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外伝 新型機開発 愛知 二十三試艦攻

4話目です。

 愛知に単独発注された二三試艦攻は難産だった。

 雷撃と降爆を共用することに因る、運用の柔軟性と部隊配備に当たっては整備性の向上を。

 機種を統合することに因る、生産性の向上を目指したものだった。


 要求性能に対して発動機出力の不足を主張する愛知に対して誉でやれという海軍。

 要求性能は

 最高速度320ノット

 魚雷2発または爆弾各種2トン

 航続距離は500海里進出+戦闘30分

 乗員2名

 主翼に九九式一号三型2丁装備

 後方 ホ-103一丁

 機体外寸は雲龍以上での運用とされ全長11.5メートルまで許された。


 この搭載量と航続距離を実現するには大型大重量の機体となり誉では到底実現できるとは思われなかった。

 当時熟成が進み2400馬力を出し、更に2600馬力を目指している三菱木星なら可能というのが愛知の主張だった。

 

 発動機選定に時間が掛かってはいるが、愛知設計陣は誉は無視して木星を想定して機体開発を進めていた。誉搭載機の構想と図面化は新人の練習台としてやらせている。悩め悩め。

 単発機で魚雷2本はバカだろうと思いつつも胴体下面に平行して2本を懸架している。

 海軍要求は2本を胴体内収容という馬鹿げた要求だった。陸攻では無いんだぞと思う。当然そんな巨大爆弾倉を単発艦上機が持てるわけは無く、無視をする。

 主脚のスパンが広がってしまい主翼の折りたたみ位置がずいぶん外側になった。また主翼主脚外側への武装が困難になっている。彗星のように二段伸縮の主脚を使えば良いのだが大重量であり使わない。

 主脚のスパンを縮め90度後方に格納することになった。長さが足りないので一段は伸ばすことにした。ロック機構を堅固な構造とすることで解決を図るとした。

 主脚はもちろん中島へ丸投げである。


 幸運にもドワーフ技術の応用で住友・総技研共同開発の新型アルミ合金が量産提供されることになり、この機体に初めて供給される事となった。超々ジュラルミンを熱処理するときに魔石添加剤を加えた焼き入れ油を使用することで更に強度を上げた。特に引っ張り強度と耐腐食性が上がっている。引っ張り強度はもうアルミ合金とは思えないくらいまで上がった。

 耐食性は水上機のフロート部に使用が出来るほどだった。

 ただ加工も困難度が上がっており、特殊処理をした工具でないと歯が立たなかった。

 溶接は通常の電気溶接よりも大きな電力を必要とした。溶接棒は専用になる。電極は通常で大丈夫だった。

 溶接をすると強度が落ちるのは装甲板と同じであり、予め溶接場所として決めてある場所しか溶接しないよう注意が必要であった。


 主翼は、折りたたみ位置までは水平翼として外側は上反角を付けている。平面形は普通の直線テーパーだ。

 大量の燃料と大型主脚を収納するためにかなり厚い断面になっている。断面は層流翼系では無く従来の形状だ。厚くても抵抗が少ない形状を求め弦長の35%くらいで最大厚になるような形状になっている。

 主脚長さを短くするために逆ガル翼も検討されたが、工作が面倒であり胴体・主翼下面の兵装スペースが稼げないのと兵装取り付け時の面倒さが上がるとして実現はしなかった。スケッチは美しかったと言っておこう。

 この機体は急降下爆撃も可能とされるために胴体に愛知伝統のエアブレーキを実装している。

 兵装の取り付けを容易にするために前輪式降着装置で機体下面を三点姿勢で水平にしようという案もあったが、機体高さが高くなってしまい格納庫に収まらない可能性が出たので実現はしなかった。

 ただ、尾輪の大型化と突き出し量を多くして三点姿勢を浅くしている。


 本機の急降下爆撃の投弾速度は彗星よりも更に速く350ノットである。彗星は300ノットだった。急降下開始高度は5000で同じである。

 80番2発で急降下爆撃が可能としている。当初50番2発の予定だったが80番も可能になるよう変更された。エアブレーキの容量の関係で80番2発投下時は投下速度が370ノットまで上がってしまった。50番2発なら350ノットに抑えられた。後に容量を上げ160番使用時でも350ノットに抑えることとなる。


