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転移国家日本 明日への道 改一  作者: 銀河乞食分隊
ディッツ帝国防衛戦
178/245

南大陸攻防戦 ヘパストイ島沖海空戦 前

 ガミチス帝国空母部隊司令部は敵機との接触報告があった時点で対艦装備を命令した。同時に直衛機を上げるよう命令した。

 交戦した位置は把握している。レーダー圏外だが索敵機の位置から類推した。索敵機は落とされたようで新たな通信は無い。なにを考えて敵索敵機と交戦などしたのか。こちらの存在を秘匿するためだと宥められたが、ケルトマイヤ中将は怒りが収まらない。

 直援機が上がって所定位置に就いた頃、レーダーが単機の機影を探知。敵索敵機で在ることは間違いなく迎撃を命じた。

 だが、天山や瑞雲なら撃墜も出来ようが現れたのは彩雲だった。彩雲の運動性はかなり悪いが早期に敵を発見すれば速度差から悠々と逃げることが出来た。

 艦上戦闘機Ju98の最高速度は530キロで彩雲は100キロ近く優速だった。



「敵機の迎撃が成功しません。速度差がありすぎます」


 航空参謀のケルニッヒ中佐が報告してきた。


「不味いな。敵は無線を打ちまくっているのだろうな」

「盛んに電波を出しています」

「メッテルニヒ通信参謀、記録は取ってあるだろうな」

「間違いなく取っております」

「艦長、本艦搭載機の攻撃準備はどうなっているか」

「魚雷の調定がまだ終わりません。現在6本が機体に取り付けられたと報告がありました」

「なお、索敵機が帰投する時間ですので甲板は開けておかなければいけません」


 旗艦である空母アドラスティーム艦長、ハフトマイヤ中佐が答える。


「どう思う。いつ来てもおかしくないな」

「敵攻撃隊ですか」

「わかりきったことを」

「私でしたら現在準備できている機体だけで発艦させます。後は対艦装備を中止、爆弾と魚雷は格納します。燃料も抜き取ります。戦闘機のみ全機発艦用意して守りを固めるべきかと」

「艦長、ありがとう」

「いえ」


 ケルトマイヤ中将はしばらく思考した後、隊内無線で


「各空母に通達、対艦装備は索敵機帰投まで装備した機体で終了。戦闘機以外の未装備機体は燃料抜き取り後格納位置へ。対艦装備終了機のみで索敵攻撃を掛ける。方位は知らせる。では作業急げ」


 各空母は騒然とした。いきなり言われてもと思うが命令である。手順に従い作業を行う。


「ケルニッヒ航空参謀、済まんな。敵の位置が大凡しか分からん。パイロットには困難を押しつけた」

「大丈夫です。皆戦意は高く必ずや敵艦隊を殲滅してくれると考えます」

「そうならいいな。メッテルニヒ通信参謀、交戦した位置は分かるな。その方位を各艦に知らせてくれ」

「了解です」

「距離が分からんか。ケルニッヒ航空参謀、航続距離が一番短いのは雷撃機の1300キロで良かったな」

「はい、ですがアレは未搭載時の巡航距離です。魚雷搭載時は巡航でも1000キロ程度です。戦闘行動半径は300キロと見なければなりません」

「そうだったかな。では敵艦隊が300キロ以内にいることを祈ろう」

「アイゼンベルク航海参謀。艦隊は敵予想海面へ向かう。艦隊速力は45キロ。ハルダー参謀長、攻撃隊発艦後、艦隊陣形の維持を心がけるよう各艦に通達」

「司令官、それではクナップシュタイン・ウィルヘルム三世・ウォーランス二世の3隻が追随できません」

「ケターハイム砲術参謀か。だがあの3隻に合わせれば機動部隊が機動しなくなってしまう。どうせ本国から押しつけられた低速戦艦だ。これで機動部隊には低速戦艦を混ぜない方が良いことがわかろう」

