表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仲間に裏切られたガチャ中毒の俺、異世界で無限召喚スキルを手に入れ、最強の軍勢で世界を征服する  作者: ジャクロの精霊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/311

氷王の終焉

***

夜が北の王国を包み込んだ。

コロシアムの火は、最後の戦いの名残としてまだ燃えていたが、

宮殿の中は――まるで墓のように静かだった。

王アルドレンは玉座の間を行ったり来たりしながら、震える手を握りしめていた。

オーレリアの咆哮が、いまだ耳の奥で反響している。

彼の誇った勇士たちは次々と倒れ、

妻――女王レネもまた、敗れながらも気高く眠りについていた。

封じられた部屋で、意識のないまま。

そして今や、「ハルト・アイザワ」という名が――

王の兵の間ですら、囁かれ始めていた。

「……くそったれが……」

アルドレンは低く唸る。

「何者でもない異国の者が……この数世紀の血統を壊せるものか」

彼は振り返り、残った数人の側近に命じた。

「秘密の通路を用意しろ。今夜中に逃げる」

一人の顧問がためらいながら尋ねる。

「……民は、どうされますか? 陛下」

「奴らなど、ハルトと共に朽ち果てればよい!」

怒号と共に、王笏が床を打つ。

「この命さえ残れば、北は滅びぬ!」

――だが、その言葉は……

すでに、外で聞かれていた。

アルドレンは、護衛の精鋭4人に囲まれながら、

宮殿の奥深く、秘密の地下通路を進んでいた。

その手には、封印された古代の水晶があった。

それは、かつて北の山々の下に封じられた存在――

「絶対零度の竜」を解き放つ鍵。

(悪魔がいないというのなら……私が生み出してやる)

この王の計画は、狂気に満ちていた。

国を滅ぼしてでも、ハルトを討ち、恐怖で全てを支配し返すこと。

しかし、通路の終点にたどり着いたとき――

そこには、黄金の外套をまとう影が立っていた。

「逃げようというのか、陛下?」

落ち着いた声が響く。

王は凍りつく。

そこに立っていたのは、ハルト・アイザワ。

その周囲には――

エイルリス、カオリ、マグノリアが立ち塞がっていた。

空気が一瞬で凍りつくような緊張。

「殺しに来たわけじゃない」

ハルトが一歩前に出る。

「お前の“恐れ”が、どこまで堕ちたか……見届けに来た」

王は震えながら、水晶を握りしめた。

「貴様に何が分かる!? 外の者に統治の重みなど分かるものか!」

「統治とは、縛ることではない。

――解き放つことだ」

「自由に支配はない!

貴様こそ、この混沌をもたらした元凶だ!」

王が水晶を掲げ、叫ぶ。

「我が支配できぬなら――

この地には、“永久氷”が君臨するがいい!!」

水晶が砕けた。

地鳴りが轟き、古代の奥底から、凍てついた咆哮が響く。

“存在、解放。ゼロス――絶対氷の竜。”

多眼の氷獣、霜でできた巨体。

その顎から吹き出した冷気は、たった一瞬で護衛兵二人を凍りつかせた。

王は狂ったように笑う。

「そうだ! 滅ぼせ! 全てを焼き尽くせ、我が竜よ!」

だが、ゼロスはゆっくりと王を見つめ……

一噛みで、その命を喰らった。

沈黙。

ハルトは、その光景に微動だにせずつぶやく。

「……恐れを支配しようとする者は、恐れに喰われて終わる」

ゼロスが再び吠えた瞬間、通路が崩れはじめる。

ハルトは静かに手を掲げた。

「召喚コード:オーレリア・プライム――展開」

黄金の竜が炎の中から現れる。

その体は太陽のように輝き、翼は灼熱の嵐を呼ぶ。

氷の竜と炎の竜――

天と地がぶつかる。

山々が震え、氷柱と溶岩の嵐が空を裂く。

オーレリアが咆哮を上げ、神炎を直撃させた。

「ドラゴンズ・ホーリー・ノヴァ!!」

光が北の空を染め、

その中心でゼロスの姿は――掻き消えた。

残ったのはただ一つ、

王の玉座。

氷と炎が交錯し、**“終わり”**を象徴するように凍りついていた。

***

翌朝。

北の民たちが宮殿の前に集う。

王の姿は、どこにもなかった。

代わりに現れたのは、ハルトとその召喚体たち。

彼の目は穏やかに、しかし揺るぎなく――

朝焼けに照らされていた。

「――この王国は、王を失った」

その声は澄んでいた。

「だが、“魂”まで失う必要はない。

私は破壊しに来たのではない。

恐れに奪われたものを、取り戻すために来た」

群衆は沈黙する。

やがて、誰かが涙を流し、

誰かが膝をつき、

やがて――

ハルトの名が、初めて“恐怖”ではなく――

敬意とともに、民の間に響き渡った。

読んでいただきありがとうございます。著者プロフィールから他の作品もぜひご覧いただき、コメントを残していただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