世界を一人で背負うな ― 罪悪感を止めた手
ハルトはどうやって寺院を出たのか覚えていなかった。
ただ、今は神木の台座に静かに座り、森を見つめているだけだった。しかし、森を本当の意味では見ていない。
そよ風が髪を揺らしたが、彼は反応しなかった。
彼の心は、その瞬間に囚われたままだった。
カツロの手が緩む。
声がかすれる。
息が荒くなる。
ハルトは痛くなるまで歯を食いしばった。
「彼を救えたのに…」と彼は囁いた。
もし私が何か違うことをしていれば。
もし私がもっと強くいれば。
もし私がもっと早く到着していれば…
かすかな足音が近づいてきた。
カオリ。
しかし、彼女の後ろには、出産を手伝ってくれたオーレリア、マルガリータ、セリンドラ、そしてエンジェル博士がいた。皆が静まり返り、心配と愛情に満ちた表情を浮かべていた。
香織は他の者よりも近づいた。
彼女はハルトの前にひざまずいた。
そして、一言も発することなく、彼の手を握った。
ハルトは香織を見なかった。
「香織…放っておいて。」
彼女はきっぱりと首を横に振った。
「だめ。」
ハルトは目を閉じた。
「私は…疲れている。」
香織:
「疲れているんじゃない。
怪我をしているだけ。」
彼は何も答えなかった。
彼女は彼の手を強く握りしめた。
「ハルト…
帝国の任務に失敗したと思った時、何て言ったか覚えているかい?」
ハルトはかすかに目を開けた。
香織は優しくも毅然とした声で言った。
「あなたは私に言った。
「一人で罪を背負わないで。私がここにいる。」いつもだよ。」
彼は大きく唾を飲み込んだ。
「あれは…違った。」
香織は再び首を横に振った。
「違う。」全く同じよ。」
彼女は少し近づいた。
彼女の両手はゆっくりとハルトの頬に触れ、彼に自分を見つめさせた。
香織は涙をこらえたが…、表情は毅然としていた。
「ハルト…克朗の死はあなたのせいじゃない。」
ハルトは目をそらした。
「私が彼をこの世に生み…私が彼に向き合い…私が知らず知らずのうちに彼をあの闇へと突き落とした…」
香織は初めて声を張り上げて彼の言葉を遮った。
「違う!」
ハルトは凍りついた。
香織は震えながら深呼吸をした。
「克朗は彼の道を選んだ…しかし最後には…あなたの敵としてではなく、友として死ぬことを選んだ。」
オーレリアは前に進み出て、香織が倒れないように優しく抱きしめた。
そして彼女も、温かい声で言った。
「ハルト…あなたは、彼にとって最後の光だった。あなたは彼を一人にしなかった。
マルガリータはハルトの右に座り、肩に頭を預けた。
「彼はあなたの名前を口にしながら死んだ…つまり、彼はあなたを必要としていたということ。
彼があなたを信頼していたということ。
彼が去る前にあなたを許していたということ。」
エンジェル博士は優しく付け加えた。
「時には…体を救うことは不可能だ。
しかし、たとえ最期の瞬間であっても、心を救うことは…それ自体が奇跡だ。」
ハルトはついに、自分の内側で何かが壊れるのを感じた。
深い亀裂。
耐え難い重み。
香織はそれを見た。
そして、もう待つことなく、彼女は彼を抱きしめた。
優しい抱擁ではない。
強く、切実で、真摯な抱擁。
愛する人を失うことを恐れる人の抱擁。
「泣いて、ハルト」香織は声を詰まらせながら囁いた。「いつも強くいる必要はないのよ。世界の重荷を一人で背負う必要はない。
ハルトは震えた…
そしてこの世に生まれて初めて…
涙を流した。
オーレリア、マルガリータ、セリンドラ、そしてドクターが彼を抱きしめ、取り囲み、包み込み、抱きしめた。
戦士としてではなく。
召喚獣としてではなく。
家族として。
セリンドラは低い声で言った。
「ハルト、あなたには私たち全員がいるわ。
私たちは守られるためにここにいるのではない…私たちもあなたを守るためにここにいるのよ。」
ハルトの涙は、ついに彼を愛する者たちの肩に落ちた。
言葉はなかった。
言葉はなかった。
ただ傷ついた男が、愛する手に抱かれていた。
静かなすすり泣きが辺りに響き渡る中、彼の心の中に一つの考えが浮かんだ。
冷たく、鋭く、そして断固たる思い。
「日食の神よ… 貴様に報いを与えよう。」




