オーレリア島沖静かなり

　日本艦隊が再び迫ってきているのは、哨戒潜水艦からの通報でわかった。オーレリア飛行場への攻撃も激しさを増している。針路をオーレリア北基地にとっているが、どうだろうか。

「ベルリヒト参謀長。君はどう思う」

「日本艦隊の針路ですか？オスマイヤー司令長官」

　新任の艦隊司令長官に座を譲り海軍司令長官になってしまったオスマイヤー司令長官と、長い付き合いのベルリヒト参謀長が話をしている。海軍実働部隊のトップ二人（ふたり）だ。

「もちろんだよ」

「一撃に集中して、上陸は無さそうですね。輸送船団は発見されていません」

「基地だけやって、陸はザブングルからか」

「道はあります」

「遠いぞ」

「そうですね。進んでいる間にずいぶん消耗しそうです」

「陸軍の奴等はずいぶん重装備を放棄したそうだな」

「奴等もそうなると良いのですが」

「奴等なら、敵前上陸も可能だろう。何故やらないのかな」

「考えられることとして、奴等も無制限の兵力を持っていないと言うことでしょう」

「それは、嬉しいね」

「それでも、こちらよりも多そうですが」

「人口が倍近いからな。出せる物も多い。しかし、限界は有る」

「今がそうなのでしょう」

「となると目標は…」

　港を見た。ガランとしている。艦隊か。指揮を執りたかったのだが。まあ、ワーレンの奴なら良いだろう。粘り強く、機を見るに敏だ。艦隊指揮なら俺よりも能力は高いだろう。奴は戦術家として高いレベルに有る。同期だから良く判る。俺はどちらかと言えば、戦術家ではない。

「ワーレン艦隊司令長官は、分かっているのだろうな」

「出港の時にぼやいていましたよ「狙われているな」と」

「それなら良い。彼らの努力に期待しよう。当然勝つことをだ」

「勿論です」

　話題の人、ワーレン艦隊司令長官は旗艦アガトリティスの艦橋で大海原と幾多の艦影を見ながら考えた。

　全く、これだけの大艦隊を率いるのは、平時なら気分が良いのにな。これから戦争だ。まあ勝ってやる。向こうもジェット艦上機を出してきたが、こちらにも有る。空軍のＯＳ２６２よりも高性能だ。対抗は出来る。

　奴等が艦隊を二分してきた時に備えた編成だが。あのクソッタレなヴィルヘルム５世のせいで間に合わなかった１６隻がいる。強力すぎる。これで勝てなかったら、相手がよほどとんでもない存在だと言うことだ。

　第三空母戦隊・第四空母戦隊の空母８隻はヨーロレイル級で、ガミチス期待の大型空母だった。第二戦隊と第四戦隊の８隻のアッカーマン級戦艦と船体設計や機関を基本同一として、量産効果を狙った。

　量産効果自体は成功だった。この１６隻が有れば、二回の海戦でボロ負けすることも無かっただろう。

　１６隻は二回の海戦が起きる前に就役していた。だが、問題が発生した。

　新型高温高圧罐に問題が発生し、蒸気噴出事故を起こした。バウハウス罐室員全滅事故だ。調査の結果、罐内部の高温高圧蒸気が発生するパイプと高温高圧蒸気をタービンまで送るパイプに使われていた新型合金が、設計の物と違い低品質な物に置き換わっていた。

