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外伝  総技研を強化

 総技研一同はサイトスと別れ、ケイルラウの元に向かう。先ほどの村人が案内してくれる。


「クロって誰なんだ」

「日本人と言っていたが」

「ああ、クロかい。日本の医者様だよ。最初の頃から居るね」

「そんな人が居るのですか」

「皆から頼りにされているし、もう村の人間みたいなものさ」

「そう言う人も居るのですね」

「そうだね。ジンイチとクロは良くしてくれるから、皆も認めているよ。あの二人がいなかったら、今みたいな関係でいれたかね」

「それは、凄い褒めようですね」

「実際、命を救われたからね、日本人達に。特にあの二人が印象に残るのさ」

「命を救われたとは?」

「お前さん達、寄生虫を知っているかい。住血吸虫と言うらしいが」

「知っています。重症になればまず助からない」

「この村にも何人か居たのさ。感染していた人間も半分以上いたらしい」

「まさか、助かったのですか」

「そうだよ。私も感染していたらしいよ。ほんとに助かった」

「ああ、ここなのか。最近、日本住血吸虫症での死亡者がかなり減っているのは」

「知っているのか、大門」

「俺は山梨の出だよ。最近里帰りすると皆の顔がなんか明るいんだ。聴いてみたら、死亡者が減っていると。今はまだ、寄生虫は撲滅出来なくても、治る病気になりつつあると」

「日本でも酷いみたいなことを言っていたね。毎日のように日本人が来て、治っていくよ」

「ありがとうございます」

「なに私にお礼を言うね。言うんだったら、あんたらの仲間だろうに」

「でもこの村が無かったら、こんな希望は持てませんでした」

「じゃあ、お互い様でいいんじゃないかね」

「はい」


「さあ、ここがケイルラウの家だよ」

「ありがとうございます」

「まあ、がんばんな」



「御免下さい」

「はい」

「ケイルラウさん?」

「いえ、違います。ケイルラウは女性ですよ。俺は、間九郎です」

「日本人?」

「そうですが?」

「それだったら、ケイルラウの所にクロと言う日本人がいるそうですが、ご存じ在りませんか」

「クロか、クロなら俺です」

「申し訳ありません。言い遅れました。挨拶もせず申し訳ない」

「はあ」

「我々は日本総合技術研究所の者です」

「はあ」

「あなたに伺いたく、こちらに参りました」

「なんでしょう」

「魔力についてです。あなたには魔力が有ると聞きました」

「確かに有ります、日本人も皆有るようですよ」

「「「「へ?」」」」

「そうですね。有りますが、少ないというか弱いので魔道具が発動出来ません」

「では何故ですか、あなたは普通の日本人よりも強い魔力をお持ちのようですが」

「ああ、それですか。俺は魔道具の発動が出来ます。強力な魔法陣や魔道具については、まだ魔石の補助が必要ですが」

「我々も出来るようになるのでしょうか」

「なりますよ。俺も最初は多分あなたたちと変わりませんでしたし」

「では、強くなったというのですか」

「強くなりました。だからあなたたちも強「「「教えてください」」」く・・」

「これはまだ機密事項なので、許可を取ってからお願いします」

「機密ですか」

「そうです。やり方は簡単ですが、それで押し寄せられてもたまりませんから」

「許可は出してくれますか」

「さあ?俺が出すのではないので、なんとも」

「では誰が出すのですか」

「派遣軍に聞いて下さい」

「派遣軍ですね。分かりました。ありがとうございます」


 一同は去って行った。


「何だったんだ?クロ」

「ケイルラウ、魔力を強くとか言っていたな」

「日本の魔道具関係の連中か」

「多分、日本総合技術研究所とか言っていたから」

「で、面倒くさくなったので、軍に押しつけたと」

「そんなとこ」



 総技研一同は、派遣軍司令部に向かうべく駅に戻った。

 カラン港行きが1日2本、朝と午後に出ている。今なら午後の便に間に合う。


「司令部に行くのは明日にしよう」

「なんだ、時間的には間に合うぞ」

「一度宿舎に戻りたい」

「忘れ物か?」

「軍の施設に一般人が行くと受付が面倒なんだ。だから軍服に着替えてから行く」

「じゃあ時間が無いな。それなら今日はゆっくりしよう」


 総技研20人の内、6人が軍人であった。



 翌日、軍服6人を交えた20人は派遣軍司令部に向かった。

 受付で怪訝な顔をされたが、さすが少佐様である。すぐに話が付いたようだ。

 なんと参謀長が会ってくれるという。


「いや、参謀長は予定に無いんだが」

