎゅーーーー」
『わっ……! ど、どうしたの?』
「ん〜、なんでもありませんよぉ」
ウンディーネの体は水で出来ているので、触れるとヒンヤリして気持ちいいです。落ち着きたい時に彼女を抱けば癒しになります。
「はぁーーーーぁ……ウンディーネ。愛していますから、一生私と一緒に居てくださいね」
『もう、リーフィア! 他の人が居るんだから、そんな恥ずかしいことを言わないでよ……!』
「おっと失礼。……ってことで古谷さん。今の忘れてください」
「中々に強烈な告白を忘れられるわけないでしょ!」
告白……?
彼は一体何を言っているのでしょうか。
私はウンディーネと一緒に居たいと言っただけなのに、どうしてそこで告白となったのか。
「ふっ、チェリーボーイには早過ぎる話でしたか」
「なっ! そ、その言葉はやめてくれないかな!?」
「では、童貞さん」
「言い方じゃなくてね!?」
チェリーだ童貞だと、古谷さんはその程度の話題で顔を真っ赤にしています。
本当にからかい甲斐がある人ですね。……まさか、本当に童貞だとは思っていませんでしたが。
「古谷さんって高校生でしょう? 世の中の若者ってお盛んですから、もう高校生になればヤっていると思ったのですが…………まさか彼女は?」
「……いない、けど……」
わーお、心も体も純情少年でしたか。
これには私も驚きです。
顔だけはイケメンでモテそうなのに、やはりへたれなのがいけないんですかねぇ。
彼、好きな人が居ても告白する度胸が無くて、タイミングを逃してしまいそうですし。
「古谷さんって、好きな人とか居ないんですか?」
「…………いるよ」
「え、まじですか? 誰です? やはり同級生ですか? どんな見た目してます?」
「案外グイグイ来るね」
「だって、気になるじゃないですか。……で? どんな子なんです?」
私はベッドから降りて、古谷さんに詰め寄ります。
「──っ、〜〜! お、教えない!」
すると、古谷さんは顔を真っ赤にさせ、そっぽを向いてしまいました。
「あらあら、恥ずかしがっちゃってぇ……」
「そりゃ恥ずかしいさ。好きな人なんだから」
「……まぁ、いいです。でも残念でしたね」
「えっ……?」
「だって古谷さんの好きな人は、地球の女の子でしょう? それで、ここは異世界。帰る手段があるかどうかすらわからないんですから」
ここは何でもありのファンタジー世界です。
徹底的に調べ尽くしたら帰る手段が見つかるのかもしれませんが、それが何年後になるのか……。
私は別に帰りたいとは思いませんが、同じようにこの異世界で二度目の生を受け、やはり地球に未練を残して帰りたいと思う人は少なくないでしょう。
古谷さんのような若者は、尚更そう思うのではないでしょうか。
でも、異世界に渡る魔法なんて、どこの文献にも載っていない。つまり、過去の人達がどれだけ漁っても、異世界に渡る手段は存在しないということです。
……もしかしたら神様なら知っているのかもしれませんが、そもそも神に会うことは不可能でしょう。
「別に、もう会っているんだけどね……」
「──え、何です?」
考え事に集中していたせいで、古谷さんが呟いた言葉を聞き逃してしまいました。
「ううん。何でもないよ」
「えー? そう言わず、ほら、もう一回お願いします」
「──、お、俺は選ぶのに忙しいから! また後でね!」
古谷さんはそう言い、財宝の山に集中してしまいました。
…………まぁ、今日のところはこれくらいにしておきましょう。
私は息を吐き、ウンディーネに振り返ります。
「ではウンディーネ。私達はベッドでゆっくり時間を潰しましょう」
『…………むぅ……』
「ウンディーネ。……ウンディーネ? どうかしましたか?」
『……何でもない』
小さく呟き、ウンディーネは『いこっ』と私の手を取ってベッドへ向かいます。
「…………んん?」
その後、ウンディーネはずっと頬を膨らませ、不機嫌をアピールしていました。
──何か、悪いことをしてしまったでしょうか?
私は訳が分からず、首を傾げるのでした。
8月、ですね……あっつい!
皆さんは熱中症にお気を付けてお過ごしくださいね




