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転移国家日本 明日への道 改一  作者: 銀河乞食分隊
ディッツ帝国防衛戦
162/245

バラン島基地

 ガミチス帝国東部戦線司令長官ドメル中将は、バラン島では前線から遠すぎて指揮が執れないとベルフィスヘルムに東大陸戦線司令部を移動。

 バラン島は病気から復帰した腹心の部下バイエルライン少将に任せ、自分は前線の指揮を執るとした。



「よろしいのですか。ドメル司令・あ!閣下」

「何がだ、バイエルライン。それに司令でいい。閣下など呼ばれなれん。何かこそばゆいわ」

「中将たる司令長官ですから、慣行に従って閣下とお呼びしますが」

「そんな慣行は私には適用しないでくれ」

「わかりました」

「それで何が言いたい?」

「私が少将ですが、良いので?」

「お前にはバラン島の指揮を執って貰わねばならん。野戦任官だが総統閣下の裁可も戴いている。問題ない」

「それはそうですが」

「くどいぞ。男ならもっとシャキッとしろ。私の代わりにバラン島の指揮を執れと言っているのだ。出来ないのか」

「いえ。しっかりと勤め上げます」

「問題ないではないか」

「はあ、わかりました。では、ある程度自由にやっても良いのですね」

「東部戦線司令部とバラン島司令部の権限内ならばな」

「え?バラン島司令部だけではないのですか」

「私がベルフィスヘルムにいる間にここで東部戦線司令部を仕切れるのはお前しかいない。期待する」

「お任せ下さい。では、人事で少し聞いて貰いたいことがあります」

「誰が欲しい?」

「補給部隊のアイゼナッハ中佐と工兵隊のヘス少佐です」

「あの二人か、いいところに目を付ける。いいだろう。司令長官権限で移動させる」

「ありがとうございます」


 

 バイエルライン少将はベルフィスヘルムの東大陸戦線司令部へと向かうドメル東部戦線司令長官と別れ、自身のオフィスであるバラン島基地司令室へと向かった。

 司令室の執務机で執務をと思ったが、やはりコーヒーをのんびり飲んでからにしようと思う。

 従兵を呼んでコーヒーを入れさせる。彼の煎れるコーヒーはとても旨い。ドメル司令がコーヒーよりもお茶党だったので連れて行かれずに済んだ。コーヒー党だったら、ドメル司令の*お前の部下は俺の部下法則*が発動しただろう。


*お前の部下は俺の部下法則*

 お前の部下は俺の部下。だから、こちらへよこせの成功率が異常に高い。  



 コーヒーを落ち着かない執務机では無く来客用のソファに座って飲む。



 アイゼナッハ中佐は如何して士官学校を卒業、いやその前に受験できたのが奇跡なほど無口だった。面接はどうやって突破したのだろうか。帝国軍の七不思議に入ると噂されるほどだ。無口すぎて、上司にゴマもすらないし同僚との飲み会にも誘われないと聞く。仕事は出来るが世渡り下手というのが概ねの人物像だ。だが着実な仕事ぶりと部隊の統率力は、一部の人間から常に高い評価を受けている。

 ドメル司令も彼を高く評価しているひとりだった。彼がこちらに赴任する際、取り合いが一部で生じたと噂があった。おそらくドメル司令のお前の部下は俺の部下法則が発動したと思われる。何故か人材の取り合いには強いのだ、あの人は。

 彼がいればこの島の補給も、ここから東大陸戦線への補給も滞りないだろう。実に頼もしい。補給は常にドメル司令では無く、俺の頭を悩ませる問題だった。ドメル司令が時々、うん、時々だな。7割方は時々とは言わないと思うが。あの人によると、時々やらかす後方の確認不足で補給不足のまま突っ走ることがあり、俺の胃は疲れていた。そういう時のコーヒーはいけないらしいのだが、ますます増えるコーヒー摂取量。遂に俺の体が負けた。[ウィルヘルム五世の乱]の時、変更に変更される上級司令部の命令に遂に俺の胃が悲鳴を上げた。胃潰瘍である。それでも頑張ってしまった俺は[ウィルヘルム五世の乱]が終わり、正常化後この島に来た。それで安心したのだろうか入院だった。


