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転移国家日本 明日への道 改一  作者: 銀河乞食分隊
ディッツ帝国防衛戦
167/245

日本の介入 カストロプの乱 怒濤の進撃

誤字訂正ありがとうございます。

 カストロプ子爵領からのカリス自治領沿い侵入者は総人数不明だが、ほぼ無力化したと見られた。荒らされた村落は8個。死傷者多数の被害が出ている。王国連邦エンキド守備隊の手によって明らかにされた被害だ。

 日本が航空攻撃をしていなければ更に被害は広がっただろう。

 感謝された。攻撃後を調査に行った守備隊が多数の戦利品を獲得。中には高級な魔法の杖まであった。


 侵入者の生き残りはいても少数であるし、普通なら情報を持ち帰るために撤退しているはずだ。

 脅威は排除されたと判断された。


 日本からの増援は、第一陣がエンキドダンジョン周辺に展開を完了した。第二陣は2週間後の予定だ。

 工兵連隊は滑走路建設を行っており、こちらには師団付属の工兵部隊しか来ていない。それでも数台のバックホーやブルドーザー、ダンプカーなどの建設車両も持ち込まれている。

 長居する気は無いので大型テント型兵舎を持ち込んでいる。民間に提供される予定だった消臭と滅却の魔道具を供出して貰った。以前から問題視されていた緊急展開時の衛生確保への課題となった。平時は如何しても軍で貯め込むよりも民間優先となっていた。臭わない&お釣りが来ないを経験するとボットンには戻れない。







「子爵様、エンキドを荒らすよう命じました者が戻ってございます」

「早いのでは無いか」

「全滅だそうです」

「何?先に言え。その者に会うぞ」

「畏まりました。怪我をしております。兵舎の救護室に居ますれば、少しお待ち頂きたく」

「そのくらないなら良い」

「失礼します」


 屋敷の執務室には二人の男が呼び出されていた。包帯には血がにじんでいる。薬草や軟膏で治ると思うが、それには使わないのがケチ臭いカストロプ子爵だった。


「その方らにはエンキド領内を荒らして、守備隊を混乱させる仕事を割り当てたはずだが、何故こんなに早く帰ってきた?」

「畏れながら申し上げます。始めは順調でした。8個の村落を潰したところまでは良かったのです。その後、奇妙な空を飛ぶ道具に攻撃を受け部隊は三人を残し全滅。一人は途中で息を引き取りました」

「奇妙な空飛ぶ道具だと。そう言えばエンキド周辺で度々目撃されると話を聞くな」

「空から礫を目に見えぬ速さで大量に飛ばしてきました。全員その礫でやられました。魔道士のヨーマルサイ殿は空飛ぶ道具に一撃を当て落とすことこそかないませんでしたが、撃退は出来ました。その後もう一つの空飛ぶ道具に立ち向かったヨーマルサイ殿は惜しくも討ち取られましてございます」

「ヨーマルサイがやられたのか。杖は回収したのだろうな」

「いえ、逃げるに精一杯で無理でございました」

「お前らあの杖がいくらしたと思っている。ボラールの杖だぞ。おまけにドワーフ作だ。もういい。お前達は怪我が治るまでは休んでおれ」

「ありがとうございます」


 二人の男は出ていった。


「子爵様、あのように無様を晒した者を罰せずともよろしいので」

「何、この程度で罰していたら先が続かん。それに余裕を見せんとな。これからギルガメス王国連邦を本家と供に手に入れるにはもっと血が流れるだろう。奴らはその時最前線に送る」

