日本介入ス
日本は新政権で有る蒼空党の主導で、ギルガメス王国連邦とディッツ帝国に対する救援を行うことになった。
ディッツ帝国向けには一部兵器の譲渡とライセンスの許可、武器弾薬の売却、資源他の売却であり、当面軍の派遣を教官以外は行わないと両国間で合意が得られた。
ギルガメス王国連邦向けにはもっと突っ込んだ内容だった。
なにしろ 助けて だ。
既に一部で派遣軍の増強は行われている。ただこの内容では派遣軍の自衛力の強化程度にしかならない。それでもかなり感謝されたようだ。
政府と軍の間で協議が行われ、ディッツ帝国は持久出来るだろうから、先ずはギルガメス王国連邦を主体にすると決められた。
今のところ出来ることは
1.東鳥島での混沌獣素材や薬草の採取
2.継続的に大型混沌獣や上位種が現れるのはこの島だけで有り、医療用魔法陣製作には欠かせない
3.東鳥島で新たに発見されたダンジョンの探索
4.東鳥島南方の海洋混沌領域でのボラール捕漁
取り過ぎるとイカが出てくるので要注意
5.東鳥島北東で発見された海洋混沌領域でのシロッキ・ボラールの捕漁
取り過ぎるとイカが出てくる可能性有り
6.ギルガメス王国連邦沖巨大海洋性混沌領域でシロッキ・ボラールの捕漁
取り過ぎるとジョ・ウズが出る可能性があるので注意
現在大型のカニと目される混沌獣を確認、要注意
7.ギルガメス王国連邦内の日本利権である秋津口ダンジョンから
ダンジョン産品を更に確保すること
アイテムを取り過ぎてダンジョンが疲弊するのは1フロアというか
1区画ごとと判ったので、区画ごとに部隊を投入。
更に奥まで探索の手を広めるとした。
8.シベリア大陸で新たに数カ所の中小混沌領域が発見されており、
東鳥島の混沌領域と合わせて兵の強化を促進する。
特に秋津口ダンジョンからのダンジョン産品は拡張袋と保存袋に期待が掛かる。兵站の圧倒的な軽量化が可能なのだから。
シロッキとボラールの捕漁は、肉の供給と武具への応用からギルガメス王国連邦向けに多くなるだろう。
山東半島に来ているドワーフの協力の下、ボラール製の武具を量産。ギルガメス王国連邦へ無償貸与する。魔王騒動終了後、回収する予定であるため全て製造番号と日本からの貸し出し品である事を書き入れる。
これは魔王騒動終了後、高度な武具が市中に出回り、社会不安の種にならないようにするためだった。
ギルガメス王国連邦には、救援として歩兵4個師団、戦車1個師団、飛行1個師団、工兵2個連隊、補給2個連隊を派遣するとした。他に民間から協力会社として土木会社と港湾建設会社を伴っている。
陸軍と空軍のみである。海軍はガンディス帝国とラプレオス公国の海上戦力が無いに等しいので若干の強化だけだった。
強化歩兵は各師団一個連隊ずつが配置されている。新たに編成された魔法部隊も少数ながら配置された。冒険者で言えば三級から四級程度だが、魔法を使うことが出来る将兵が育ってきている。虎の子だった。
各師団は機械化が進んでおり自走化が可能だった。工兵は戦闘工兵と護衛部隊付きの普通工兵である。
自走化が可能と言っているが七割方は軽輸送車だ。従って展開速度は軽輸送車の速度程度。それでも歩行での行軍に比べれば遙かに速いし兵の疲労も少ない。
補給部隊は、従来の輜重部隊の任務拡大に伴い名称の変更があった。
飛行師団は四式爆撃機と百式司令部偵察機が中心の偵察爆撃部隊として、今回限りで編成された部隊。他に、各地で保管機だった一式陸爆を対地攻撃機としてかき集めてきている。戦闘機は必要性が薄いとして少数しか配備されていない。
