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KD航路 増員

 日本は受け入れ側が慣れてきたことと港湾能力の拡大を理由として、ディッツ帝国側に送り出し人員の増加を要請した。

 正和21年6月のことである。

 現状では今までは月4便1万2000人が受け入れ限界であったが、カラン港の埠頭増設 これは1万トン級貨物船受け入れ可能埠頭が4基に増設されて、朝からやれば1日4交代で夕方までに16隻の人員上陸が可能になった。1隻最大300人としても4800人の上陸が可能である。

 ディッツ帝国には1回5000人規模に拡大して欲しいと要請中であるが、とりあえず月6便に増やし1万2000人から1万8000人に増やそうというのである。上手くいけば月6便3万人へと移行する予定である。

 ディッツ帝国もそれならば対応可能として月6便を試行してみることになった。旧エルラン帝国の普人族まで移住希望を出しているとあっては、1回の人数をさらに増やすしか短期での移住は不可能だった。

 受け入れ宿舎は今までは軍の宿舎を間借りしていたが新たに専用宿舎を建設。最大で6000人の受け入れが可能になった。この宿舎は普通クラスの旅館並みであった。

 新宿舎まで新たに複線の鉄道を敷設した。これは港のそばだった軍の宿舎に比べると30キロほど内陸の山手になっているためだった。後背からは小型下位の混沌獣がたまに出てくる程度で混沌獣はかなり奥に押し返されていた。

 複線にしたのは将来を考えてであり、ここからさらに奥へ開拓地は伸びていく予定である。

 従来の奥地への単線はそのまま残し、交差する場所に駅を作り柔軟に運用されることになる。従来の単線は混沌領域近くまで延ばしてあり、廃線には出来なかった。


 また、どうしてそんな所かと言えば、掘ったら温泉が湧いたのである。どこに何が有るか分からないとして、とりあえずボーリングしてみるのが転移後の日本が行った外地での探索行為である。

 温泉は酸ヶ湯温泉のような湯質ではなく単純温泉であった。湯量は豊富で現在カラン港や軍の駐屯地までパイプラインを引いてくるか駐屯地付近でボーリングする計画が有る。予算を移住者基金から出して良い物か判断が付かないので政府に申請中である。



挿絵(By みてみん)


 

 開拓地では機械化もあって開拓が進み、さらなる受け入れが可能になっていた。日本国内でもようやくエルフや獣人になれてきており、農村や漁村では引く手あまただった。皆拡大した農地や旺盛な魚需要を持て余していた。

 一部の人間は(と言ってもドワーフなのだが)こだわりが強すぎるとして敬遠されたこともある。造り酒屋に行ったドワーフは仕事は出来るのだが試飲が多すぎるとしてクビになった。

 あらかじめカラン村の人達からは「ドワーフはドワーフだけでの運用が吉」と聞いていたのであるが、彼等ドワーフの希望もあり試してみたのだった。


 カムラン港は拡張計画は有ったものの、取扱量から見ると必要無しとして10年以上凍結されていた。

 今回の事態を受けて拡張計画は新たに練り直され実行されることになった。完成すれば2万トン級船舶が接岸できる埠頭が2基、1万トン級船舶用埠頭が2基、2万トン級タンカー用埠頭が1基出来上がる。その後内航船用埠頭増設などの拡張工事が第二期工事として行われる。

 現在の2万トン級埠頭2基と1万トン級タンカー用埠頭1基と1万トン級埠頭2基に中小船舶用埠頭3基、内航船用埠頭4基に比べると格段に大きくなる。

 このうち1万トン級埠頭2基の費用は日本船専用とすることで合意が出来日本の移住者基金が支払った。


 

 船団の増加に護衛艦艇はさすがに配置しきれないため、船団に直接付く直接護衛は巡洋艦1隻と駆逐艦8隻となった。巡洋艦は越百級または阿賀野級であり、駆逐艦は全て夕雲級だった。本体の海軍は駆逐艦の数で松級が半数に迫ろうとしているのに贅沢な金持ちである。


