KD航路 受け入れ側
本日、6話。 05:00 2話 06:00 4話
1話目です。
06:00の4話は外伝です。
カラン港では、月6回に増えた移住者の受け入れでえらい目に遭っていた。
月4回なら週1回である。
3000人の上陸と宿舎への移送に丸1日。新宿舎は遠くなったが間に鉄道がそれも複線で入っていた。お行儀良く並んでくれればいいのだが、中には興奮しているのか言うことを聞いてくれない人間も多い。
そういう時は、5級以上の冒険者の出番だった。日本兵もいるが同族の方が何かと都合が良かった。
それが埠頭4基の内2基を占拠しての二日である。残りの2基は移住者輸送船が着けられる大きさでは無かった。
カラン港は移住者の受け入れのみならず、開拓地への物資供給窓口でもあった。
そのために埠頭の占拠期間は短い方が良かった。
移住者の受け入れを始めてから1年。13万人ほどがこの港から各地に散っていった。ほとんどはこのシベリア大陸山東半島が受け入れ先立ったが。
最近は本土での認知度も高まり、移住者を受け入れる人数が増えてきていた。
開拓地の開墾も進み、さらなる人員の受け入れも可能となってきた。とにかく広いのだ。山東半島の一部に過ぎないカラン港周辺だけでも、エルラン帝国の国民全てを受け入れても余裕は有るだろうというのが最近の見解だ。
何故かというと、簡易でも偵察が終わっていない地域が多すぎて開拓は無謀であった。何処にいるのか分からない寄生虫や風土病。川があれば洪水が有るかもしれない。
今の所は、日本軍による簡易な偵察で大丈夫だろうという地域が開放されて開拓地にされているに過ぎない。今後増える冒険者の活用も日本は視野に入れている。
それを受けて、さらに受け入れ能力の強化と受け入れ人員の増加を図ろうとしていた。
そして最近の港湾能力強化で移住者専用埠頭が完成。しかも4隻が着けられる上に鉄道の引き込み線まである。
これであの上陸後の混乱は無くなるだろう。無くなるといいな。
「ここがカランなのか」
「そう聞いているわよ。私もあなたも一緒に聞いたでしょう」
「そうだが、ここには普人族しかいないぞ。しかも我々をここまで運んできた日本人だけだ」
「おとーさん、まだふねからおりてないよ」
小さな子供、息子のユーリが言う。
「ほら、子供の方が賢いのよ」
「ふん」
「やーね」
「やーな」
「やーね?」
下の娘も言葉の意味も分からずに続く。
「諦めなさい。ここには私たちの仲間の一杯いるのよ。悪いことにはならないわ」
「しかしな、ここには俺の職が有るのか。料理人だぞ」
「でも船の中で紹介されたじゃ無い。どこでも働けるし、職種は出来るだけ希望に添うと」
「俺は店を持っていたんだ。今更他の奴の下に着けるか」
「ふーん、じゃあ、お金有るの」
「うっ」
「じゃあ日本人に借金するのね」
「借金だと?」
「聞いてなかったの?店をやっていた人なんかにはお金を貸してくれるのよ。凄く低い金利で」
「むう」
「聞いてなかったの?」
「五月蠅い」
「「うるさい?」」
「子供達が真似するから、変な態度は止めて」
「分かったよ」
「どうするの」
「日本人に聞いてみる。お前達を食わせないといけないからな」
「まあ、今頃分かったの」
「「わかったの」」
周りからクスクス笑い声が起こった。子供達の突っ込みが絶妙だった。
「皆さん、船から降りる前に名札を忘れないようにして下さい」放送があった。
「これが読めん。日本語だと言うが」
「その上に共通語で書いてあるじゃない」
「これを覚えないと日本では働けないのか」
「あら、あなた日本で働くつもり?」
「あれだけ豊富な調味料と旨い料理を出されたんだ。俺は挑戦したい」
「私たちのご飯は?」
「何とかする」
「何とかって?」
「何とかだ」
「答えになってないわよ」
「分かったよ。開拓地で頑張るよ」
「それならいいわ」
「でも開拓地に料理の仕事はあるのか」
「それこそ聞けばいいじゃない」
「ああ言えばこう言う」
「あなたの頭が単純なだけでしょ」
「「たんじゅん」?」
「こら、お父さんにそれは無いだろ」
「「ん~」」
「可愛いわ。私の子供達」
「この階の人は下船して下さい」そう放送があり、乗り組み員が案内に来た。
「娘を抱っこしてくれる?私はユーリと手を繋ぐから」
「分かった。おいで、シェラ」
「おとーさん。だっこ」
「よしよし」
そのエルフの家族は船を降りた。
「この列車に乗って下さい。順番はありません。満員になったら発車します」放送がうなる。
「またアレに乗るのか」
「いやなの」
「煙が酷くてな。真っ黒になったじゃ無いか」
「そう言えばそうね。アレは堪らなかったわ」
「うん?煙が出ていないぞ」
「あら、ほんとね。それに形が違うわ。蒸気も出ていないもの」
「ああ、奥さん。アレは真っ黒い煙の出る蒸気機関車では有りません。ディーゼル機関車です」
「ディーゼル?」
「まあ多分今は分からないでしょう」
駅員だろう制服を着た日本人?え?耳が。エルフなの?
「私も来たばかりの時は驚きました。でももう慣れました。最初に乗った船の大きいことと護衛とか言う船のとてつもない大きさ。驚きの連続でした」
「エルフなのよね?」
「ようこそ、カランへ。歓迎します。エルフで間違いないですよ」
移住者が落ち着けるよう、そこかしこにエルラン帝国からの移住者が配置されていた。