「承知しました」

「しかし、あの杖は痛いな。高かったのに」

「当家にはあの杖は残り三本です。エンキドで手に入れるしか有りませんので今後入手は難しいかと」

「まあ良い。まだ切り札はある。叔父上が到着したら、そこからが本番だ」

「先程、あと二日ほどで到着されると先触れがありました」

「フム、あと二日か。エンキドで偉そうにしている奴らに目にもの見せてくれるわ」









「魔王様、あの宝玉を使わせてしまって良いのですか」


 テュエリー・ロマが魔王ナポレーン・ボナパルトに問いかける。


「構わん。どうせ二等品だ。大型種や上位種を制御出来る物では無い。今はどうなっているのかな」

「はい。今は中型種を誘導しています。大型種は餌を追って中型種に付いていきますが、奴らは大型種も誘導できていると思っているようです」

「バカだな」

「バカでございますね」

「奴らが自滅しようがどうでもいい。こちらに目を向けさせないためなのだから」

「それについて。日本が空飛ぶ道具を持ち出してきました」

「空飛ぶ道具だと?あれほど我に献上せよと申したのに。許せん奴らだ」

「ラプレオス公王も献上させようとしましたが、断られましたからね。どういたしましょうか」

「今はラプレオスを掌握することに専念する。さすがに幾つも手を持ってはいない。ラプレオスの首都レイソンに有るあの道具を手に入れれば空飛ぶ道具など脅威では無い」

「首都を落とすには、あと3週間ほど掛かります」

「それは仕方が無いな。皆殺しにしてしまえば早いのだが、それでは我が兵士になる者がいなくなってしまう。徐々に影響力を高めるように」

「畏まりました」









「叔父上、ご健勝の程お祝い申し上げます。そして、いよいよですな」

「おお、我が甥よ。息災であったか。お前の所の大規模混沌領域に我が国から連れてきた混沌獣を入れたぞ」

「では、あと数日ほどすれば」

「エンキドめがけて、大規模なスタンピードが発生するだろうよ」

「では、その後を付いていけば」

「エンキドには入る手前で制御して、エンキドの奴らを跪かせる。さすれば我が一族の栄光は末代まで続くだろう」

「叔父上」

「うむ、言わなくても良い。お前にはキドレン河から南、ラプレ河までをやろう」

「ありがとうございます」

「カリスは如何するのだ。あそこの次男はお前と仲がいいだろう」

「多少協力はさせましたが、それ程こちらに有利に運んだわけではありありません。ただ、所領安堵を認めてやれば靡く者も多いかと」

「そうよの。力で押さえつければ反発もあろう。では今味方に付けば所領安堵すると触れを出すとしようか」

「良きお考えかと」


 皮算用は続いた。





 その頃エンキドでは王国連邦首脳が頭を悩ませていた。

 日本から入った偵察結果が最悪過ぎたのだ。

 カストロプ子爵領の大規模混沌領域にカストロプ王国から来た混沌獣が入ったと。

 いずれ信じられない規模のスタンピードが起こることは確実視された。

 それと同時にカストロプ王から各地に味方になるよう魔道通信が有ったと言う。所領安堵をすると条件がもたらされている。

 カストロプ周辺の小領主や小国ではこちらに伺いを立てながらも、被害を抑えるために一応味方になると言う連絡が入る。


 移動が馬車と徒歩の国だ。召集を掛けても集まるのに時間が掛かる。それでも集まってくれた人達、集めて送ってくれた人達には頭が下がる。

 さあ、進撃だ。カストロプ子爵領から出てくるだろうカストロプ軍との決戦である。


 我々の戦いはこれからだ。




 秋津中将は困っている。

 カストロプ軍との戦いもそうだが、問題は混沌獣だ。

 増援の戦車連隊は全て混沌獣対策に回すとしても、歩兵師団を如何するか。

 第七師団の師団長と打ち合わせをすると、1個中隊規模の狙撃兵部隊をカストロプ軍の阻止に回そうと言うことで話がついた。

 狙撃兵部隊と言っても純粋な狙撃兵は少ない。技量上位者を回すという事になる。本職の狙撃兵は古式ゆかしい六七式歩兵銃を使っている。一式自動小銃よりも長距離狙撃には向いていると語るが。

 戦車連隊の将兵はトラックに分散して地形を見て回っている。

 大規模なスタンピードは、山東半島のダンジョンスタンピードで経験した。その資料や戦訓が回ってきている。


 あと数日で到着する第十一師団は、進行規模にもよるが全軍混沌獣対策に回ることになりそうだ。

 その十一師団が到着する前に、カストロプ子爵領境界線で対峙していた両軍が緊張に耐えきれずに動いた。どちらが先に戦端を切ったのかわからない。とにかく始まった。




「始まっただと?早いぞ。指揮官は何をしていた」

「それがその・・・・」

「如何した。言って見ろ」

「では失礼ながら申し上げます。王太子マクシミリアン様が敵の挑発に耐えきれず、直卒部隊を引き連れて突撃してしまいました」

「・あの馬鹿者が」

 オイゲン・カストロプ王は誤ったかと思った。やはり経験など積ませようと思わなければ良かったのか。


 戦線は境界線上で始まったが、カストロプ軍は何故かエンキド街道北側には展開しようとしなかった。全てエンキド街道南側でカリス自治領までの範囲で戦い始めた。

 その日の戦いは小競り合いに終始した。日が暮れようとしたので両軍とも引いた。

 日本軍は狙撃範囲まで敵軍が来なかったので戦果は無しだ。


 翌日・翌々日も同じだった。何かおかしい。そう思う者は多かった。

 四日目、カストロプ軍が何を思ったか全力出撃をしてきた。一気に戦場は血が吹きすさぶ荒々しい場所となった。


 そしてその日の午後、日本の九七大艇から緊急連絡が入る。


 カストロプ子爵領大規模混沌領域にて大規模スタンピード発生と。



 カストロプ子爵領大規模混沌領域から発生した大規模なスタンピードは、日本が経験した中では最悪の物だった。

 東鳥島の、言わばルーチンのように発生するスタンピードなど目では無かった。山東半島のダンジョンスタンピードをも超える規模であることは間違いない。

 問題は、あの時のオーガやモスサイのような上位種を超える存在がいないかどうかだ。アレさえいなければ今の戦力なら問題なく撃退できると考えられた。

 後始末の事は頭になかった。


 統合ギルドには、日本が正面から当たるので討ち漏らした奴らの相手を依頼する事となった。

 これには多くの冒険者が不満を漏らすが、日本からもたらされた偵察結果


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 混沌獣は二つの群れで西進中。ワナイ川を挟み南の群れが1500程度。北の群れが2500程度。