極秘計画として転移前に海軍と陸軍が計画していた空挺部隊による作戦を実行するとした。敵首都強襲で有る。
目標は魔王。
魔王がかなり強いという過去の記録から、日本人部隊の能力では討伐不可能であり、冒険者達の中から上位の人間を募り実行すると計画された。
出現した魔王の実力が分からない現状では無謀の一言であり、当面は情報収集に当たるとしている。
歩兵師団に配置された強化歩兵3個連隊は、山東半島を含むシベリア大陸と東鳥島での配置から絞り出した精鋭である。残る強化歩兵は6個連隊で各地の防衛や治安維持を考えるとこれ以上の抽出は難しかった。
こうして、ランエール初の海外派兵が行われたのは26年初頭だった。
この時点では
ガンディス帝国の半分以上が魔王支配下に。
ラプレオス公国も同様に。
ギルガメス王国連邦では、複数の領地貴族と加盟王国が反旗を翻していた。
日本派遣軍は第一陣として、歩兵1個師団、戦車1個連隊、工兵2個連隊、補給1個連隊他がセーラム港とキドレン港、それに飛行場適地付近の海岸に上陸。
歩兵は普通に港から上陸しエンキドを目指す。これは示威行動でも有った。
戦車と補給はキドレン河を大発艇で遡り、秋津口ダンジョン付近に展開する。日本の派遣が決定されてから現地の人を雇って駐屯地を整備している。
工兵二個連隊と土木会社に港湾建設会社は、一部部隊を歩兵師団と戦車連隊に割り当てたほかは、飛行場適地付近以に上陸。飛行場建設と港湾掘削を始める。
民間会社は揚陸艦から上陸の際、海水に重機が浸かるので後の整備に涙目だ。少し行った所に集積地を設けてあり、ここで小川からポンプで水を汲み上げ重機に掛けて潮気を少しでも落とす。
ここも予め現地の人を雇いおおざっぱな整地をしておいた。
飛行場の大きさは5000メートル四方を確保している。必要な施設の他、横風用滑走路の建設をしても充分足りるはずだ。最初は小さい飛行場だが将来余地は充分取ってある。
用地は王国連邦直轄地の中から、ガンディス帝国とラプレオス公国にほぼ等しい距離の所で補給がしやすいように海岸に近いところが選ばれた。
ギルガメス王国連邦駐留の部隊にわずかに含まれる工兵隊の手によって、現地調査が行われている。何カ所かの候補の内、海岸から5キロから10キロの地点を選び出した内の一ヶ所がここだ。
海岸から6キロ、標高13メートル地点で至近に気流を乱すような山や渓谷は無い。予定地内に小川が何本かあるのは避けられないことだ。
ここも現地の人の手によって、工兵隊が到着するまでの期間、伐採が行われた。
予定では現地到着後、1ヶ月で小型機が発着出来るようにする。その後1ヶ月で四式爆撃機が展開できるようにするという無茶な行程だ。行程には軽便鉄道の敷設も入っている。鉄道会社先発隊と工兵隊の手によって敷設される予定だ。
小型機は一式陸爆と一式戦で燃料を少し積んだ状態で空母から発艦するという。
それから一週間後、第二陣が到着した。歩兵2個師団、戦車1個連隊、補給1個連隊他だ。第一陣と同じように展開していく。
またその便で鉄道会社がやって来た。これは飛行場と港を結ぶ鉄道で標準軌で敷設する。
将来的にギルガメス王国連邦の表玄関飛行場とする予定なので十分な耐用年数を確保すべく本格的な鉄道建設を行う。ここから各地に向けて鉄道を延ばす構想もあった。
この大軍に不安視する声もあったが、王国連邦によって沈静化される。
飛行場がまだ出来上がる前に戦線は開かれた。
カストロプの乱である。
次から4話、東の大陸へ移ります。その後はディッツに戻ってきます。




