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KD航路

KD航路のKはカラン、Dはディッツから

 ディッツ発カラン行きはK-***と番号 例・K-151

 カラン発ディッツ行きはD-***と番号 例・D-107



挿絵(By みてみん)



 正和20年4月

 その航路は常に複数の船団が行き交っていた。

 なぜなら、乗船口であるディッツ帝国カムラン港の能力に限りがあるからだった。

 1回で3000人が現状では限界だった。それ以上は、人を寄せても収容能力が無かった。

 同時に受け入れ港であるカラン港も、能力的に限界が近い。2個師団3万人強が収容可能であるがそこから奥に進むには、シベリア大陸の開拓が進んでいなかった。

 シベリア大陸奥地に開拓が進むにつれて人が入植できる土地が増えるが、それと同じペースで人がディッツ帝国から来る。

 ただ、人手が増えているので徐々に受け入れ側の余裕は出来てきていた。彼等にも建設機械や農業機械の運転を覚えさせている。やはり、見たことも無い機械であり習得には時間が掛かるが、徐々に技能取得者が増えている。

 勿論、監督していないと、とんでもない事をやらかす事が有るのでまだ任せられない。応用させるだけで基礎的な教育を受けさせていないと言うことはそういう事だ。


 宿舎も受け入れ当初に伐採を始めた木材がようやく乾燥して使えるようになった。現地に大規模な製材所を作り、運転を始めている。ここでも彼等の一部が働いている。

 初期の宿舎は未乾燥の木材を使用しており、すでに痛み始めている。最初から応急であり、いずれ建て替えることになる前提で建てられたものだ。


 現状では月4便1万2000人以上だと奥地に有る開拓地での受け入れ準備が出来ない。宿舎が間に合わないので、溢れた人間はテント暮らしになる。

 初期には大船団を組んで一気に1万5000人とか運んでみたが、1万5000人が奥地に進みカラン港の宿舎が空になるのに1ヶ月以上掛かった。

 カムラン港沖合での待機時間が長すぎ、かえって輸送効率が悪かった。カラン港でも兵隊を降ろすのとは違い民間人であるために時間が掛かった。

 乗船時間が長いためストレスはかなり溜まるようだ。

 そのために1便3000人になった。


 この分なら1便5000人でも大丈夫そうだ。

 いつ頃から増加させるかは検討中である。


 当初より長時間の乗船が問題になっており、赤道多島海にある島に中継点を設け一度下船・休養を取ることになっている。

 ガダルカナル島北西部の湾に砂浜のところが有り、近くには港に出来る入り江も有るのでそこに港を作っている最中である。現在は沖桟橋で運用中だ。同島中央部北側に砂浜で朝日と夕日を望める素晴らしいロケーションの場所が有るのだがあいにくと港の適地がそばに無かった。

 砂浜近くに仮宿舎を作り二日ほど休養を取らせる。皆そういう休養というものをしたことが無いと言って、評判は良かった。

 



 護衛は当初、戦艦、重巡、完全編成の水雷戦隊に空母戦隊と豪華なものだった。

 これは海軍の実戦部隊であり、徐々に移住者護衛艦隊へと変わっていく。

 現在3000人規模の移住者輸送船団だと、軽巡1隻、駆逐艦4隻の移住者護衛艦隊と海軍から数隻の応援がある。いずれは全て移住者護衛艦隊が担当することになる。

 KD航路は常に海軍の空母部隊によって哨戒が行われている。この空母部隊も移住者護衛艦隊構想で建造された空母に変わることになる。また、新開発の四式爆撃機による哨戒網を構築すべく、台湾南部と赤道多島海の適地に飛行場を建設しつつある。この哨戒網が完成すれば空母部隊の負担はかなり小さくなる。

 飛行艇での哨戒も随時行われるが、機数が少ないのと運用が陸上機に比べると難しいので少数にとどまっている。四式爆撃機による哨戒網を構築出来れば、飛行艇での哨戒も無くなる。

 やがて、航路帯警備になる予定だ。


 輸送船舶は、貨客船と貨物船改造の人員輸送船である。いずれも航海速力18ノット以上という優秀船のみで運用している。1隻平均300人の定員としている。詰めればもっと乗るが環境が悪くなるので詰め込みすぎないようにしている。体の弱っている人や小さな子供・年寄りのいる家族は貨客船に優先的に割り当てられた。

 往復で1ヶ月強の航海である。本土の港やドックで整備と補給をしてディッツ帝国に直接向かう。帰りは、ガダルカナル島で乗客の休養が有りそしてカラン港に向かう。カラン港で乗客を降ろした後は本土の母港に向かう。この繰り返しだ。

 乗り組み員の休養や船舶の整備や補給の必要もあり、1航海事に10日間の休暇・整備補給期間が設けられている。それでも、慣れない異世界の海、海洋性混沌獣への警戒等、乗り組み員の疲労は大きかった。

 本土周辺や赤道多島海の航路部分には電波源や灯台を設置し始めているが、まだ十分ではなく航海中の不安は大きかった。


 現在60隻の船舶が従事しているが、さらに40隻増やすことになっている。現在優秀貨物船を鋭意改造中である。


 護衛艦艇も乗組員の養成と共に増えている。駆逐艦は夕雲級、軽巡は阿賀野級、重巡は越百級である。戦艦はまだだが、空母は雲龍級が増えた。空母直衛艦は秋月級であり海軍が建造を始めた奴を買っている。