 前進集団合計は推定総数4000を超える。上位種を複数確認。更にほぼ同じ規模の後続有り。また後続にも上位種を確認

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 の前に静かになった。

 集まった冒険者は合計900人余り。その内5級以上が200人だ。更に7級以上の大型種や上位種に対抗出来そうな人間は30人程度しかいない。

 通常のスタンピードであれば統合ギルドの戦力と王国連邦の戦力で撃退できるだろう。ただ今回は数が多すぎた。おまけに王国連邦の戦力は対抗上、カストロプ軍に向き合っている。統合ギルドの戦力ではどうあっても阻止は不可能である。


 素直に王国連邦が打ち出した方針に従うことにする。




挿絵(By みてみん)


 

 エンキド街道周辺の戦線では、カストロプ軍がその数によって押してはいるが、日本軍による指揮官狙撃によって統率が取れていない。一進一退であった。

 狙撃兵の狙いは顔面だった。この世界の防具は物によっては7ミリ小銃弾を防ぐ。確実を期すには顔面を狙うしか無かった。7ミリ弾なら射入口は小さいし頭部を粉砕してしまうことも表面上は無かった。

 10ミリ小銃での狙撃は威力が大きい分色々とアレだった。耐えられずに交代する狙撃班も居た。


 人と人の争いは夜になる前に終わる。今日も終わった。

 混沌獣は夜を徹して進んでいるらしい。と言うのも、前日夕暮れ時に確認した場所から確実に動いている。偵察機も刺激するといけないので、夜間照明弾を落とすようなことはしない。九七大艇の後続性能からすれば午後偵察に上がり夜中上空を旋回、午前中に帰投も可能だったが。

 その事から、明日混沌獣が川を越えるかどうかが焦点となった。今までは川を越えたことは滅多に無く、有っても少数だったと言うことだが、今回の事例はどうなるかわからない。


 翌朝、混沌獣の群れは川を越えた。うん。奴ら泳げるのね。知らんかった。ただ、ケンネルは泳ぐのが下手で後続のより大型の混沌獣に踏まれて橋の代わりにされている。

 川の手前に混沌領域が出来ていた。山東半島のダンジョンスタンピードの時と同じだ。

 日本軍は、小さい奴よりケンネルの方が相手をするに楽なので嫌なことだと思った。

 こうなると、戦場が汚くなるとか素材が取れないとかの前に阻止が優先されるようになる。

 航空攻撃を沖にいる空母に要請。空母から航空隊が飛んできた。戦闘機が混沌獣を撃ちまくり、艦攻・艦爆が群れを逸らさないように爆撃をする。群れが人の戦場に向かわないようにするためだが、何かおかしかった。ひたすらエンキドダンジョンを目指している。

 機銃弾は特製の対混沌獣弾を使っている。20ミリも13ミリも炸裂弾は抜かれた弾帯を使用する。


 見えてきた混沌獣の群れに距離2500で自走機関砲車から33ミリ機関砲弾が撃ち込まれる。次いで1500で25ミリが、最後にトラックの荷台から、1000で13ミリ重機関銃が撃ち始めた。

 凄い勢いで混沌獣が減っていく。

 群れの後方にいる大型種は戦車が狙い撃ちをしている。37ミリ。57ミリ。75ミリ。各戦車砲が対混沌獣用無垢弾を惜しみなく撃ちまくる。ケンネル上位種もいたが75ミリが命中したのかバラバラに吹き飛んだ。

 小さい奴が阻止用の堀を越えてきた。ここからが小銃の射程内だ。四式自動小銃も一式自動小銃も撃ちまくる。

 対混沌獣戦線前面に歩兵1個師団が展開している。後方へ抜ける混沌獣はいないと思われた。

 しかし抜けてくる奴はいる。主にゲズミ・ウザミ・コーチン・ハイシシの小型種だ。ケンネル以上は阻止されている。

 日本兵を無視してエンキドダンジョンへと一直線に向かっている。

 おかしいがそんな事を考えている暇は無かった。抜けた奴らの相手は冒険者の仕事だ。冒険者の後詰めに日本軍秋津口ダンジョン攻略隊が控えている。

 第1波でエンキドダンジョンに辿り着いた混沌獣はいなかった。上位種も戦車砲の乱打で潰された。素材のことなど考えない。

 第2波も辿り着けない。

 ただ第3波が来ている。数を減らすのに有効だった自走機関砲車や重機関銃が、長時間の連射で銃身交換や故障などで後退し穴が開き始めている。

 その後方に第4波・第5波が来ているという偵察機からの報告があった。

 第3波は撃退できそうだが、第4波・第5波が危なそうだ。






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