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ディッツ帝国 反攻 航空撃滅戦 日本攻撃隊

 ディッツ帝国に派遣された日本航空部隊である第一統合航空軍は、陸海空三軍の集合体。言い換えれば寄せ集めだった。

 特に陸軍と海軍の一部戦闘機隊は実用試験代わりに派遣されており、癖の強い部隊が多かった。そのために部隊間、あるいは搭乗員の間で衝突も起こっていた。ウチの部隊が一番であると。


 日本海軍、日本陸軍とも名古屋以西の人口集中地では大規模な飛行場建設が無理であった転移前。今は土地が増えてどこでも建設可能なのだが、転移前の飛行場を拡張していたりしていた。その中で嚮導飛行隊として戦技研究などに励む明野陸軍飛行隊と新型機審査や戦技研究をしている横須賀海軍航空隊は、ライバルとして認め合っていた。他にも腕自慢の部隊は有るのだが、転移後仮想敵国さえいない状態に緊張感が緩み一時腕前は落ちた。再び練度と意識向上に務めたが、母艦搭乗員を除けばこの2箇所が頭一つ抜けていた。

 問題は、両方ともここ、ディッツ帝国空軍野戦飛行場エリア5に来ていることだった。



 日本軍ディッツ帝国派遣軍、第一統合航空軍司令長官加藤健夫中将の頭を悩ませる問題だった。男前を持って鳴る加藤中将も眉間にシワが寄ろうというものだ。

 更に転移前、腕前なら横空や一航戦に劣らないと自他共に認める台南空 現三五二空 も来ている。陸軍からは試作機運用試験などを行う四十七戦隊も誉装備の飛燕三型を伴い来ていた。

 それだけではなかった。空軍指揮官は野中五郎大佐だった。ここまで来て野点のだてと八幡大菩薩は勘弁して欲しかった。

 海軍指揮官は小園少将。

 問題児を集めたのか。軍首脳部を恨んでもいいと思った。


 それでも、腕のいいのは認めざるを得なかった。

 さすがに五十歳となった今、激しい空中機動を禁止されている加藤には空戦訓練をガンガンやっている連中はまぶしい。航空記章維持のための練習飛行の時、一式戦で零戦に乗る小園のケツを取る回数は多いのだが、部下が気を遣う。しかも疾風には乗せてくれない。


 今回敵第5飛行場を攻撃することになったが、先陣争いがまず発生。次に爆撃機直衛隊と制空隊をどちらがするかで争い、野中大佐に大喝されてと、疲れる連日の会議だった。

 加藤中将がクジを作って決めたのだが、陸軍が制空隊、海軍が直衛隊になった。


 疲れた。




 当日、エリア5には戦闘機各種128機に護衛される爆撃機各種54機と偵察機4機の合計186機のエンジン音が響き渡っていた。早く飛ばせろと。

 陸軍戦闘機隊は六十四戦隊が疾風24機。四十七戦隊が飛燕三型24機。明野の百十一戦隊が疾風12機と一式戦12機の72機。

 海軍戦闘機隊が三五二空で紫電36機。横空の一〇三空が烈風22機で58機。

 空軍機は第十六爆撃隊の一式陸攻50機。第二爆撃隊の試製連山4機で54機。

 偵察機は陸軍二十三飛行隊の百式司令部偵察機四型2機と四型改2機。

 一式陸攻以外は全部誉だった。しかも新型機か試作機と言うとんでもない編成だった。

 一式陸攻も最終型とも言える四十五型で、最高速度302ノット(560km/h)を出す木星発動機は短時間なら2500馬力まで出る。

 二十三試陸攻の開発に失敗した三菱と海軍は、今後レシプロ攻撃機は開発しない見込みで双発機による航空雷撃も行わないという。まさに最後の攻撃機で在った。あと何年現役なのか。

 試製連山は中島渾身の機体で、やはり最後のレシプロ爆撃機になる予定だ。当初海軍の攻撃機の予定だったが空軍の爆撃機として試作命令が出て、雷撃は無しになった。

 4機のうち2機は通常の誉装備機体だった。


 機体形式は空軍爆撃機でABとなった。海軍だったらGが付いたはずだ。


連山  AB2a     AB1は四式爆撃機に与えられた

全幅  33メートル

全長  24メートル

全高  7.5メートル 

発動機 

誉三十四型 離昇出力2200馬力

      一速公称出力 2100馬力/1800メートル

      二速公称出力 1880馬力/6000メートル


爆弾4トン搭載時 公試状態にて

最高速度 580km/h/5800メートル

航続距離 

戦闘行動半径 1500キロ

巡航     4300キロ


爆弾搭載量  4トン標準 最大6トン

           6トン時は燃料を減らすので航続距離は短くなる


武装   九九式一号二型連装動力銃塔を上部に1基

     九九式一号二型連装動力銃塔を下部に1基

     九九式一号二型単装動力銃塔を尾部に1基

     ホ103を機首に2基 非常用であるが左右側面に1基ずつ


乗員   8名


 もう2機の連山は排気タービン装備の本命だった。

 機体の大きさなどは変わらないが出力が違った。高度8000メートルまで2000馬力を維持し、公試状態で高度9000メートルで610km/hという速度を持っていた。

 爆弾搭載量も変わらないが、公試時の速度は排気タービン無しの機体を20km/hほど上回り、上昇力・加速力では段違いだった。

 偵察過荷なら高度1万2000メートルを550km/hで巡航出来た。


 問題は相変わらず与圧室の良い物が出来ず、搭乗員は酸素瓶と電熱服、発動機から温水を回すなどして暖を取った。温水は主翼表面の防氷装置の配管を機内に延長したものである。この技術は同じく高高度飛行をする百式司令部偵察機四型にも装備された。五型は途中から着いている。百式司令部偵察機の場合は、軽量化から温風を回している。 


