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カウンセリング。事件とからさわぎは紙一重 その2


「それで、今回のその話と俺の同席を希望することに何の因果関係が?」

 本題がどういうものなのか分かったので、俺はこの白蛇の契約主の少女に訊ねた。


「アルフくんの契約している精霊獣さんって、巳縄ミナワと同じように人とお話出来るのよね?」

「そうだよー。だからアルくんとは他の人より仲良くやれてるのさ」

「やはりそうだったの。事情をある人から伺っていたから。『風呂も寝る時も一緒らしくて、まるで恋人と暮らしてるみたいだろ?』って」

「ダリオのヤロー……」


 俺は頭を抑えた。何がまぁ誰にだって……あるよな、だ。何が言いふらすつもりはないから安心しろ、だ。

「だからこそ相談の際に良いご意見が聞けるかもしれないと思ったの。特に深い意志疎通が出来る精霊獣との接し方とか」


 とは言われても、鈴狐リンコは人型になったり精霊結界の中で養って貰ったりと、一般のそれとはまるで違った関係だ。たとえば契約を破棄したくなったとか、嫌いになったから距離を置きたいという発想は今まで一度たりとも考えたことはない。

 彼女が参考に出来るかどうかは微妙なところだ。


 気を取り直したベル先輩がカウンセリングを推し進める。

「ティナ君、君は蛇が苦手なのはきっと契約する以前からなのだろう」

「はい」

「それはやはり生理的な嫌悪が問題かい?」

「というより、怖いというかどうしても拒否感が出てしまうというか」

「俺っち別に悪いことしないのになぁ。で、これ何の話?」

 途中参加の白蛇は自分の置かれた状況など露知らず、呑気に聞いている。


「そういうのって得体の知れなさとか、何をしてくるか分からない危なさから怖いのであって、話が出来る相手ならそう嫌がるものでもない気がするんだけどなぁ。先輩だって遠慮なく巳縄ミナワを絞ってたけど、普通の蛇にはそんなことしなかっただろうし」

「理屈はそうかもしれないがねアルフ、本能というのはそう簡単な話ではないと思うんだ」

「私も、分かってはいるんですよ。この子が別にひどいことをして来ないというのは。けれど……」

 スカートの裾をぎゅっと握りしめるティナ。本人も真剣に悩んではいる。


「さて、どうしたものか。最終手段は巳縄ミナワの説得だとして、別に両者は険悪という訳でない以上、解消するには克服させるのが一番だと思う」

「何か良い方法ありますか先輩」

「なーなー、さっきから俺っちを噂してどうしたんだよー。ハニーと可愛い子ちゃんとの取り合いにされるなんて参っちまうぜ」


 話を本人にも切り出すべきか迷っている間に、鈴狐リンコが口火を切る。

「ミナワとやっていくのが辛いから別れようか悩んでいるんだってー」

鈴狐リンコォ! もっとオブラートに包んで言ってやって!」


 あんぐりと、白蛇は顎をだらしなく開いて茫然自失になる。あからさまなショックを受けていた。

「……ハ、ハニぃ?」

巳縄ミナワ、ごめんなさい。私、これでも我慢してきたけれど、もう限界なの……」

「そ、そんなこと言わないでさぁ! 仲良くしようよぉ! ハニーのこと一番大事なんだよぅ!」


 逆効果であるのに巳縄ミナワは必死にすり寄ってティナの腕に頬擦りする。すると感電したように彼女は悲鳴をあげてまた席を立った。

「いやぁああああ! もう無理ぃいいいいいいいいいい!」

「あ、待って──ハァアアニィィイイイイイイイイイイイ!?」

 その場から相談相手は教室を出て、走り去る。精霊獣はその場に置いてけぼりにされた。




 それから、しょうがないので俺は巳縄ミナワを連れてティナを捜すことに。流石にこの蛇だけが廊下を這っていたら大騒ぎになるのは分かりきっているので、同伴者が必要になってくる。ベル先輩だとまたセクハラをしだす可能性がある為、消極法として俺が運ぶ話となった。


