過去の亀裂
会議は終わったが、ホールにはまだ鉄と影の匂いが漂っていた。
警備員たちは壊れた壁を修理していた。
手錠は緊張したままゆっくりと外されていた。
香織は何も言わなかった。
泣かなかった。
叫ばなかった。
ただ決意に満ちた足取りで、誰にも目を向けずに部屋を出て行った。
ハルトはすぐにそれに気づいた。
ハルト
「香織…」
彼女は答えなかった。
彼女の影は中庭へと続く廊下へと消えていった。
ハルトは彼女の後を追った。
宮殿の中庭 – 夜
月明かりが木々を照らしていた。
香織は彼に背を向け、白く染まるほど強く手すりを握りしめていた。
彼女の刀は彼女の傍らに置かれていた。
彼女の呼吸は荒かった。
ハルトは静かに近づいた。
ハルト
「香織…大丈夫か?」
彼女は緊張した。
しかし、振り返らなかった。
香織
「…だめだ。」
彼女の声は途切れ途切れだった。ハルトが彼女から聞いたことはほとんどなかった。
香織
「克郎があんなこと言った時…」
「学校のこと…私が…」
彼女は言葉を止め、唾を飲み込んだ。
香織
「…前に君をかばったことで、あんなに憎まれていたんだ。」
ハルトは驚きで目を見開いた。
香織は、まるで記憶が苦痛であるかのように、ぎゅっと目を閉じた。
香織
「君に近づいたことで、何度私を侮辱したか…知っているか?」
「君みたいな取るに足らない人間と話しただけで、『才能のないクズ』呼ばわりされたこと…?」
ハルトは一歩前に出た。
しかし、香織は震える手で彼を止めた。
香織
「私は、それを全部耐えてきた。」
「君のそばにいたい。」
一筋の涙が頬を伝った。
香織
「でも、あんなに強くて…憎しみに満ちた彼を見て…」
「ハルト…怖かった。」
ハルトは胸に鋭い刃が突き刺さるような感覚を覚えた。
彼は近づいた。
優しく彼女の手を握った。
彼女は離れようとしなかった。
しかし、彼女は震えていた。
ハルト
「香織…そんな重荷を一人で背負うべきじゃなかった。」
彼女はようやく目を開け、怒りと悲しみ、そして愛情が入り混じった目で彼を見つめた。
香織
「私はあなたの妻よ!私はあなたの将軍よ!」
「僕は強くあるべきなのに!」
ハルトは突然彼女を抱きしめた。
強く。
優しく。
声を途切れさせずに。
香織は最初は凍りつき…
そして彼の胸に倒れ込み、服にしがみついた。
香織(泣きながら)
「君を失いたくない…」
晴人は香織の髪を撫でた。
晴人
「香織…」
「僕は死なないよ。」
「君から離れない。君も、他の誰とも。」
「もし克郎が戻ってきたら…立ち向かうよ。」
「だって、今度は…一人じゃないんだから。」
香織は顔を上げた。
彼女の顔は赤かった。
彼女の瞳は涙で輝いていた。
そして晴人が言葉を発する前に…
彼女は彼にキスをした。
必死で燃えるようなキス。恐怖と抑えきれない愛情が入り混じっていた。
晴人は彼女の腰を抱きしめ、同じくらいの強さで応えた。
二人が別れるとき、香織は息を荒くしていた。
香織
「晴人…愛している。」
「この世に生まれる前から。」
「そして今は…さらに。」
ハルトは彼女の額に自分の額を寄せた。
ハルト
「水瀬香織。」
「僕も愛している。」
彼女は涙を流しながら、その夜初めて微笑んだ。
二人は月明かりの下で抱き合った。
過去に刻まれた二つの魂…来たる戦争で互いを守ると誓い合った。




