外伝 新型機開発 中島・川崎
中島[誉]が制式採用され、陸軍海軍問わず主力発動機になっていく。
三菱は同じクラスで高性能を狙いすぎ、自滅。火星を18気筒化した木星の高性能化をしている。予定しているらしい最高出力は2500馬力から2800馬力。
従来主力であった金星は徐々に無くなっていくのだろう。と思ったが練習機や補助機などに残るらしい。
ディッツ帝国向けにも生産は継続する。ただ、魔石燃料をまだ公開していないのでそれ以前の型番だ。
各社とも設計・試作が暇だった時期に相当研究を重ねたようで、発注から早い段階でモックアップ、試作機と出来ている。
中島の二三試艦上偵察機はもちろん自社の誉発動機を装備している。機体寸法はもう小型空母への搭載を諦めたサイズだ。
この機体寸法は海軍からも許可が出ている。今後作る空母は最低でも雲龍級だという。レシプロ機は今試作にでている機体が最後で、次世代からは奮進式発動機搭載機が発注されるという話だが、噴進式発動機の開発が上手く行っていないらしい。
試作発注時の要求性能は高かった。
公試状態にて水平全速370ノット、航続距離2000海里以上という物だった。三座であることと防弾にボラールのウロコを使う以外は中島の自由で良いとは言われたものの、三座で戦闘機であるキ-84と同等の速度とそれ以上の長い航続距離が機体開発の困難さを物語る。
ボラールのウロコを防弾に使うのはこの機体と百式司令部偵察機が許されただけだった。
ボラールのウロコは全機に使えるほどの数は取れない。それだけ偵察が重視されていると言うことだった。
二三試艦偵はその重量による高翼面荷重から着艦時の安全性を高めるために様々な手段が執られた。
主翼前縁スラットに幅広のスロッテッドフラップ。着艦時の大仰角時に大出力発動機のプロペラ後流と主翼やフラップの気流で水平尾翼の効きが悪く、日本機初の全浮動式水平尾翼とした。更に水平尾翼までに前縁スラットが付いている。
プロペラの大トルクに対抗するために天山同様垂直尾翼を傾けている。
主翼は層流翼断面だが抵抗値を下げるため薄くなっている。そのため燃料タンクは主翼の空いているところ全てという感じで設置された。
これらの新機構や大仰角時の安定性確保に時間を取られ、初飛行は2年半後の25年冬だった。
その後も細かなトラブル解決に時間を取られ、制式化は26年夏となった。
彩雲である。
C6N1[彩雲]
全幅 12.5メートル
全長 11.5メートル
自重 3.1トン
全備重量 4.5トン
偵察過荷 5.3トン
最大速度 365ノット 高度6000メートル 675km/時
航続距離 1800海里 *増槽無し 3300キロ
2800海里 5200キロ
胴体下300リットル増槽+主翼200リットル増槽二本
発動機 誉二二型
離床出力 2200馬力 **魔石燃料添加剤使用出力
一速公称出力 2100馬力/2000メートル
二速公称出力 1800馬力/6000メートル
武装
後方13ミリ旋回機銃 ホ-103 1丁
*後部座席周りが狭く取り回しが難しかった。機体形状の関係から射界が狭く有効性は低かったようである。
**魔石燃料添加剤使用出力
魔石燃料添加剤使用時は添加濃度による。最大で出力20%上昇。通常は5%アップの濃度で使用していた。
最大濃度だと400ノット以上出たらしい。
二三試海軍機の中で一番早く制式化された。
キ-84
陸軍の戦闘機で中島に発注された。
要求性能は
最高速度 680km/h/6000メートル
航続距離 1800キロ 増槽使用時 2800キロ
上昇力 高度5000メートルまで5分
武装 九十九式一号三型20ミリ機関砲4丁 4丁で800発以上を希望
250キロ爆弾1発から3発
この機体は陸軍から鍾馗の後継機としてあらかじめ内示を受けており、中島社内で研究開発されていた。誉と平行でやっていた。
そのため、非常に早くに試験飛行が開始された。数々の問題を解決し制式化されたのが26年春であった。
十一式戦闘機[疾風一型]
全幅 11.8メートル
全長 10.5メートル
自重 2.8トン
全備重量 4.1トン
攻撃過荷重 4.7トン *200リットル増槽二本+250キロ爆弾一発
最大速度 684km/h/6000メートル
航続距離 1500キロ 200リットル増槽2本使用時2500キロ
上昇力 高度5000メートルまで 5分15秒
発動機 誉二二型 ***魔石燃料添加剤使用出力
離床出力 2200馬力
一速公称出力 2100馬力/2000メートル
二速公称出力 1800馬力/6000メートル
武装 九九式一号三型20ミリ機関砲 4丁 主翼左右2丁ずつ
弾薬 内側250発 外側200発
爆弾 最大250キロ爆弾3発 胴体下1発 主翼左右1発ずつ
*主翼増槽と爆弾は排他使用、同時装備不可
**防弾はM2対応
***魔石燃料添加剤使用出力
魔石燃料添加剤使用時は添加濃度による。最大で出力二十%上昇。通常は五%アップの濃度で使用していた。
