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仲間に裏切られたガチャ中毒の俺、異世界で無限召喚スキルを手に入れ、最強の軍勢で世界を征服する  作者: ジャクロの精霊


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氷王の終焉

王城の大広間には、冷たい霧が漂っていた。

柱を覆う氷が静かにきしむ中、黒き鎖に縛られた王アルドレンが、怒りと屈辱に満ちた声で叫んだ。


「貴様ッ!下郎め!虫ケラめッ!我が玉座を……汚すなァッ!!」


その声は、恐怖と絶望に震えていた。


王座の階段の上、ハルトは静かに彼を見下ろしていた。

その眼差しは、まるで氷そのもの――だがその奥には、燃えさしのような光が宿っている。


その傍らには、もはや王冠も鎧も身につけていない元王妃・レンネの姿があった。

その瞳にあるのは、怒りではなかった。

――理解。

そして、決意だった。


ハルトが手を上げると、黄金の魔法陣が現れ、レンネを包み込んだ。

無数の召喚紋が星のように輝き、空気が震える。


「召喚コード――魂の再構築ソウル・リライト


光と霜が絡まり合い、レンネの姿は徐々に消えていく。

そしてその場に現れたのは――


氷と光を纏う、一人の女神のような存在。


銀白の髪が揺れ、氷を宿す瞳が静かに開く。

純白と金を基調とした神衣。

背中からは、透明な氷翼が広がっていた。


彼女は、優しくも強い声で名乗る。


「私の名は――セルフィラ・フロストヴェイル。

私の忠義は、私を解放してくれた者に捧げます」


その言葉に、大広間は息を呑んだ。

だがただ一人、王アルドレンだけが絶叫を続けた。


「呪われろ…レンネッ!お前は私のものだ!貴様は――私の所有物なんだァッ!!」


そのときだった。


パァン!


静寂を切り裂く、鋭い音。


セルフィラの平手打ちが、王の頬に焼き付き、

その場の空気すら凍りつかせた。


「私は……お前のものだったことなど、一度もない。

ただ、お前の“恐れ”の囚人だっただけ」


その言葉を告げた後、彼女は振り返り――

そして、ハルトにそっと口づけた。


王は狂ったように叫ぶ。


「やめろォッ!!それだけは許さ――!」


だが、ハルトはその叫びを一蹴する。


「その言葉に、もはや意味はない。

お前の“旧き世界”は、ここで終わる」


手を上げると、赤黒い鎖が光を放ち、王を拘束する。


「審判コード――執行命令エグゼキューション・オーダー


その合図と同時に、

カオリとマグノリアの影が、氷の間をすり抜ける。


鈍く、鋭い金属音。


王の断末魔は、もはや誰にも届かなかった。


王の身体は膝をつき、王冠は転がり、ハルトの足元で止まる。


セルフィラは静かに目を閉じる。


「これにて、“恐れ”の王の統治は終わったわ」


ハルトは頷く。


「そして、“理と炎”の時代が始まる」


沈黙の中、少年・ダヴィドは見つめていた。

理解しきれずとも、確かに感じていた。


世界は変わった。


セルフィラは再び跪こうとする。


「我が王よ……私を救いし者よ……」


だがハルトは彼女の腕を取り、穏やかに言う。


「跪くな。これからは……共に歩め」


セルフィラは静かに立ち上がる。

その衣が風のように舞い、王の亡骸の横を通り過ぎる。


そして振り返り、囁いた。


「アルドレン……眠れ。

その偽りを、氷の中に閉ざしたままで――」


宮殿の扉が開く。


外の空から、雪が舞い降りる。


だがその雪は、もう冷たくはなかった。


金色の輝きを帯びた、“温かな雪”が、

新たなる夜明けを告げていた。


北の旗はすべて降ろされ、

代わりに掲げられたのは――蒼氷に輝く金の太陽の紋章。

その紋がはためく塔を、民たちは静かに見上げていた。

畏れと、わずかな希望を抱きながら――

新しき時代の主の名を胸に刻む。

再建された城壁の中、

ハルトとその眷属たちがゆっくりと歩いていく。

カオリが肩をすくめて微笑む。

「……ふふ。今や、女王さえあなたに恋する時代よ」

マグノリアも肩を並べながら口元を緩める。

「それが“力”の代償ってやつかしらね」

セルフィラは二人を見やり、優しく微笑んだ。

「あるいは……

真の力とは、国を救うことではなく――

“心を、解き放つこと”なのかもしれません」

ハルトは無言のまま歩き続けながら、

遥かなる地平線を見つめていた。

「今日からこの国は、

過去の“奴隷”ではなくなる。

――新たな世界の“礎”となるのだ」

風が吹き抜ける。

その風は、山を越え、大地を揺らし、

やがて大陸全土に広がっていく。

その風の中で、誰かが名を囁いた。

――ハルト・アイザワ

その名が、歴史に刻まれる。

そして、

物語はなおも続く。

――つづく。

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