表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仲間に裏切られたガチャ中毒の俺、異世界で無限召喚スキルを手に入れ、最強の軍勢で世界を征服する  作者: ジャクロの精霊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/311

ゼロ作戦

フレイガルドの戦争司令室は、乾いた血の跡が残る地図と巻物で覆われていた。

高峰悠人は、冷たい視線で大陸全体を見渡していた。

その向かい、鏡俊介は黙々と剣を拭っている。


「……いつ、命令を出す?」


俊介の問いに、悠人は黒くひび割れた魔石を掲げて答えた。


「――もう出した」


「“作戦コード:ゼロ”……既に始まっている」


その瞬間、闇の中から一人の女性が前へ歩み出る。

暗い紫の髪、灰色の瞳、落ち着いた気配を纏った者。


「名前:水無月サヤカ」

「ハルトの元クラスメイト。かつては、クラス最高の戦術士」


俊介は興味深そうに笑みを浮かべた。


「……あいつ、お前の顔を覚えてると思うか?」


「ええ」サヤカは表情を崩さずに答える。

「それが、私の狙いです」


悠人は騎士団の紋章が刻まれたペンダントを渡す。


「任務は単純だ。黄金の王国に潜入しろ」

「北から逃れてきたと見せ、庇護を求めろ。信頼を勝ち取れ」


「……そして、“時”が来たら、この印を発動しろ」


「この印……何をするの?」


「――呪詛の“残響”を解放する」


「ハルトが何かを召喚すれば、それは我々の手の中に堕ちる」


サヤカは静かに頷く。


「……それなら、ゲームを始めましょう」


***


三日後――


激しい嵐が黄金の王国の城壁を打ちつける夜。

見張り台から、雪の中をよろめきながら進む人影が確認された。


ボロボロのマント、震える声。


「お願い……撃たないで……私は人間……!」


その女はすぐに城へ運ばれ、カオリとアウレリアの前に連れ出された。


身体は新しい傷で覆われ、

瞳は涙に濡れ、言葉は震えていた。


「水無月サヤカ……。

 あなたたちと同じ“召喚者”です……北から逃れてきました」


「高峰悠人……あの人は……恐ろしい計画を進めている……

 お願い……助けて……」


カオリは警戒したまま彼女を見つめる。


「どうして、ここに来たの?」


サヤカは目を伏せた。


「ハルト……彼だけは、“ただ殺されて終わるべきじゃない”……」


アウレリアが腕を組む。


「言葉には毒があるが、恐怖は本物だ」

「……何を恐れている、人間?」


サヤカは呟いた。


「“何もしないまま死ぬこと”を……」


カオリとアウレリアは視線を交わし、

ついにカオリが頷いた。


「――ハルト様が判断されます」


***


玉座の間。


サヤカは膝をつき、ハルトを直視しないようにしていた。

金色の炎が壁に揺れ、影が床を這っていた。


「……また一人、俺たちの“クラス”からか」

ハルトは片肘をつきながら言う。


「同盟者として来たか? それとも――スパイとしてか?」


サヤカの肩が震える。


「ただ……死にたくないだけ」


ハルトはゆっくりと立ち上がり、

彼女へと歩み寄る。


「――あの断崖で俺が堕ちたとき、誰も振り返らなかった」


「今になって、“庇護をくれ”とは……」


「なぜ信じるべきだ?」


サヤカは、初めて彼を真正面から見た。


「……私は裏切りに来たのではありません」

「理解しに来たのです」


緊張が空間を包み込む。

カオリは息を呑み、アウレリアは眉をひそめる。


だが、ハルトは――処刑命令を出さなかった。


「……よかろう」


「ここに残れ。

 だが、もし嘘をついていたら――

 その罪は、“ガチャ”が裁く」


サヤカは深く頷く。


だが――その背中を向けた瞬間、

彼女の目は冷え切った鋭さを取り戻していた。


(ハルト……あなたはいつも、読めない男だった)

(だが今回は、私の方が“先手”を取っている)


***


深夜。


サヤカは誰もいないバルコニーに立ち、

ペンダントを手に取った。


それは、悠人から渡された呪印の鍵。


「……フェーズ1完了。信頼獲得」


だが、その時。


ペンダントが震え、光を放ち始める。

――それは、城ではなく“彼女自身”に反応していた。


「……なっ……何これ……!?」


その瞬間、声が脳内に響く。


「――水無月サヤカ。

  お前の心は、すでに“お前のものではない”」


彼女の腕に黒い紋章が浮かび上がる。

操作型呪詛――“作戦コード:ゼロ”の真の目的。


それはスパイではなく、

サヤカを**“生ける傀儡”**に変える儀式だった。


「やめてっ……やめてッ!!」


苦痛に満ちた叫びが夜を裂く。

サヤカは膝をつき、涙とともに地面を叩いた。


「ユウト……くそがっ……!」


その気配を感じ取ったのは、眠っていたカオリだった。


「……今のは……魔力の歪み!?

 ――東翼のバルコニー!?!?」


彼女は即座に立ち上がり、杖を手に取った。


そして――運命の夜が動き出す。

ハルトが到着したとき――

サヤカはすでに倒れかけていた。


首元に刻まれた黒い印が灼けるように輝き、

その瞳は、灰と黒の間で揺れていた。


「……何をされた」

ハルトの声は低く、しかし揺るがぬ怒気を秘めていた。


サヤカは苦しげに言葉を絞り出す。


「……私の身体を……“錨”にしたの。

 この国を……見張るための……。

 あなたが“ガチャ”を使えば……あの人たちに伝わる」


ハルトは彼女を抱き上げ、

その眼差しに揺るがぬ決意を宿す。


「――ならば、無力化する」


その瞬間、アウレリアが駆け込んできた。

戦闘態勢のまま、状況を察知する。


「手遅れでは……? どうするつもりか、ハルト様」


ハルトは静かに顔を上げた。

その声は、死のように冷たく、静かだった。


「接続を断つ。

 ……たとえ、それが“魂”を裂くことになっても」


炎の灯火が彼の頬を照らす。

その眼に迷いはない。


そして――


その夜が明ければ、

始まるのは刃の戦ではない。


目に見えぬ影の戦場。

魂と意志の戦争。

スパイと裏切り者たちが交差する、静かなる地獄。


――つづく。


ぜひ評価、お気に入り登録、そして良いか悪いかのフィードバックをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