 海軍は売却した金で新たに建造を始めている。高めに売れたので(高めに買った。横からさらうのだ。多少は色を付けないと)空母は雲龍級では無く改翔鶴級を新造している。海龍はさすがに高くつきすぎるようだ。赤城と加賀の寿命が近い。改造に改造で無理を重ねている。あちこちにガタが来ているようだ。それまでに改翔鶴級を就役させるのだろう。

 

 夕雲級と秋月級は民間の船台で量産に入っている。既に各級とも月に2隻のペースで進水している。阿賀野級や越百級も続々と建造を始めている。大型艦はさすがに月産とは言わないが海軍の分も有るので、各造船所は繁忙期に入った。

 

 海運各社は外航船が運用されるようになりようやく一息ついている。内航船は従来から仕事は多かったが転移後さらに増えていた。外航船が暇なだけだった。

 海運各社は増強に乗り出そうとしたが、政府から待てが掛かった。内航船の少量の増強は認めるが、外航船の増強は認めないと。貿易相手は居ないし、南アタリナ島の地下資源輸送も量は知れている。

 外航貨物船は大幅に余っているのである。仕事が有るのは優秀船だけだった。航海速力が12ノット以下の大型船はまだ遊んでいた。




 海軍工廠ではA-146の建造に入っていた。A-150が誇大妄想であれば、A-146は何とか実現の範囲だった。

全長    266メートル

吃水幅   39メートル 

基準排水量 6万5000トン

公試排水量 6万9000トン

満載排水量 7万3000トン

缶     18缶

機関 ギヤードタービン 4基4軸 

機関出力  19万馬力  

速力    29.5ノット    

航続距離  18ノット 1万2000海里


主砲 

46センチ45口径砲3連装砲塔  3基9門

     呼称は46センチだが実際は45.6センチ

高角砲

一式12.7センチ連装高角砲  16基32門

機銃

一式33ミリ機銃4連装      8基

一式33ミリ機銃連装      12基

九九式二号一型20ミリ機銃単装 20基

対潜兵装兼対海洋性渾沌獣兵装

24連装対潜迫撃砲        2基


15メートル測距儀を前後に備えさらに各砲塔にも備えている

高射装置は電探連動の最新型で高角砲2基1群として8基備える

機銃用射撃指揮装置も電探連動型で33ミリ機銃4連装1基に1基割り当てられた

連装には2基1群とした

20ミリ機銃は完全手動で目視照準である


水上見張り電探  2基

対空見張り電探  2基

主砲射撃照準電探 3基

高射用電探   24基

水中聴音機    2基

探信義      1基




「荒巻ー!!なんだこいつは」

「おお、山下か。そんなに慌てて如何した」

「如何したもこうしたも無い。なんだこいつは」

「戦艦だが」

「戦艦は分かるが、なんだこのデカ物は」

「45万トンで六隻じゃ無いか。おかしいか?」

「俺は5万トンくらいと言ったはずだ」

「いや、ここに45万トンで6隻とお前の確認も付いた書類があるが」

「何?」

「これ。ほれ見ろ」

「うっ。この野郎」

「イヤー太っ腹。お大尽。誠にありがとうございます」

「ぬぐぐぐ。今回は勘弁したる」

「ありがと」

「おい、空母もこいつなのか」

「ふっ」

「当然みたいな面しやがって」

「任せろ。移住が終わるまえには必ず竣工させる」

「だが6隻は多すぎだ。4隻にしろ。いいな」

「4隻か。まあいいだろう。工廠や民間で工事に入るのが4隻だ。ちょうど良い」

「なあ、まさか超甲巡なんて。おい!そのニヤけ顔はなんだ。作るのか」

「すまんな。4隻作らせてくれ。2隻の予定だったが戦艦を2隻減らしたんだ。その分増やしてもいいじゃないか」

「まあいい」

「ありがと」

「他には無いだろうな。予定外というか予想外の奴は」

「無い!至極まっとうな船ばかりだ」

「本当か?」

「多分?」

「おい!」

「そう言うなよ。造船屋が皆張り切っていてな。凄くいい顔しているんだ」

「これだけ好き勝手やれればいい顔もするだろうよ」

「こんな祭りは、これが最初で最後だろう。頼むからやらせてくれ」

「フン。やればいいさ。金は出す。いい船を作れ」

「やっぱり持つものは同期だな」

「五月蠅いよ」

「なあ、水交社行かないか」

「水交社か。たまには違うところにしよう。お前持ちでな」

「俺かよ」

「責任取れ」

「これで取れるなら。奢らせて貰う」

「じゃあ行こう。南も北も顔が多い。京都にでも行くか」

「なあ、かなり高そうなんだが」

「奢るんだろう。俺の金じゃ無い」

「非道い」

「先に非道いことをしたのは、()()()()()

「すみません。奢らせて貰います」


 荒巻の財布は一気に軽くなったという。





46センチ砲登場です。

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