　１６隻が建造されたのはヴィルヘルム５世が魔王化した頃で、魔王化で様々な悪影響をもたらしていた。

　悪影響を調べた各部の点検作業から、漏れたようである。つくづく祟（たた）ってくれる。

　１６隻はただちに運用停止。機関の点検に入った。ちょうど二回の海戦が行われた時期だ。

　アッカーマンは設計通りの材質が使われていたが、他１５隻が全部低品質不良品だった。１５隻の機関換装が行われた。こうなると主機タービンも怪しいとされたのだった。

　その機関換装と最新の装備もついでに搭載され、訓練も十分に行われ戦列に加わったのが先日のことである。

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アッカーマン級戦艦　　　　　　　　　　　　機関改修後

排水量　　４万７０００トン　　　　　　　　同

機関出力　１９万馬力　　　　　　　　　　　同

最大速力　５７ｋｍ／ｈ　　　　　　　　　　同

航続距離　１万６０００ｋｍ　　　　　　　　同

主砲　　　４０センチ３連装３基９門　　　　同

副砲　　　１４センチ連装６基１２門　　　　撤去

対空砲　　１１センチ連装対空砲８基１６門　１１センチ連装対空砲Ｍｏ５

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　１２基２４門

機関砲　　ＭＧ３７連装８基　　　　　　　　ＭＧ３７四連装８基

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ＭＧ３７連装８基　　　

　　　　　ＭＧ１８連装１２基　　　　　　　ＭＧ１８四連装８基

　　　　　ＭＧ１８単装８基　　　　　　　　ＭＧ１８単装２４基

ヨーロレイル級空母

排水量　　４万４０００トン　　　　　　　　４万７０００トン

機関出力　１９万馬力　　　　　　　　　　　同

最大速力　５９ｋｍ／ｈ　　　　　　　　　　５７ｋｍ／ｈ

航続距離　１万６０００ｋｍ　　　　　　　　同

対空砲　　１１センチ連装対空砲８基１６門　１１センチ連装対空砲Ｍｏ５

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　８基１６門

機関砲　　ＭＧ３７連装８基　　　　　　　　ＭＧ３７四連装１２基　　　

　　　　　ＭＧ１８連装８基　　　　　　　　ＭＧ１８四連装１２基

　　　　　ＭＧ１８単装８基　　　　　　　　ＭＧ１８単装３６基　　　　　

搭載機数　１１０機　プロペラ機　　　　　　６０機　ジェット

飛行甲板の７０％に装甲　　　　　　　　　　残り３０％を１０ミリ厚耐熱鋼板へ

ガミチス基幹艦隊　　旗艦アガトリティス

第一艦隊　　　　　　旗艦アガトリティス

第一戦隊　　　アガトリティス　ガトランティス

　　　　　　　ザイトリティス　サキラティス　

第二戦隊　　　アッカーマン　ハウスラー　ケイニヒ・ミュラー　レヴィ

第三戦隊　　　アームストロング　シューマッハー　ウルリッヒ

第一空母戦隊　ブリュンヒルド　ゲルヒルド　ヘルムヴィーグ　オリトロンド

　第一護衛隊　ＶＧ１　　ＶＧ２　　ＶＧ３　　ＶＧ４

第二空母戦隊　レギンレイヴ　シグルトリーヴァ　シグルーン　

　第二護衛隊　ＶＧ５　　ＶＧ６　　ＶＧ７　　ＶＧ８

第四空母戦隊　ヨロコノーム　ヨースケルビム　ヨストマルク

　第四護衛隊　ＶＧ１３　ＶＧ１４　ＶＧ１５　ＶＧ１６

第五空母戦隊　フライバーン　フライスケルス　フリップバーン　フジリステ

　第五護衛隊　ＶＧ１７　ＶＧ１８　ＶＧ１９　ＶＧ２０

第六空母戦隊　フロスケルム　フランシュゲール　フロリアンス　フイフィバルト

　第六護衛隊　ＶＧ２１　ＶＧ２２　ＶＧ２３　ＶＧ２４

第七戦隊　　　サラディン　カスケルム　ヨートルマッシュ　ボルネジ

第八戦隊　　　カイエスブルク　カルスケム　グラハトブルク　ハイリラタント

第三雷撃戦隊　旗艦ヒロイスティクス

　第三駆逐隊　ＧＡ３０　ＧＡ３２　ＧＡ５２　ＧＡ５５

　第四駆逐隊　ＧＡ３４　ＧＡ３５　ＧＡ５１　ＧＡ５３

第四雷撃戦隊　旗艦ドロイエブルク

　第六駆逐隊　ＧＡ３８　ＧＡ３９　ＧＡ４０　ＧＡ４１

　第七駆逐隊　ＧＡ４２　ＧＡ４３　ＧＡ４４　ＧＡ４５

第一駆逐戦隊　ＦＪ１　　ＦＪ２　　ＦＪ３　　ＦＪ４

第二駆逐戦隊　ＦＪ５　　ＦＪ６　　ＦＪ７　　ＦＪ８

　

ガミチス分遣艦隊　旗艦ハーリッツ

第四戦隊　　　　ハーリッツ　バウハウス　フォイクト　ノルテンブルク

第五戦隊　　　　ミーアラント　サウジレーム　ベルリッヒ５世

　　　　　　　　ケイニヒ・スターン　　　　　　　　　

第三空母戦隊　　ヨーロレイル　ヨルムンガンド　ヨリシーダ　

　第三護衛隊　　ＶＧ９　　ＶＧ１０　ＶＧ１１　ＶＧ１２

第十空母戦隊　　アドラス　アルスケム　アリアドネ　アケリウス

　第十護衛隊　　ＶＧ３０　ＶＧ３１　ＶＧ３２　ＶＧ３３

第十一空母戦隊　アドラスティーム　アンゼナイツ　アルナヘイム

　　　　　　　　アイギスラント

　第十一護衛隊　ＶＧ３４　ＶＧ３５　ＶＧ３６　ＶＧ３７

第六戦隊　　　　マイノグリフ　ホールソシエ　カーマゲイン　ルードルスケム

第七雷撃戦隊　　旗艦エーデライクス

　第十一駆逐隊　ＫＡ１　ＫＡ２　ＫＡ３　ＫＡ４

　第十二駆逐隊　ＫＡ５　ＫＡ６　ＫＡ７　ＫＡ８　

第九雷撃戦隊　　旗艦ファウフリッツ

　第二十二駆逐隊　ＧＡ５６　ＧＡ５７　ＧＡ５８　ＧＡ６０

　第二十三駆逐隊　ＧＡ６３　ＧＡ６４　ＧＡ６５　ＧＡ６６

第三駆逐戦隊　　ＦＪ９　ＦＪ１０　ＦＪ１１　ＦＪ１２

　第六戦隊と第八戦隊はコロセイム級で編制され、艦隊防空を担（にな）う。

　ＫＡ級はＧＡ級を大型化しランエールの広大な海洋に対応させた、主力量産駆逐艦。

排水量　　　　２８００トン

機関出力　　　７万５０００馬力

最大速力　　　６６ｋｍ／ｈ

航続距離　　　１万５０００ｋｍ

主砲　　　　　１１センチ連装対空砲Ｍｏ５　４基８門

機関砲　　　　ＭＧ３７四連装４基

　　　　　　　ＭＧ３７連装２基

　　　　　　　ＭＧ１８連装６基

　　　　　　　ＭＧ１８単装８基

水雷兵装　　　５３センチ魚雷発射管４連装２基

　　　　　　　対潜ロケット弾発射機１基

主砲の１１センチ連装対空砲Ｍｏ５は新型で、前モデルのＭｏ４に較べて弾頭重量を増やし威力を増した。初速や射程は変わらないが、かなり威力は上がっている。砲身命数が若干減っているが、