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仲間に裏切られたガチャ中毒の俺、異世界で無限召喚スキルを手に入れ、最強の軍勢で世界を征服する  作者: ジャクロの精霊


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北の嵐

北風は、肌を裂く刃のようだった。

黄金の王国の軍は、果てしない吹雪の中を進んでいた。

竜たちは雲の上を旋回し、金色の影となって空を覆っていた。


白馬に乗ったサヤカは、魔法で強化された地図を確認していた。


——雪が斥候の印を隠しているけど、魔力の残響はまだ残ってる。

氷の中から私たちを見ているわ。


部隊の先頭に立つカオリが顔を向けた。


——待ち伏せか?

——どちらかと言えば、静かな狩りね。まだ撃たないで。気づいていないと思わせておきましょう。


ハルトは黙って馬を走らせていた。

金の縁取りがある黒いマントを身にまとい、馬のひづめの音が太鼓のように鳴り響く。

空気は異様に重く、息苦しいほどだった。


オーレリアが人間の姿で空から降り立つと、周囲の雪が溶けて蒸気を上げた。


——禁術の匂いがする。風が金属の味を運んでる……古い血の味。


ハルトは視線を落とした。


——ユウトが待っている。決戦の前に、我々の力を測るつもりだ。


その瞬間、空気を裂く風が走った。

兵士の一人が倒れ、胸に氷の弾が突き刺さっていた。


サヤカが手を挙げた。


——魔導狙撃手、東へ3キロ! 砂丘の陰に隠れて!


モモチが煙のように姿を消した。


——あとは私に任せて。


数秒後、凍った木々の間で影が動いた。

敵の魔道士二人が悲鳴を上げる間もなく喉を裂かれた。

モモチはサヤカの前に再び現れ、赤い目で報告した。


——3人減らした。でも北側の側面からまだ来てる。


ライラがグリモアを開いた。


——天よ、我が声に応えよ!《氷天反転ひょうてんはんてん》!


前方に巨大な氷壁が爆発的に立ち上がり、敵の魔法攻撃を反射した。

轟音が雷のように響き渡る。


ハルトが手を伸ばす。


——《発動:破壊のはかいのりつ》!


空を裂く黄金の線が走った。

氷は粉々に砕け、奔流のようなエネルギーが戦場をなぎ払った。

丘は見えない巨人が踏みつけたように裂け、敵は塵となった。


サヤカが馬から降り、地面に巻物を広げた。


——ユウトは北の谷に監視塔を設置している。正面からは進めないわ。


——なら、東へ進む。——ハルトが言った。


——あそこには呪われた森があるわ。——カオリが警告する。


——それでいい。——ハルトは冷たい笑みを浮かべた。

呪われた者は、悪を恐れない。


サヤカは驚いて顔を上げた。


——それ……軍略じゃない。


——ああ。——ハルトが答えた。

これは「宣言」だ。


オーレリアが腕を組み、片方の口角を上げた。


——じゃあ、地獄へ足を踏み入れましょうか。


軍は魔力で結晶化した樹々の中へ進んでいった。

すべての幹に、氷に閉じ込められた人間の顔が浮かび上がり、無言で叫んでいた。


ライラがハルトの後ろを歩きながら、魔力の流れを読み取っていた。


——この魂たちは守護者として封じられている。均衡を崩せば、目を覚ますわ。


カオリは槍をしっかりと握った。


——目覚めたらどうする?


——ならば、解放する。——ハルトは足を止めずに答えた。


その時、森に声が響いた。


「ハルト・アイザワ……ついに北に来たか。」


空気が黒く染まり、氷の中から一つの人影が現れた。

骨の仮面と空色のマントを身に纏ったその者は——


カガミ・レイシン。

北の暗殺者、かつての同級生。


——ユウトの命令だ。お前を迎えに来た。


ハルトは表情を変えずに彼を見た。


——迎えに来たんじゃない。俺は「取り立て」に来た。

兵たちは二人を囲むように輪を作った。

カガミは青い蒸気を放つ剣を抜いた。


——まだ復讐を信じているのか、ハルト?


——もう信じていない。


——では、なぜ戦う?


ハルトは顔を上げた。


——他の者たちが「偽り」を信じ続けることを、これ以上許せないからだ。


空が轟いた。

オーレリアがその背後で竜の姿に変わり、銀の翼を広げた。

サヤカは兵に後退を命じ、次の攻勢の準備に入った。


カオリが一歩前に出た。


——ご命令を! 私にも共に戦わせてください!


ハルトは首を横に振った。


——この戦いは……俺のものだ。


雪の結晶が空中で止まり、時間そのものが凍りついたかのようだった。


カガミが笑みを浮かべる。


——ならば、お前の「正義」の価値、見せてみろ。


そして、二つの剣が激突した瞬間、

森の氷が百万の破片となって砕け散った。


空からは竜たちの咆哮が響き、

北の戦争が、ついに始まった。


――つづく。

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