「少佐か中佐辺りで話を付けて貰おうと思った」

「じゃあ何で参謀長だ?」

「機密度が高いのか?」

「でも皆知っているようだが」

「公然の秘密か。しばらくは内緒ということらしいな」


 会議室に案内される。参謀長は今来ますと。

 一人の紐付きが入ってきた。参謀長だろう。全員起立で挨拶をする。軍服は敬礼だ。


「諸君が総合技術研究所の面々か。私はシベリア大陸派遣軍参謀長唐沢大佐だ」

「我々が総合技術研究所一同です。本日はお忙しいところ、面会していただきありがとうございます」

「うむ、まあ掛けたまえ」


 全員着席する。


「それで、魔力の件だと聞いたが」

「はい、カラン村でクロという人物から魔力の強化は機密事項なので、軍の許可が必要と聞きました」

「何故強化したい?」

「我々は魔石や魔物素材の研究をしております。その研究に魔力が必要になりました。それで本日は、魔力強化の許可を頂きに参りました」

「魔力の強化か。仕事上必要ならば許可を出すのはやぶさかではないが、覚悟は有るのか」

「覚悟、ですか」

「そうだ、諸君には混沌獣を倒して貰う」

「混沌獣ですか。それならば銃で撃てば良いのでしょうか」

「駄目だな。銃では強化の効果が非常に薄い。自分の手でとどめを刺すなら良いらしいが、それでも酷く弱っている相手にとどめを刺しても効果は薄いようだ」

「詳しく伺ってもよろしいのでしょうか」

「私も忙しいのでな、時間は掛けられん。だが、この派遣軍の中で研究をしている者がいる。そいつに任せよう」

「従兵、連隊参謀の田嶋少佐を呼んできてくれ」


 従兵は田嶋少佐を呼びに行った。


「田嶋少佐参りました。参謀長、お呼びでしょうか」

「田嶋か。日本から来た、日本総合技術研究所と言う者達だ。魔力の強化について教えてくれ。許可は出す。魔力強化の実施についても許可を出すから、後のことは頼むぞ」

「了解しました」



「さて、派遣軍で参謀をしております田嶋少佐です。今回は魔力の強化についてということでよろしいですな」

「そうです」

「まあご同輩もいるようで若干のやりにくさはありますが、説明しましょう。魔力というのは皆持っているそうです」


 ざわつく室内。


「はい、日本人も少ないですが持っています。参謀長からはここら辺は?」

「聞きました。混沌獣を倒さねば強くならないとも」

「そこまで言ったのですか。じゃあ説明をしましょう。と言っても、ここで統計的に分かったことなのですが、カラン村で聞いたところ、概ね間違っていないそうです。概ねと言うのは、日本人とこちらの人間との差異がまだ判っていないからです」

「差異とは」

「獣人とかエルフとかドワーフとかいたでしょう。それらの人達と日本人の差です」

「解る気がします」

「その差が分かるまでは長い年月が掛かると思いますし、専門に研究する人も出るでしょう。私のように、軍務片手に出来ることでもありません。魔力は皆持っています。私も持っています」

「「では強化を」」

「よろしいでしょう。その前に同輩に聞きますが、士官学校は何期ですか」

「いや、実は技術職でして大学から軍に入りました。士官学校は入っていません」

「私は海軍ですが、同様です」

「そうですか。解りました」


 何かがっかりさせてしまったようだ。何故だろう?


「軍人は、魔力強化の場合は全て東鳥島で行います。残りの民間の方はこちらでのんびりとやりましょう」

「質問ですが、ほとんど軍事教練など受けていません。小銃の撃ち方を教わったくらいです」

「私も拳銃の撃ち方くらいしか」

「軍人は、東鳥島で行うという規則ですので」

「何か厳しそうですが」

「これは軍事教練を一通り受けているという前提です。まさか技術職の人間が来るとは思わなかったので」

「では、今からでも規則の変更を」


 眼鏡がキラッとした気がする。


「駄目ですね。とにかく軍人は東鳥島です。民間の方はこちらで弱い奴から始めます」


 その後二つに分けられた総技研の面々は、軍人は東鳥島へと、民間人はここで強化をすることになった。





二つに分かれた総技研。


陸軍は技術に強い者を選抜して研究所に配置して、民間の研究を監督させたり自らも研究をしていたようですが、この世界では技術職はほぼ専門職として扱います。大学から陸軍に入る経路もあります。

海軍と同じですね。


弱っている混沌獣にとどめを刺すだけでは、強化具合が弱いという仕様。

接待レベルアップは出来ません。


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