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仲間に裏切られたガチャ中毒の俺、異世界で無限召喚スキルを手に入れ、最強の軍勢で世界を征服する  作者: ジャクロの精霊


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黄金の影

太陽がまだ昇らぬうちから、

黄金の王国の通りにはざわめきが広がっていた。


酒場で、

市場で、

民家の庭先で――

人々の口は、同じ言葉を繰り返していた。


「新しい領主は、五人の女と寝起きを共にしているらしい。」

「その中の一人は、かつての英雄だとか…」

「まさか、禁じられた魔法で女たちを操っているのでは?」


恐れと好奇心。

それは、いつも手を取り合って広まっていく。


かつて「救世主」と称えられたハルトに、

少しずつ――疑念の影が差し始めていた。


城内では、新兵たちが緊張の面持ちで訓練に励んでいた。

中には彼を尊敬する者もいたが、

密かに嫉妬や不信を抱く者も現れていた。


「女に囲まれて遊んでるやつに、忠誠なんか誓えるかよ…」

ある兵士が剣を研ぎながら、低く呟いた。


「静かにしろ。あの“竜女”に聞かれたら、お前の舌はもたないぞ。」

別の兵士がそう囁くも、

疑念という種は、すでに土に落ちていた。


評議の間では、緊迫した会議が続いていた。

新たに任命された将軍の一人――ダルガン卿が拳で机を叩いた。


「このままではまずい!

民は安定を求めている。

“魔女に囲まれた領主”ではなく、“正統の王”を!」


その隣で優雅に座っていたライラは、

冷たい視線で彼を見つめた。


「…魔女、ですって?」


ダルガンは言葉に詰まり、喉を鳴らした。

「し、失礼…。

だが、民は“理解できないもの”を恐れるのです。」


帽子をくるくると回しながら、マルガリータが軽く笑った。

「なら、理解させればいい。

…それすらできないなら、兵士なんて名乗らないことね。」


空気が重くなる中、カオリが静かに口を開いた。


「私たちは争いに来たわけではありません。

ハルト様は、あなたたちを信じて任せた。

…それでは、足りませんか?」


「足りませんとも!」

ダルガンが声を荒げた。

「あなた方は血を流さない!

民の飢えも、寒さも、剣の恐怖も知らない!」


その瞬間、アウレリアが静かに立ち上がった。

竜の気配が、空間を満たす。


「私は知っているわ、将軍。

私もかつて、“恐れられる存在”だったから。

だがなぜ民は恐れるか?

…それは、“誰がその炎を導くか”によって変わる。」


ダルガンはうつむき、

それ以上は何も言えなかった。


夜――

ハルトは城の庭で、空を見上げていた。


噂は彼の耳にも届いていた。

無視はできる。

だが――

兵たちの視線が変わったことは、見逃せなかった。


カオリがそっと近づく。


「…知っているのね?」


「うん。」


「どうするつもり?」


ハルトは目を閉じ、静かに答えた。


「――何もしない。」


「なにもしない…!?」


彼は彼女を見て、落ち着いた声で続けた。


「怒りで返せば、彼らの恐れを肯定することになる。

冷たくなれば、信頼を失う。

今は――ただ、観察するだけでいい。」


カオリは黙って頷いた。

理解の色が瞳に浮かぶ。


「…時々、忘れてしまうの。

あなたが王じゃなく、ただの学生だったってこと。」


ハルトはかすかに笑った。


「そして君は…

俺の誰よりも、強くなった。」


彼女が返事をしようとしたそのとき、

影が木々の間から現れた。


モモチだった。

身を低くし、気配を殺して近づく。


「我が主。

…噂だけじゃありません。

動いてる者がいます。」


「誰だ?」


「名はわかりません。

夜ごとに演説、匿名の文書。

“黄金の王国は汚れた手に落ちた”と。」


ハルトの瞳が細くなる。


「……始まったか。」


そして翌朝。

王国の中央広場――

壁という壁に、無数の巻紙が貼られていた。


目を覚ませ、民よ!

偽りの王は、禁術を用い女たちを操っている。

黄金の王国は、浄化されねばならぬ。


風が一枚をはがしても、

その下からはさらに三枚が現れた。


城の塔の上で、マルガリータがそれを見下ろしていた。


「…やるわね、こっちより一手早い。」


その背後、ハルトが静かに答えた。


「なら、俺たちは二手先を打つ。

――“太陽”は、影を恐れない。

それを照らすだけだ。」


静かな戦争が始まった。

それは、かつての“魔”との戦いではない。

人の心に潜む、“恐れ”との戦い。


――つづく。

読んでいただきありがとうございました。気に入っていただき、興味を持っていただけて嬉しいです。メキシコからご挨拶とハグをお送りします。

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