 あまり裕福で無い海軍では特型の更新を進めていた。全て松級だった。

 初春級代替は東鳥島南方の海洋混沌領域で活動するべく厚い外板と幅広の船体を持つボラールにぶつけられても無事な船体になる予定で設計が進められている。

 海軍の戦艦はさすがに寿命が近い扶桑は戦艦籍を外れ正式に練習艦となった。今までとやることは同じだが正式な任務の艦となっただけである。

 金剛と霧島の方が艦齢は古いのだが、度重なる改装によって寿命は扶桑より有るだろうと思われた。巡洋艦も古鷹級と青葉級は退役となり青葉と衣笠は練習艦任務に就いた。古鷹と加古はいじりすぎており艦内配置にかなりの無理が生じているため練習艦任務には不適当とされた。

 急増する艦艇に対しての士官教育が、鹿島・香椎・香取の3隻では追いつかないために青葉級の2隻が廻された。

 

 越百級重巡は古鷹級以降高雄級までの重巡の代替であり、そこで一旦建造は終わりになる予定だ。

 戦艦は大和級4番艦信濃がかなり怪しい設計になっており、またA-146が大型に過ぎると思われたため4万5000トン級戦艦を4隻建造中である。戦艦を建造できる大型のドックが埋まっており一気に4隻では無く順次4隻建造となった。これは改長門級といってもいい船でようやく国産化に成功したOTO社製38センチ砲を3連装3基9門を搭載し翔鶴級以降の空母と行動を共に出来る高速戦艦となる。


 戦艦や空母は航路帯警備として航路上を遊弋することになった。また日本最南端である台湾に哨戒基地を建設。新鋭機である四式爆撃機を中心とする哨戒部隊が陣取った。この部隊は日本初の空軍による実戦部隊だった。レンドバ島とベララベラ島にも空軍基地を設営中であり、完成次第四式爆撃機による哨戒網を構築することになる。

 護衛艦艇のうち海軍から借りていた艦艇は、徐々に建造が進む移住者護衛艦隊専用艦との交代で、戦艦と重巡、空母以外は移住者護衛艦隊独自の艦艇となった。空母も航路帯警備なら8隻で良いとなったが当初の予定通り10隻が建造されることになる。雲龍級6隻と土佐級4隻となる予定だ。空母は雲龍級であるが龍の名前は海軍に残すとして山の名前になった。

 土佐級はA-146の船体を利用した大型空母で飛行甲板の全面装甲と現在開発中の噴進エンジンに対応する事が可能な空母だった。機関出力を上げ最大で33ノット出るようにした。その代わり舷側装甲の減少や弾火薬庫の再配置が行われた。噴進エンジンに対応する空母は海軍でも建造中で、火龍・雷龍の後継艦となる予定である。図面は共通であった。

 名前が旧国名なのは、ここまで大きければ戦艦同等の扱いで良いだろうと言うことと、将来的には空母が主力艦で有ると言う認識からだ。

 ある意味想定だけであった超甲巡が日の目を見たのは、海軍では無く移住者護衛艦隊構想からで有ったが、設計屋の情熱は冷めやらず異常な計画が多々持ち上がっては消えていった。

 未だに排水量3万トン前後としか決まっていない。艦政本部は何をやっているのだろう。



 現在のガダルカナル島での休憩地点は軍港として整備する予定であり、別の地点に休憩所を建設中である。

 これは護衛艦艇の増加や休養地点として利用する船舶の増加で休憩してても見えるのは軍艦と商船ばかりという休めない事実が出来てしまったからだ。休暇で上陸する者達の評判も悪くなってきた。

 東の半島を越えた地点に大規模な休憩施設を建設している。

 この建設地点にも砂浜はあり、遠浅なので危険性も少ないだろうという判断だ。赤道多島海には何故か危険なサメがおらず他に危険なダツ・カマスや赤エイ等の姿も無かった。ジンベイザメやマンタ、マンボウなどは優雅に泳いでいた。






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