黄金の再誕
ハルトの足音が、破壊された邸宅に反響していた。
「選ばれし英雄」水無瀬カイトは、宴の残骸とこぼれた杯の間にひざまずいていた。
彼の剣は二つに折れ、すべてを失い誇りだけを残した男の虚ろな目を映していた。
「なぜ俺を殺さない、ハルト……?」
血を吐きながら震える声で言った。
「俺を辱めたいのか?」
ハルトは感情を見せずに見下ろした。
「違う。お前を正したいだけだ。
俺たちは同じ場所から来た……だが、お前は魂ではなく、ただの“映し”を選んだ。」
カイトは怒りの叫びを上げ、手を掲げて炎の魔法を放った。
だが、その力は届く前に消えた。空気そのものが拒絶したのだ。
ハルトの力がそれを無に帰した——まるで最初から存在しなかったかのように。
「お前の力は自我に支えられている。」
ハルトは歩きながら言った。
「俺の力は、目的から来る。」
ハルトは手を地面につけた。
黄金の魔法陣が広がり、部屋全体を包み込む。
空に舞うルーンが踊り、温かな光が壁を照らす。
《発動:黄金再誕(Golden Rebirth)》
腐敗した魂は浄化され、偽りの映しは破壊される。
カイトは叫んだが、その声は光にかき消された。
その身体は光に砕け、傲慢の影が塵のように剥がれていく。
利己的な記憶も、冷酷な言葉も、すべて黄金に溶けて消えていった。
ハルトは厳かに語った。
「お前の命は奪わない。
新たな命を与える。
仕えるとは何か、感じるとは何かを知るための命を。」
光が彼を完全に包み込む。
そして、ゆっくりと、新たな姿が現れた。
光が収まると、そこに跪いていたのは一人の少女だった。
長く銀色の髪が月の川のように流れている。
かつて暗かった瞳は、穏やかな金色の光をたたえ、静けさを映していた。
彼女は白地に青い縁の制服をまとい、風に揺れる軽やかなマントを羽織っていた。
そして、首にかけた金のペンダントは、割れた太陽の形をしていた——ハルトの紋章だ。
彼女は震える声で唇を開いた。
「……わたしは、誰?」
ハルトは静かに見つめ返す。
「お前はもう水無瀬カイトではない。
水無瀬カオリ——黄金の太陽の継承者だ。」
彼女は黙って彼を見つめた。
もはや憎しみも野心も感じなかった。
ただ、第二の人生を与えてくれた彼への深い絆が胸にあった。
そのとき、空気が震え、彼女の胸から新たなエネルギーが放たれた。
【覚醒能力:絶対共感】
周囲のすべての生命の感情と痛みを感じ取ることができる。
心はすべての魂に開かれ、憎しみすら理解する力を持つ。
【覚醒能力:不動の忠誠】
魂を浄化した者との永遠の絆。
裏切ることはできないが、その忠誠は義務ではなく、選択から生まれる。
アウレリアは頭を下げ、敬意を表した。
「皮肉ね……かつては心を操っていたのに、今はそれを感じる側になるなんて。」
マルガリータは笑い、鞭を肩にかけながら言った。
「それに……褐色娘に新しい仲間ができたようね。ようこそ、カオリ。」
カオリはゆっくりと立ち上がり、まだ震える手を見つめ、そしてハルトを見た。
「この命をくれたのなら……
それを使って、かつての自分を償わせて。」
ハルトはうなずいた。
「ならば立て、水無瀬カオリ。
今日から、お前は“黄金の太陽”の旗のもとに、俺と歩むのだ。」
空が開かれ、光の奔流が邸宅を照らす。
闇が消え、カイトの紋章——英雄の腐敗した太陽は消滅した。
それに代わって現れたのは、新たな印。黄金の剣に割られた太陽の紋章。
カオリはそれを見上げながら、静かに涙を流した。
それは痛みの涙ではなかった。
赦しと救いの涙だった。
「誓うわ……もう二度と心を閉ざさない。」
ハルトは最後に彼女を見つめ、そして扉の方へ向き直った。
「おかえり、カオリ。
これから……偽りの英雄が不死ではないことを世界に示す。」
風が吹き抜け、過去の人生の灰を運んでいった。
そして夜明けの中——“黄金の執行者”の新たな仲間が、生まれた。
こうして、ハルトによって浄化された最初の勇者、水瀬香織は生まれ変わった。
彼女の能力、「絶対的な共感」と「揺るぎない忠誠」は、揺るぎない二面性を象徴する。揺るぎない信念を失うことなく感情を抱き、奴隷と化すことなく存在し続ける。
この再生は、贖罪の始まり…そして真の黄金の復讐の始まりを告げる。
この章が気に入ったら、評価、コメント、お気に入りへの保存をお願いします。
あなたの応援は、この物語の発展とランキング上昇の支えとなります。