「いいのですか」

「速度が命だよ。機動についてこれない艦はいらない。だが敵艦隊の規模が分からないか。前言を撤回する。航海参謀、速力を35キロへ。」




 発艦したのは、戦闘機Ju98、60機。爆撃機Ju86、68機。雷撃機CP/M、45機だった。パイロットは索敵攻撃に不安を抱えながらも進撃していく。

 CP/Mが一番の不安材料だった。Ju86よりも旧型で速度も遅く航続距離も短かかった。


 だがパイロット達は自信を深めた。敵艦隊と会合できる。出会ってしまえばこちらの物だと。

 日本海軍機動部隊の攻撃隊とすれ違ったのだ。お互いに数機の戦闘機がそぶりを見せるが任務は敵艦隊攻撃である。敵攻撃隊発見の報をするだけだった。


 ガミチス、日本。両機動部隊は敵編隊と遭遇の報に迎撃機の準備と合戦準備を行う。


 レーダーで攻撃機と見られる編隊を捉えたのはガミチス機動部隊から120キロの距離だった。減衰さえ無ければ160キロ以上の探知距離があるのに。

 時間が無いので空母のみ駆逐艦を伴い艦隊を離れ戦闘機を発艦させる。陣形が乱れた。これでは陣形を戻すのと接敵されるのが同じくらいでは無いか。


「アイゼンベルク航海参謀、艦隊速力を40キロに上げる。あの3隻にはボイラーに鞭を打てと伝えろ」


「了解しました」


 3隻の旧式戦艦の最高速力は余裕のある42キロでは無く、青息吐息の42キロだった。だがその対空火力は近代化改装で強化されている。今はその対空火力が欲しかった。


「ハルダー参謀長、敵の攻撃が激しくなってきたら各艦運動自由とする。回避に専念せよと通達を。タイミングはこちらで決める」

「了解」




 敵の全容が明らかになった。距離は160海里。案外近くにいた。索敵線の構成が良くなかったのか。もっと遠くで発見できるはずだった。戦訓だな。

 翔鶴相当の大型正規空母6隻を基幹とした機動部隊だった。

 他に戦艦6隻、巡洋艦8隻、駆逐艦17隻という大艦隊だった。こちらを上回る。


「如何しますか。まともに当たっては」

「まともに当たる気は無い。ここは艦載機で敵を削り、水雷戦隊に一撃入れて貰ってからやろうと思う」

「酸素魚雷による遠距離雷撃ですか」

「そこらは作戦参謀と水雷参謀に任せる。水雷戦隊と相談してくれ。これだけは決めておくぞ。2万で一斉に発射だ。その後、次発装填が出来る隙があれば暫時次発装填という流れで行きたい」

「では、時間になるまでは進路変更は出来ませんな」

「苦しい時間だが、耐えて欲しい」

「航空参謀、攻撃隊には良く言い含めてあるな?」

「足を削るように言い聞かせてあります。集中攻撃で撃沈よりも多くの艦に損傷を与えよと」

「よろしい」

「空母もですが良かったのですか」

「他の艦への攻撃が疎かになるからな。撃沈はしてしまえばしょうがないが、ノロノロと浮いていてくれるのが一番都合がいい」

「上手くいきますかな」

「攻撃隊を信じよう。それだけの腕はあるはずだ」


 彩雲からもたらされた続報では、敵艦隊は空母も含めて輪形陣で接近中だという。この時点で敵艦隊までは110海里。


「なんだ?空母は後方に置くのでは無いのか。それとも艦載機の航続距離に不安でもあるのか」

「纏まってくれていれば攻撃隊が分散せずに済みます」

「対空砲火も纏まってくるがな」

「向こうの速力は推定20から24ノット。こちらは25ノットでお互い接近中です。接敵まで遅くても3時間です」


 航海参謀が言う。

 そこへ敵編隊を電探が捕らえたと報告が有り、迎撃が下命された。


「艦載機の収容は可能なのだろうか」

「本艦は損傷機のみ受け入れます。飛行可能な機体は後方へ向かわせます。大丈夫です」

「では腹をくくろう。そろそろ敵編隊も見えるはずだ」


 電探射撃で軽巡の15.5センチ砲が遠距離阻止をしているが敵編隊をばらけさせる以上の効果は無いようだ。次いで射程の長い一式12.7センチ連装高角砲が撃ち始める。長十センチも撃ち始めた。八十九式連装高角砲改二も打ち出す。既に艦隊速力は28ノットになっている。長門級の全速だ。

 やがて敵編隊が双眼鏡無しでも見える距離になった。迎撃機でかなり機数は削られているはずだが大軍に見える。

 ずいぶん編隊が崩れているがそれでも一目散に向かってくる。いい度胸だ。一式33ミリ機銃が撃ち始めた。時々落ちていくが完全阻止には至らない。四連装機銃の集弾性は素晴らしい。もっと増備するよう帰ったら工廠にねじ込むとしよう。