最大濃度では740キロ出たという。
キ-105
川崎航空機に屠龍の後継として発注された双発復座戦闘機。
この時期電探の機載化と小型化が進み機首に搭載となった。ただし操縦員が操作しながら操縦は難しいので後席に電探要員が必要になった。
双発複座長距離戦闘機で単座機に対抗可能という、屠龍発注時に各国で同じような内容で出された無茶な要求性能はこの機体には無い。
この機体は大型機迎撃が主任務として、対地攻撃も可能という物だった。もっとも対地攻撃は爆弾を投下できれば良い程度だった。
要求性能は、誉双発で高度1万メートルで650キロ以上という厳しい物だった。
武装は、当時制式化されている八式十一型30ミリ機関砲4丁を装備。
後方にホ-103 1丁
爆弾は250キロ4発。
航続距離は2時間滞空+高度1万メートルで戦闘30分というもので、距離にするとおよそ3000キロ近かった。
気密室はまだ開発中で、酸素瓶1時間半を二人分という重量を積まなければいけなかった。
八式十一型30ミリ機関砲は九九式一号二型を30ミリとしたもので初速・発射速度の基本性能は同等だが最初からベルト給弾である。
高高度飛行への対策として排気タービン過給機付き二段二速過給器と機械式二段二速過給器が考えられたが、その頃奮進式発動機開発の成果としてボラールのウロコを使った排気タービン過給器付き二段二速過給器が開発された。タービンに当たる排気温度が1000度以下な為に軸以外は冷却をしていない。
誉に排気タービン過給機を取り付けた発動機を中島と共同で開発。重くなるが中間冷却器を装備し全高度で高性能を発揮することを目指した。
誉四三型とした。高度7000で2200馬力を発揮し高度1万でも2000馬力を出した。離床出力であり制限時間は10分とされた。
この誉四三型は百式司令部偵察機にも搭載され高度1万で750キロを出した。
キ-105は試作機で全幅16メートル、全長12メートル、自重6トン強の大型戦闘機であり陸軍の審査員達はモックアップで度肝を抜かれたという。
前代未聞の大型高性能機に開発の手間は掛かり、計画開始後の4年経った27年5月に量産試作機がロールアウト。制式化されたのは28年2月だった。
キ-105
十三式復座戦闘機[閃竜二一型]
全幅 16メートル
全長 12メートル
自重 6.6トン
全備重量 8.4トン(対爆撃機仕様・対地攻撃時は+爆弾1トンまで装備)
最高速度 690km/h 高度7200メートル
670km/h 高度1万メートル
航続距離 2800キロ
発動機 誉四三型
離床出力 2200馬力 *魔石燃料添加剤使用出力
一速公称出力 2100馬力/3000メートル
二速公称出力 1900馬力/8000メートル
武装 八式十一型30ミリ機関砲4門 胴体下面
ホ-103旋回機関砲 後席
爆装 250キロ爆弾4発 主翼下面装備
30ミリ機関砲の装弾数は各銃ベルト給弾120発
夜戦型として電探装備の乙型がある。自重で80キロ増加している。
後席は電探操作員としている。後方機銃は装備されない。
*魔石燃料添加剤使用出力
魔石燃料添加剤使用時は添加濃度による。最大で出力20%上昇。通常は5%アップの濃度で使用していた。
閃竜のお値段は高かった。
川崎は中島・疾風の万が一に備えて飛燕に誉を装備した機体の試作も受注していた。
金星装備機体は非常に好評であったが、いかんせん速度が600キロ出ず今後一線を張れるとは思えなかった。
そこで直径がほとんど変わらない誉を装備してみようと言うことになった。
同時に威力不足が懸念されるホ-103を降ろして九九式一号三型を主翼に4丁装備するとした。
九九式一号三型は初速は同じだが発射速度を毎分750発まで高めた型だ。
風防形状もファストバック式から涙滴式に改めるよう指示があった。
川崎はここに至って胴体の幅と翼幅だけを残し全面改設計を図った。転移後も研究は続けている。その成果をぶつけた。
見た目は金星装備機と余り変わらない。風防が涙滴式になり胴体後部が横から見ると細くなった。それだけくらいだったが、細かいところは全面的に見直されている。飛燕一型二型の部品が使えない酷い三型が出来上がった。
幅は変わらないが全長は若干短くなった。
発動機の重量増に対処するため思い切って防火壁を後ろに下げた。胴体銃を装備しなくて良いのでその分後退させることが出来た。プロペラガバナーの大容量化に伴いスピナーが大型化していて長くなっている。
主翼平面形状は前後長が150ミリ長くなった他は変わらない。翼断面は変わっている。これは翼面荷重を下げるのと九九式一号三型と弾薬を収容するためだった。
出来上がった機体に陸軍はあきれたが、試作機の評判は上々だった。
最高速度よりも時速500キロ前後での空戦性能を重視した機体は、金星装備機よりも動きが重いが振り回しやすいとの評価だ。
最高速度は640km/h 高度6000メートルだった。




