魔王vs勇者 決戦
ラプレオス公国首都圏まで魔王軍を追い込んだ勇者軍とギルガメス王国連邦派遣軍だったが、そこで停滞していた。
首都圏に住む一般住民をどうするのかで悩んでいたのだった。
7割方魔王の影響下に有るとされているが、残りの3割はおそらく影響を受けていない人たち。一気に攻め込んで犠牲を強いるのは、戦後政策の観点から憚られた。
結局小刻みに地域を開放、住民を逃がしつつ進軍するとされた。
「我は魔王二四将「ファイア・アロー」「アイス・ジャベリン」…‥グワワァ~
「名乗りくらい聞いてやれよ」
「なんであんな無駄な口上聞かなきゃ行けないの」
「そりゃそうだ」
勇者達は圧倒的な支援を受けつつ、今日も魔王軍幹部をチクチク攻撃して倒している。もう二四将の内18名は倒した。残りは6名と魔王だ。
首都圏も半分は開放した。
しかし、ここに来て進まない。二四将の残り六将は2名倒した。そこまでだった。強いのだ。単純に。魔王と残りの魔将が。魔王二四将のうち四将は魔将と呼ばれ、倒してきた二四将よりも一段上の強さを持っていた。
「呼ぶか…」
「誰を呼ぶんだ?上村中佐」
「ああ、独り言を聞かれてしまいましたな。呼ぶのは助っ人ですよ。シェーンカップ大佐」
「助っ人か。たしかに勇者達の実力では魔王をおろか魔将でもきついな」
「魔将でオーガ上位種同等ですからね。もう日本軍では対抗も出来ません」
「本土で新兵器の開発はしているらしいが、到底間に合わない。助っ人を呼んでくれるか」
「では、稟議書書きますか」
「頼む。承認はすぐ行う。原田大将にも根回しをしておく」
「お願いします」
上村中佐は助っ人を呼ぶために机に向かった。
「金級冒険者と銀級冒険者を5名集めました。8級も3人です」
「そうか。やれそうなのか」
「魔将ならやれるでしょうが、魔王は厳しいかと」
「勇者の実力不足か。いや。仕方ないな。勇者は準備しておく訳にもいかない」
「神託が無ければ見つかりませんから」
ギルガメス王国連邦派遣軍総指揮官リングレット侯爵とギルガメス王国連邦勇者部隊指揮官ジェフリー子爵が話し合っている。
「侯爵様。日本は強力な助っ人を呼ぶそうです」
「それは聞いている。到着まで総攻撃は待って欲しいと言われたよ。距離があるので日数は掛かるそうだが、信じられん速度だな」
「飛行機ですね」
「到着は4日後と聞いている。ラプレオス公国勇者軍にも焦らないようお願いしたいと要請された」
「部隊は締めておきましょう」
「そうだな。各部署に言っておく」
「ギルガメス王国連邦派遣軍は総攻撃を待って欲しいそうだ」
「待つ、ですか?」
「助っ人を呼んでいると言っていたな」
「魔王を倒せる程のですか?」
「オーガ上位種を一撃だそうだ」
「期待できますね」
「痛めつけたところを勇者で・だ」
「上手く行くといいのですが」
「うむ。それでだ、待とうと思う」
「戦力の上積みは歓迎ですね」
「勇者達も休養は必要だしな。我が勇者の様子はどうだ」
「後方に下げて休養させています。かなり疲労が溜まっているようでした」
「飛行機のおかげで、魔王軍の動向がすぐにわかるし詳しいのは助かる」
「確かに。あれが無ければ勇者を後方に下げるなど思いもしなかったでしょう」
首都総攻撃は、助っ人到着後に開始された。狭い地域であり、ちまちまとやっていても埒が明かない。ほとんどが魔王影響下の魔王軍らしいので、残り国民の損害もやむを得ないとして踏み切った。
「カミムラ。俺は何処にいれば良い」
「アビゲイルは切り札だからな。魔王まで温存しておく。しばらく待機してくれ。魔将は教頭と万能冒険者を主とした冒険者で攻める。そしてトドメは勇者だ」
「勇者ではやれないのか?」
「そこまでの実力は無いぞ。今までも支援を受けてようやく倒しているくらいだ」
「では茶でも飲んでいよう」
「頼むよ」
『ドラゴ、ドラゴ。スコップ。魔王が見えた。準備せよ』
「スコップ。ドラゴ、了解」
「アビゲイル、出番だ」
「無線機は便利だな」
「本当だ」
アビゲイルは上村中佐に従い誘導されていく。首都の建物でも比較的高い城の良く見える建物だ。教会の鐘楼とも言う。
「ここなら届くんだな」
「余裕だ」
「準備はいるのだろう」
「少しな。今から行う」
「頼む。自分は様子を聞いてみる」
「スコップ、スコップ。ドラゴ。キングは見えるか」
『ドラゴ。スコップ。後1枚だ』
「ドラゴ了解」
双眼鏡で見ると、激戦だった。何人も倒れている。みんなテラスに出てきたな。上手く魔王を誘導できたのか?
「アビゲイル。魔王出るぞ」
「わかった。任しておけ。あの距離なら見えるから狙いは外さん」
ああ!勇者が吹き飛ばされた。大丈夫なのか。大佐なんであんなとこにいるんだ。スコップでデカい奴に挑みかかるが、跳ね飛ばされたな。それに、あれは魔王なのか?
アビゲイルがキラキラしている。龍人になり光り輝いているのだ。初めて見たが凄い。
『ドラゴ、ドラゴ。あれは魔王では無い。繰り返す。魔王では無い』
「スコップ、ドラゴ了解」
あれは違うのか。魔法が炸裂している。勇者の魔法よりも強烈だ。あ、デカいのが倒れた。
来るのか。
『ドラゴ、ドラゴ。金ぴかの飾りを付けた黒くてデカい奴が魔王だ』
「スコップ、ドラゴ了解。出たら撃つ。想定通りに退避せよ」
『ドラゴ了解』
「聞いたな?金ぴかの飾りを付けた黒くてデカい奴が魔王だと。アビゲイル」
「わかった。金ぴかの飾りを付けた黒くてデカい奴が魔王だな」
「頼むぞ。隙間は出来るから」
「任せろ」
出た。魔王だ。
『ドラゴン・ロア』
アビゲイルが宣言して口が開いた。開いた口の前面に光の粒子が発生した。光の粒子が濃くなっているのか派手に明るい。アビゲイルの体自体も青白く発光している。
あ!魔王がこちらを見た。ん?背中を向けただと?走り出した。逃げるだと?
だが、遅かった。アビゲイルがひときわ眩しくなったと思ったら、一筋の光が魔王に向けて走った。
魔王に命中した。報告ではオーガ上位種ですら問題にしなかったらしいが、魔王は耐えた。だが、よろよろしている。今がチャンスだろう。
そう思ったか全員で、たたきのめしている。しぶといな。まだ死なないのか。
しばらく勇者全員でタコ殴りしていた。が、ようやく終わった。倒したのか?
勇者が離れたな。魔王付近から黒い煙が上がった。
勇者や他のみんなが抱き合ったり万歳している。倒せたのか。
次話
魔王戦後日談
次回投稿予定 1月15日05:00。