「上空急降下!3機来ます」

「落とせ。雷撃は回避する。飛行甲板を守れ」


 艦長の檄が飛ぶ。この船が一番でかい上に空母だからな。狙ってくるだろう。

 

「敵、投下!」

「伏せ-!」


 敵の練度は高かった。本艦を挟むように着弾が有り残りの一発は


「前甲板に被弾。貫通は無し」

「損害報告」

「こちら司令長官だ。全艦回避自由。繰り返す。全艦回避自由」

「雷撃機左舷5機接近中」

「取り舵用~意」

「取り舵ヨ~イ」

「雷撃機1機撃墜」

「取り舵一杯」

「取り舵イッパ~イ」

「雷撃機1機撃墜」


 舵を予め準備して有ったので号令と共に4万トンを越える船体が傾きながら取り舵を取っていく。


「敵投雷しました」

「舵戻せ。当て舵だ」

「モド~セ~。アテーカ~ジ」

「魚雷3本接近中」


 魚雷は艦が相対するまでに接近している。


「左舷1本抜けます」

「右舷近い、正面。もう1本は右舷離れます」

「衝撃注意」


 衝撃と共に右舷艦種付近に水柱が上がる。被雷した?


「損害報告急げ。応急長は艦首へ急げ、被雷した」

「艦橋へ、こちら応急。艦首に大きな破孔無し。中小の破孔多数。海水流入量は排水ポンプの能力内と思われる。破孔の補修がしたい。速力は落とせるか」

「応急長、艦長だ。まだ敵の攻撃が終わっていない。もう少し待て」

「こちら応急。了解」

「トリムを取る。左舷後部バラスト30トン注水」

「右舷雷撃機4機、接近中」

「面舵用~意」

「面舵ヨ~イ」

「面舵一杯、急げ」

「面カージ、イッパ~イ、イソ~ゲー」

「2機撃墜」

「花月、本艦右舷。増速しています。本艦に並びます」

「敵投雷」

「止めさせろ。盾になどなるな」

「右舷撃ち方待て」


 本艦右舷後方で盛んに対空砲火を打ち上げている花月が敵雷撃機に立ち塞がる。

 花月右舷で水柱が上がった。花月は速度が一気に落ちる。


「花月に通信。艦の保全を第一にせよ」


 海龍は更に飛行甲板に一発喰らった。最大脅威の魚雷は敵雷撃機がもういなかった。

 敵の空襲は終わった。



「艦隊速力第一戦速」

「損害を纏めろ」


 かなりの被害だった。


「海龍が魚雷1本被雷。どうも艦首波により至近で爆発したようですがその後の回避時に破孔が拡大。現在応急中。速力は25ノット以上出すと破孔に圧力が掛かり拡大の危険があります。他に飛行甲板に2発被弾。一番カタパルト使用不能です。至近弾で機銃座にゆがみが出ましたが射撃には問題ありません。発着艦可能です。負傷者8名、いずれも軽傷です。戦死者は無し」

「花月は右舷機械室に命中。速力8ノット程度なら出せるそうです。戦死傷者は20名との報告」

「吾妻が1本被雷、戦闘可能「ただし全力発揮は隔壁に不安有り」だそうです」

「長門に2発爆弾命中。右舷高角砲3基使用不能、機銃座も数基使用不能。戦死傷者35名。航海に支障なし」

「那珂に爆弾1発命中。左舷2番機械室に被害。三番砲塔使用不能。火災発生、現在は鎮火しています。誘爆防止のため魚雷は全て投棄したと。戦死傷者35名。20ノットまでの通常航海に支障なし」

「春風、轟沈です。魚雷発射管に命中した模様。現在生存者捜索中」

「他に至近弾の報告が数隻有りますがいずれも戦闘航海に支障無しだそうです」

「結構やられたな。機数は60機程度だったと言うな。それでこの被害か」

「かなり電探誘導の迎撃で数を減らせたようです。戦爆連合で180機前後いたという報告も有ります」

「敵雷撃機が低速で捕捉が容易だったと言う報告が有ります。戦闘機の性能も零戦が優位だと」

「そうか。花月は那珂と共に後退。七駆は五水戦に戻す。本艦は清月と共に現在位置」

「「了解しました」」


 その間にも攻撃隊から通信が相次ぐ。派手にやっているようだ。




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