国土奪還
大晦日です。
更新も出来よかったなと。
主攻線のスミラレウス奪還部隊は、ふたりの魔王二四将がスミラレウスに居たことでかなりの損害を受けた。日本軍も10人以上の戦死者が発生。
ふたりの二四将に、良いようにやられてしまった。8級や銀級の冒険者を数名を加えていたので、辛うじて勝てた。その8級と銀級の冒険者も、多くが酷い怪我を負った。幸い、ポーションや薬草と大怪我用魔法陣で回復できる範囲だったので、死亡していない。
大怪我用魔法陣はギルガメス王国連邦に数が少なく、日本とカラン村の協力態勢で量産が進んでいる物を数枚持ってきている。ギルガメス王国連邦では製作が出来ず、めったに出ないダンジョンからの入手に頼っていた。もっと欲しがったが、断った。
量産と言っても月に2枚くらいだ。材料の入手難易度が高く製作にも時間が掛かるため、その枚数で限界に近い。
レリクスは勇者のおかげで、たいした損害も出さずに魔王二四将を三人倒すことが出来た。
この勇者が居る居ないでの損害比は、後に問題となり勇者の奪い合いが戦線の間で発生する。上級冒険者の大量投入という手もあるが、今回戦った二四将はいずれも「所詮、奴は二四将でも・・・」と仲間内で言い合っていたくらいなので、いずれは冒険者が通用しなくなる強敵が出てくることは考えられた。
今回戦った二四将は、強さ的に小型上位種同等と考えられている。
今まで日本軍が戦った最強の渾沌獣はオーガ上位種だったが、ダンジョン深層にはそれを上回る存在も居ると聞く。
オーガ上位種は75ミリ戦車砲も通用しなかった。それ以上の相手となると、日本軍の手に余る。
シェーンカップ大佐達、日本軍派遣部隊は頭を抱えた。
ギルガメス王国連邦はようやくラプレ川北岸から魔王軍を押し出した。
国土奪還である。
「機長。4時方向地面、争っているようです」
「4時方向だと?」
爆撃手の宇野一飛曹から報告を受けた偵察機機長小松大尉は双眼鏡を向ける。確かに争っている。どんな勢力だろう。
どうするか。高度3000以下に下げることは禁止されている。これは、ラプレオス公国に対空兵器有りとの情報からだった。その対空兵器とは、飛行性渾沌獣対策の物で高度2000まで届くという情報だった。ギルガメス王国連邦でも飛行性渾沌獣は確認されておらず、正体はわからない。3000以下に下げないというのは、有効射高2000なら、威力が減衰するから3000なら大丈夫だろうという見込みからだった。
現在位置は基地から1500キロ程の、ラプレオス公国深く入ったところだ。ラプレ川から200キロくらい南だった。
無線電話は無理だが電信は届くな。
「中尾飛曹長。電信だ「地上にて戦いを視認。我低空にて確認せんとす」だ」
「復唱「地上にて戦いを視認。我低空にて確認せんとす」打電します」
「大島中尉。カメラ用意でき次第、高度1000で航過。復航も行う」
「はっ。高度1000で航過。復航も行います。ですが良いのですか。3000以下です」
「ラプレオス公国内での争いだ。重大事と見る。どんな勢力なのか確認したい」
「了解です」
機内では慌ただしく各種カメラが用意される。合計10台のカメラだ。写真機が8台と撮影機が2台だ。焦点距離調整のため、搭乗員よりも多いカメラに機長も手伝う。通常は偵察/爆撃手の脇にある1台だが、四式爆撃機偵察仕様では、12台も装備している。代わりに爆弾は積めない。
連山特別仕様でカメラ多数を積み良い結果が得られたので四式爆撃機偵察仕様を作り、こちらで実用試験を兼ねて飛んでいる。
「大島中尉。カメラの準備が出来た。高度を下げよ」
「了解です。高度下げます」
偵察結果は、日本とギルガメス王国連邦で共有された。
ラプレオス公国内で魔王勢力と、おそらく対抗勢力が争っていた。最新の天然色フィルムで撮影された写真と映像には赤く光る目が映り、対抗勢力は光っていなかった。
対抗勢力と接触を図ることとなった。そして対抗勢力後方に在る湖に使者を送り込む事となった。
使者を乗せているのは九七大艇だ。もう日本軍の前線に何式と名の付く飛行機は少ない。九七大艇は二三型の評判が良く、再生産されてしまった。
二式大艇よりも離着水の難易度が低く未知の水面に降りるには良いと思われたから、高性能が必要ない場合に都合が良い機体だった。
九七大艇が湖水に着水した。
遂にラプレオス公国内で魔王対抗勢力との接触が実現するのだった。
皆様良いお年を。
来年もよろしくお願いします。
2023年の更新は1月10日より開始します。(予定)