 退院後、静養していた俺に届いたのは

-----------------------------------

 早く帰ってこい。お前に任せたい仕事がある。総統閣下も認めてくれたからな。少将への任官も裁可して頂けた

-----------------------------------

 ドメル司令からの手紙だ。

 うん。少し静養を伸ばそう。Dr.ディトラクスも、もう少し伸ばしても良いと言ってくれた。奥さんのマルレーネさんの歌がいい。あの歌で癒やされてもいいよね。

 一週間静養を伸ばしたのは、悪くないと思う。



 アイゼナッハ中佐はいいか。俺も補給を任せて安心出来る人材だ。

 工兵隊のヘス少佐は、この島の基地建設で思わぬ活躍を見せた。元は田舎の建設会社の社員だったという。転移で仕事が無くなった頃、軍の専門職公募に応募した人間だ。本人は、転移がなかったら軍とは縁が無かったでしょうと言っている。専門は橋梁きょうりょうだそうだが、それだけに未知の島で地形の罠をよく見破ってくれた。安全確保や工程管理のレベルも高く、工兵隊や協力会社の評価も高い。


 この二人に任せていれば、補給とこの基地の施設維持は楽だろう。そうすれば俺は戦闘に集中できる。

 そうか。わかりました。ドメル司令。集中したかったのですね。でも振り回すのはどうかと思います。俺は節度を保とう。


 バイエルラインはそう考える。

 温くなったコーヒーを飲み干して仕事に戻るバイエルライン。



「失礼します。ミューゼル大尉がお見えです」


 若い女性秘書が顔を出して告げる。顔が少し赤いが大丈夫か。


「なんだ熱でもあるのか。体調が悪ければ退勤していいぞ」

「いえ、問題ありません」

「それならいい。通してくれ」

「はい」 


 入ってきたのは、やや小柄で金髪碧眼の美青年だった。士官学校では上級生に無理やりメイド服を着させられて学校祭で大人気だったらしい。実は女だと本気で信じている奴もいるという噂だ。


「ラインハルト・ミューゼル大尉。出頭しました」

「うむ、ご苦労。まあ掛けたまえ」

「はい、失礼します」


 従兵にコーヒ・っと、ダメだ。もう本日のコーヒーは制限数を飲んでしまった。人が飲んでいるのも見たくない。


「従兵、冷水を」

「了解しました」


 ここは暑いからな。冷水でもいいだろう。


「ミューゼル大尉、来て貰ったのは他でもない。君の配属についてだ」

「私の配属ですか」

「そうだ。陸軍局では君を持て余したらしくてここまで遠ざけられた。それは自分でも判っているのだろう」

「はい。何故か知りませんが」


 そうだろうな。ケツを狙われたとなれば、狙った本人も絶対言わないし。それ以上に実力があり過ぎるらしい。士官学校同期が半分程中尉に成り、残りはまだ少尉というのに彼だけ大尉だ。ねたみとそねみとケツか。妬みと嫉みは判っているだろうが、ケツは知らないほうがいいだろう。

 ドメル司令が「面白い奴を君の副官に推挙しておいた。来たら驚くぞ」と言っていた。驚いたですよ。酷い厄物だ。ドメル司令、あなたは俺にまた入院しろと。


「君は私の副官になって貰う。これは既に発令されており拒否は出来ない。いいかね」

「はい、了解しました」

「勤務は明後日からだ。今日明日はゆっくりしていい。では下がっていいぞ」

「失礼します」


 勤務を始めたミューゼル大尉は基地の女性に大人気だ。連れ回す俺に対しての視線が厳しい。一部鼻息が荒いのは何故だ。


 恨みますよ。ドメル司令。






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