    

 そんな新鋭機揃いの攻撃隊が取ったのは低空侵攻、低空攻撃、低空離脱だった。その高速を持ってして短時間に襲撃を完了、離脱を図るというものだった。

 幸い迎撃機はディッツ空軍の3次にわたる攻撃隊が引きつけてくれる。計画では高度1000メートル、時速500kmで50キロ手前まで接近。その後一番遅い一式陸攻が高度800で出せる530km/h以上まで降下増速して一気に投弾という作戦だった。最初は高度300メートルの予定だったが八十番陸用爆弾装備の機体があり、その高度では爆風が危険と言う事で高度は下げないこととなった。

 低空高速飛行での燃料消費は大きく戦闘機全機と一式陸攻は増槽装備となった。

 この速度での高速低空編隊飛行は危険が伴うが日本最高レベルの搭乗員達が可能にした。 



 最初に百式司令部偵察機が離陸した。烈風、紫電、疾風、飛燕が離陸。次いで一式陸攻、連山が離陸。

 列線待機中には異常なかったが、烈風1機、紫電3機、疾風2機、一式陸攻1機が、発動機不調で引き返した。


 連山の1機は電探装備の空中指揮機能があった。もちろん爆撃もする。空中指揮は空軍の野中大佐が執る。低空侵攻と言う作戦行動で普段以上に気合いが入り、ご機嫌であった。前日には主要人員を招いて野点を行った。

 電探装備の空中指揮機は乗員が8名から12名に増えている。増えた4人は指揮管制要員だ。

 他の連山と同じ行動を執るのであれば爆弾1トン半を減らす必要があった。

 

 編隊は一路ガミチス4番飛行場へと向かう。50キロ手前で45度右へ変針。5番飛行場を目指す。

 敵戦闘機が迎撃してきたがせいぜい10機単位で数回有っただけだ。数と性能と腕前で相手にしなかった。電探での空中指揮も見事で味方に損害は無かった。


 5番飛行場まで後20キロで一式戦12機が増槽を捨て前に出た。両翼下の対地噴進弾のおかげで速度が出ない。550km/h程度か。緩降下で更に速度を上げる。飛燕三型も護衛兼対地射撃をするために合同して進撃する。

 一番対地噴進弾を両翼に4発ずつ積んだ一式戦は高度200距離500で一斉に発射した。発射前に対空砲火で3機撃墜された。9機72発の一番対地噴進弾は敵対空陣地めがけて進み爆発した。それに続き、反転した発射母機の一式戦と飛燕三型が対地射撃を行う。

 飛燕三型は四十七戦隊が運用しているように審査中の先行量産試作機だった。誉を装備し、両翼に30ミリ機関砲と20ミリ機関砲を装備している。その破壊力で地上設備を銃撃しようというのだった。

 飛燕三型は誉が重いため重量バランスに苦労したが、空気抵抗自体はラジエターが無くなったことで酷い悪化は無い。最高速度で疾風には劣るが疾風よりも振り回しやすく、一部の搭乗員には好まれた。


 露払いは終わった。本命の突入だ。対空砲火は大幅に減っている。一式戦と飛燕がまだ対地攻撃をして爆撃隊を援護している。


 敵戦闘機の妨害にもめげず一式陸攻が飛行場を斜めに横切りながら投弾していく。二五番陸用爆弾と二五番通常の二本立てだ。八十番陸用と八十番通常を抱えた機体もいる。

 連山4機も投弾した。1機は二五番陸用と二五番通常の混載で10発ずつだ。1機は五十番陸用と五十番通常を5発ずつ。1機は八十番陸用と八十番通常を3発ずつ。

 そして野中の乗った空中指揮機だ。四十六センチ砲弾流用の試製百六十番を2発無理やり積んできた。高度1000メートルでも怖いかも知れない。陸用は零式弾を瞬発信管で使い、通常は大遅延信管を使い更に双方とも時限信管を予備に使い絶対爆発するよう仕組まれていた。さすがに高度800では怖いので1000で投弾する。

 野中は先任操縦士に滑走路軸線を飛ぶよう命令。爆撃手にはど真ん中に落とせと無理強いする。いくら高度1000でもちょっと針路と水平がズレれば、幅40メートルしか無い滑走路からはたやすく外れる。操縦士は勘弁して欲しかった。四発大型機でやる機動では無かった。

 それでも彼等の練度が仕事をした。零式弾はかすめたが、通常は見事命中した。


 全機、逃げ足は速かった。連山などは600km/hを超えたようである。一式陸攻でさえ320ノット出たようだ。

 対空砲火による被害は、一式戦4機、飛燕1機、一式陸攻3機だった。連山は被弾した機体があっただけだ。

 空戦による被害は疾風2機、紫電4機と烈風1機だった。海軍機が多いのは直衛機で自由度が少なかった為では無いかと受け取られた。

 帰り道に全速で飛ぶ陸攻と連山を守るため、上空から動力降下で加速してきた敵戦闘機にやられたのだった。

 

 戦果は百六十番が異様に目立った。地面に大穴が空いて滑走路はふたつに分かれていたと、偵察写真が物語った。

 敵5番飛行場は数日間使用不能と思われた。





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