 現在、移住者護衛艦隊で建造中の46センチ砲戦艦の主砲弾を流用した対艦攻撃用爆弾が試作されている。160番という化け物爆弾になる予定だ。

 この速度になると後席の高度読み上げが間に合わず、搭乗員の反応の遅れで海面に突っ込むことも考えられ、設定高度で自動投下、投下後自動で水平飛行まで上げ舵を取るような機構が付けられた。

 高速での引き起こしで意識を失わないように高機動服が装備された。これはGが掛かると飛行服に圧を掛けて血液の下垂を制限して頭部への血流を保つというものだ。引き起こし時や通常旋回時のGに対応しているが、マイナスGは対策も思い付かない。

 魚雷は航空魚雷を高度20メートル以下で投下速度300ノットを目指したが、魚雷の限界で投下速度は280ノットとされた。


 発動機と魚雷格納問題をややこしくしたのは、海軍航空本部員と一部の横空搭乗員だった。

 開発関係の人間は久しぶりにGの名前を聞いた。

 Gが、またも役に立たない持論を展開。仲良しさんが感化されて、誉絶対採用と魚雷胴体内格納を声高く主張していたのである。そのGの関係者が新型機開発から外されたのは言うまでも無い。

 再び新型機開発を妨げたとして遂にGはクビになった。予備役編入・退役とか生やさしくない。軍籍剥奪である。軍政の混乱を招いた前歴が多すぎてもう誰も庇え無くなった。

 結局Gという海軍軍人は、新型機開発の足を引っ張り続けただけの人間として記憶された。後年選挙に立候補したが、軍籍剥奪が有ったことを指摘され落選した。


 二三試艦攻は愛知の主張通り、木星発動機を採用。魚雷も胴体下懸架となった。

 それでも開発の混乱で試作機初飛行は27年5月にずれ込んだ。

 この機体も彩雲同様前縁スラット・スロテッドフラップ・全浮動水平尾翼を採用している。水平尾翼は大面積として前縁スラットは付いていない。

 制式化は28年6月であった。


 B7A1[流星]

全幅 15メートル

全長 11.5メートル


自重    4.8トン

攻撃過加重 7.8トン


最高速度 攻撃過荷

 離床出力発生時     

 285ノット/50メートル

 315ノット/6000メートル

 公称出力時

 270ノット/50メートル

 290ノット/5000メートル


航続距離 

戦闘攻撃半径 500海里+全速30分

 特装として主翼外側に200リットル増槽2本で半径200海里延伸可能

 主翼外側爆装は増槽と排他利用のため主翼外側武装は無し


発動機

木星五五型

 離床出力   2650馬力 10分間

 一速公称出力 2400馬力/1000メートル

 二速公称出力 2200馬力/5400メートル

 

武装

胴体下

 六式航空魚雷 2本 または80番2発他

主翼外側

 25番2発、6番4発、6番奮進弾4発 10番奮進弾2発

 上記のいずれか

 200リットル増槽との排他利用 混載は不可


 主翼 九九式一号三型 2丁 装弾数各銃150発

 後方 ホ-103 1丁 装弾数200発


*本機の木星五五型は、流星専用設計で6000メートル以下での性能を重視している。そのため本機の実用上昇限度(攻撃過加)は7300メートルである。軽荷状態の上昇限界でも1万は届かない。離床出力は無理やり出しており過熱防止のため制限時間が短くなっている。制限時間には余裕を持たせてあるが敵視認から投弾・離脱までで一杯である。制限時間10分は高度2000メートル以下であり、それ以上は15分とされた。

 

**急降下爆撃で80番2発は可能であるが投下高度は800メートル以上とされた。


***6番奮進弾と10番奮進弾は榴弾であり、爆弾投下前や魚雷投下前に敵対空砲火を牽制・破壊する事を目的に装備される。



 陸軍・海軍とも機体の高性能化に伴い開発期間は伸びる傾向にある。  




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