「ったくよ、何が悲しくてヤローの身体に貼り付いてなきゃならんのか」

「嫌がることしたからこうなったんだよ」

「けっ何だよ全く! 俺っちはただ親しくなりたくてハニーにスキンシップしただけだっつーの」

「でも相手のこと考えてやらないと駄目だろう」


 俺の顔の隣で、鎌首をもたげた白蛇がぼやいていた。

 鈴狐リンコはいつものように肩に乗り。巳縄ミナワは首にマフラーみたいに巻き付いていた。ファッション感覚で動物を飾ってるみたいになってる。

 当然すれ違う周囲の生徒から奇異の目線が集まる。嫌だなあ、変な誤解されそうで。



「けど俺っちだってハニーの気持ちは大切にしてるつもりだぜ? 奥手なハニーをリードしてやらにゃあ男が廃るってもんだろ」

「んー、その心意気は評価したいな。契約主に対する想い、分かるよー」

 鈴狐リンコは何故か白蛇の肩を持った。精霊獣同士に通ずる何かがあるらしい。


「へぇ、そいつはラブかい?」

「ラブだよう」

「どうやら見どころあるようじゃねぇか」

「そっちもねぇ」

 俺の耳元で彼女達は変に気取った調子になってやり取りする。


 それにしてもティナは一体何処に行ったのだろう。相談をほったらかしで逃げるのは良いが、まさか校外に出てはいないとは思うが中々見つからない。

 他の階層も回っていると、見知った二人とバッタリ遭遇した。



「あれー? アリスのお兄さんじゃん。こっちの階で何やってんの?」

「アルフ先輩こんにちは」

「やぁレイチェル、ロベルタ」

 片や気安い態度で接する栗毛のスポーツ系少女。片や礼儀正しく挨拶をしてくる黒髪眼鏡の優等生系な女生徒。どちらもあの事件を引き摺っていないようで良かった。


 今はアリスとは別行動なようで、二人組で出歩いている。

「ちょっと訊ね人を捜しているんだ。長くて緑髪の……ちょっと地味目な女子生徒を見なかった?」

「おーいこら、ハニーをディスるんじゃねー」

 悪意もなく特徴を抑えての説明だったのに、巳縄ミナワが抗議した。じゃあ、どう説明すれば良いのか。


「もしかして先輩と同じ学年の生徒ですか。今のところは見てないですね」

「そっか。ありがとうロベルタ」

「というかお兄さんその精霊獣は? もしかして増やした?」

「違う違う。その契約主を今捜しているところ」

「ぷふー、首にかかってると縮れたストールみたい。斬新でおっかしいー」

 忌憚のないレイチェルの感想に巳縄ミナワはピクリと反応した。


「……おうおうお嬢ちゃん。言ってくれるじゃねぇか」

「んえ?」

 彼女が素っ頓狂な声を出してると、俺の視界に影が横ぎった。


「うりゃああああ! 俺っちの凄さ見せてやるぜェエエエエエ!」

「おわァあああああああああああ?! 何だこいつ……でぇっ!?」

 飛び掛かった巳縄ミナワはさっそくセクハラにかかった。

 自身の身体で二つの輪を作り無限の記号を模した。平均よりも大きなレイチェルの胸囲に絡み付く強調させる。


「うわっ」俺は思わず目を逸らす。

「おおう、良い発育してんじゃーん。どれどれー、ウェストはっと……」

「なっななななななな!」

 しばし茫然とした彼女は、徐々に顔を真っ赤に染め上げて行く。その間に巳縄ミナワは服越しでの採寸行為を続けた。


 そして、更なる地雷を踏んでいく。


「……おうふ、さっきの可愛い子ちゃんよかちょいと腰に肉付いてっかなー。俺っちの好みっちゃ好みだけど――」

「ふんぬぅぅっ!」

 レイチェルは白蛇を掴み取り、乱暴に廊下の床に叩きつけた。「ぐえっ」と巳縄ミナワは呻く。


「お、おお、おまおおおま……お前ええええええええ……よくも。……ひ、必死にダイエットしてる最中でぇ、よくもあたしが気にしてたことをぉおおおおおお!」

「へ? ……あ、あははは。めんごめんごー。そんな気にしなくても……」

 悪鬼羅刹の変貌を遂げた女生徒の雰囲気を察してか、白蛇は退き気味になる。


 有無を言わさず、レイチェルが呼び出したのはいたちの精霊獣。臨戦態勢をとるように、全身かからいぶし銀色に輝く刃物を突起させた。


「その身体で脱皮する苦労がないように切り刻んでやれ鎌居カマイッ」

「シェァア!」

「ギャーッ! おなくゥうううううう!」


 とまぁ、捜索中も騒ぎがあったり。

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