戦支度
夜明けは、黄金の王国創建以来聞かれなかった音とともに訪れた——
槌の歌声だ。
作業場では鍛冶師たちが休むことなく働いていた。
空気は溶けた鉄と凝縮された魔力の匂いに満ちていた。
ガチャの結晶が主炉の上で金色の円を描きながら回転していた。
ハルトは炉のそばに立ち、ライラが新たな武器に力を注ぐのを見守っていた。
一撃ごとに青い火花が弾け、彼女の魔力と共鳴していた。
——この剣は肉体を斬るだけじゃないわ。
この世界の偽りをも断ち切る。
ライラがそう言うと、ハルトはうなずいた。
——ならば、その使命にふさわしくあれ。
一つの武器が浮かび上がった。
金の核を持つ黒い槍だ。
その表面には名が刻まれた——「ヘリオス・ファング(太陽の牙)」。
オーレリアはそれを敬意をもって手に取った。
——竜の炎と天の金属で鍛えられた。
北方での私の武器となる。
訓練場では、カオリとサヤカが兵士たちの列を確認していた。
百の精鋭部隊。征服された王国の生存者たちから選ばれた者たち。
彼らは単なる戦士ではなく、新しき秩序の信徒だった。
軽装の鎧に光る槍を持つカオリが叫んだ:
——黄金の王国は帝国ではない! それは「約束」だ!
そして私たちはその盾!
軍勢の咆哮が城壁を震わせた。
隣のサヤカは、冷静な口調で微笑んだ。
——彼らの熱意は役に立つ。でも、まだ恐怖に支配されている。
——ならば、希望を与えて。——カオリが応えた。
——私は信仰が得意じゃない。
——最初は誰だってそう。
その言葉に、サヤカは数秒間見つめ返した。
その誠実さに驚きながら。
そして、初めて胸の奥に温かい何かが灯った。
城壁の外では、オーレリアが黄金の王国の竜たちと会っていた。
五体の竜。それぞれ色も大きさも異なる。
その目は、雪の中でも松明のように輝いていた。
——北が炎に包まれる時、偽りの約束に隠れる者たちに慈悲はない。
私たちは、暁の炎のごとく飛ぶ!
竜たちが咆哮し、空を覆う突風を巻き起こした。
その陰で、モモチが武器を調整しながらそれを見ていた。
かすかな声でささやいた。
——彼らが空を見上げるなら、私は闇を見張る。
作戦室では、ハルトがロウソクに照らされた地図を見つめていた。
すべての動きが計算されていた。
すべての命が数えられていた。
彼の目は冷たく、しかし呼吸は重かった。
そこへカオリが物資のリストを持って入ってきた。
——準備は整いました。
——よくやった。——ハルトは顔を上げなかった。
——……でも、あなたは整っていない。
その言葉に、彼は彼女を見た。
一瞬、将軍の仮面の裏にいる一人の男が顔を覗かせた。
——休む余裕はない。
——身体のことじゃないわ。——カオリが静かに言った。
心のことよ。
ハルトは目を閉じた。
——許されぬ心は、安らかに鼓動する資格もない。
カオリは唇を噛み、説得できないと悟った。
ただ静かに頭を下げ、ささやいた。
——ならば、あなたがもう感じられないもののために、私が戦うわ。
夜が訪れると、黄金の王国全土の民が中央広場に集まった。
何百もの松明が、仮設の玉座を囲む光の輪を形作っていた。
ハルトが立ち上がり、そのマントが風にたなびいた。
——黄金の王国の民よ!
明日、我らは北へ向かう。
征服者としてではなく……
誰も見ようとしなかった「真実」の証人として。
風が強く吹きつけ、雪が舞い落ちた。
それは松明の炎と混じり合い、光と影を揺らした。
——我らは悪魔と呼ばれるだろう。暴君と、怪物と。
あるいは、それは正しいのかもしれない。
だが、この世界が我らをそうしたのだ。
我らが求めるのは栄光ではない……ただ「正義」だ。
軍は武器を掲げた。
その叫びは山々を震わせた。
オーレリアが翼を広げ、その影がハルトを包んだ。
カオリとサヤカはその隣で、静かに誓いを立てた。
「赦しを必要としない黄金の太陽のために——
我らは進軍する。」
黄金の炎が空へと立ち昇り、
北への遠征の始まりを告げた。
――つづく。
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