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オーレリア島基地襲撃 求む、静かな海面

 水雷戦隊の突撃は成功した。阻止に入る敵駆逐艦部隊を一水戦と二水戦で一蹴した。敵主隊へ突撃したのは、三水戦と十水戦、後方に十一水戦と十二水戦が続く。

 しかし、一水戦、二水戦が発射した誘導魚雷が予想した程命中しなかった。これは誘導魚雷の速力が遅く、敵に逃げられたからだった。こちらが発射した気配を悟り、逃げた艦もいた。おそらく燃料切れを狙ったのであろう。狙いを付けても振り切られてしまった艦も有る。

 勿論、立ち向かってきた艦には命中した。

 だが、戦艦に向けて発射した三水戦と十水戦、十一水戦と十二水戦の誘導魚雷も1本しか命中しなかった。

 水雷戦隊はパニックに陥った。必殺のはずが、当たらないのだ。艦隊は誘導魚雷で勝利するつもりだったのだ。艦隊全体でも問題となったのは、戦闘終了後だった。無線が通じない現時点では、細かい報告は出来ない。

 魚雷搭載各艦には予備魚雷は無い。かつては有ったが、命中率の驚異的向上で高価すぎる兵器の数を減らされた。予備魚雷の重量が浮いた分で対空兵器を搭載したと言う事情もある。



「何故だ。何故命中しない」


 夏潮艦長中林少佐がぼやく。


「分かりませんが、ひょっとすると砲戦のせいかも知れません」


 夏潮水雷長篠田大尉だ。一番衝撃を受けているだろう。


「砲戦だと?」

「あの水柱。どれだけ海中を掻き回しているか。海中騒音が酷すぎて魚雷の誘導機能が正常に発揮出来ないのかも知れません」

「事実だとすれば拙いな。無線で伝えたいが」

「無理です」

「良し。本艦は離脱して後方に向かう。司令官に伝えるぞ」

「良いのですか」

「可能性が有る。これは伝えなければな」

 

 十一水戦の夏潮は離脱し、後方から突撃してくる五水戦と七水戦へと向かった。




「雷撃戦隊に水柱複数!」


 見張り員の報告が届く。


「魚雷か。ただでさえ敵より少ないのに減らされてはたまらん」

「敵はまだ後ろから来ますな」

「どれだけ用意したのだ」

「沢山ですな」

「もう少し気のきいた答えを聞きたいよ」

「ワーレン艦隊司令長官。私は冗談が下手だそうです」

「すまんかった」

「よろしいでしょう。しかし、巡洋艦戦隊は敵巡洋艦戦隊に圧倒されています。戦艦を守る盾はありません」

「対空砲はやられているしな」

「本艦も致命的な損傷が無いのが奇跡と思えますから」


「新たな敵雷撃戦隊。距離8000で進路変更。遠ざかります」

「発射したか。見張り員。見えんと思うが頑張ってくれ」

「頑張ります」


「そろそろじゃないか」

「はぁ。魚雷ですか」

「他に何がある」

「20隻か。150本近い。何本か当たっても良い頃だ」

「静かですね」

「ケイニヒ・ミュラーに水柱!」

「当たったか」

「他には報告が有りませんね」

「1本だけか」

「敵はヘボだったようです」

「あるいは敵兵器がボロだったか」

「喜ばしいことです」



 夏潮は間に合わなかった。五水戦と七水戦が戦艦主砲弾飛び交う中、4000と言う至近距離まで接近して発射した誘導魚雷は、命中わずか3本。3本命中と引き換えに5隻が戦艦主砲の餌食になってしまった。

 もう艦隊に魚雷は残っていない。巡洋艦戦隊も、敵巡洋艦を沈めるか行動不能にしている。

 後は戦艦の撃ち合いだけだ。駆逐艦に戦艦を沈める手は無い。

 各水雷戦隊が、戦場に散っていく。海戦の趨勢すうせいは付いた。損傷艦の救援活動と溺者救助を始めるのだろう。



「当たらんな」

「主砲ですか」

「魚雷だ。全部で推定何本だ」

「敵駆逐艦に8本。敵戦艦に4本ですな」

「少なすぎないか。予想では50本以上当たるはずだ」

「新兵器ですから、問題が起きたのでしょう」


 魚雷のことを問われた水雷参謀が答えた。後で問題にしてやると思いながら。水雷科員全員の思いだった。

 

 戦艦同士の撃ち合いは、日本完勝で終わった。ただ全艦沈めるには至っていない。別の目標が有り、殲滅まですると砲弾が不足しそうだった。別目標はオーレリア港と周辺施設砲撃である。

 敵戦艦がのろのろとガミチスに向かうのを無視して、日本艦隊はオーレリア基地襲撃に向かった。


 日本艦隊は、オーレリア軍港とルミナス軍港の破壊に成功。敵艦隊の撃破と合わせ、補給を断つことでオーレリア島を孤立させることに成功した。

 後は、ザブングル基地から陸上戦力が北上し勝つだけだ。



 

日本側損害報告 暫定

沈没

戦艦    武蔵


空母    蛟竜 黒鶴 皓鶴


巡洋艦   酒匂 大淀 


駆逐艦   香風 風光 清風 谷霧 海霧 里風 光風 

      夕雲 浦波   



大破 

戦艦    大和 淡路 


空母    海鳳 赤龍  


巡洋艦   三隈 鈴谷 浅間


駆逐艦   涼波 望月 新月



中破     

戦艦    磐城 紀伊 美濃


空母    仙鳳 翔鶴 黒龍 真鶴


巡洋艦   恵那 雲取 石狩 伊吹 矢作 


駆逐艦   長波 巻波 早霜 神風 朝風 初風 雪風

      時津風 浦風 秋月 大月 葉月



小破以下の損害艦多数



航空戦ではお互いに空母を集中攻撃。空母と護衛艦の損害が多かった。

砲戦では、第一戦隊・第二戦隊・第三戦隊に砲撃が集中。武蔵が沈み、大和と淡路が大破。なんとしても持ち帰ると頑張っているが、予断を許さない。

巡洋艦と駆逐艦は戦艦に至近まで突撃した五水戦と七水戦の損害が多い。



次回更新 5月25日 05:00 予定

オーレリア島を巡る海戦は決着が付き、ガミチス帝国海軍は壊滅したと言っていい損害を受けました。

戦力で圧倒した三ヶ国連合の勝利です。

ガミチスはどうするのか。


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