初めてのスノーボード
2001年 初めてスノーボードをした時のお話
友人に雪山に誘われたのだった。
小さい頃からスキーに慣れ親しんでいた私だが、どうせならこの機にスノボデビューしよう。行くのは私を含めた4人、友人以外は初対面の者たちだ。
車に乗り込み、朝の4時から雪山に向かって出発する。初めてのスノーボードに不安がないわけではないが、友人がレクチャーしてくれるというのだ。何事にも言えることではあるが、新しい事を始める時というのは「少しの不安」と「たくさんの期待」があるものだ。
スキー場に到着するとみんなでリフト1日券を買う。ん?なにか引っかかるがまあいい、午後には乗れるように頑張ろう。
みんなを待たせてスノボ一式をレンタルした私が表に出ると、そこには誰も待っていなかった。いきなりの迷子か。不安を抱えてキョロキョロしているとようやく友人がやってきた。このぉ、私の初心者レベルを見くびるなよ。私のことは雛鳥と思え。教えられるままスノボを履くと友人が言う。
「その場でジャンプできる?」
だからってそれはいくらなんでも見くびりすぎではないか。ジャンプする私を見た友人は満足そうにうなずくと「O.K.じゃあ行こうか!」と向かった先は事もあろうにリフト乗り場だった。
いやいやいや、もっとこうあるだろう、初心者に相応しいなだらかなコースが。あせる私に目もくれず友人は当然のようにリフトに乗って行ってしまった。
決して獅子の子ではない私がなんとかリフトで山の中腹までやってくると、いよいよ友人のレクチャーが始まったのだった。
「じゃあ、ボード履いたら谷を正面に見てそのまま真っ直ぐ下りてみて」
え!?スノーボードといえば左右に向かって滑るものだと思っていたが、私の思い違いだったのだろうか。縦に滑れと?何だこれ。納得いかないまま20mほど下るとそこにあったのはリフト乗り場だった。
「じゃあ次、これ乗るから」
これ乗るからじゃあねーよ。ちょっと雑すぎないか?こちとらバリバリの初心者だぞ、なぜここからさらに上を目指さなきゃあいけないんだ。おい、まて、置いてくな。
その後、さらに1本のリフトを乗り継ぎ、やってきたのは頂上だった。
見下ろせばかなりの斜度だ。崖が初心者お断りと言っている。私のことか。次々と華麗なターンを決めて滑降していく者たちが私をどんどん追い詰める。
遠くの景色を眺めてみる。スノボで転んで骨折した友人がいたっけな。二つ目のリフト乗り場にセーブポイントがあれば戻りたい、、、。
しかしこうなった以上頼りは友人だけだ。覚悟を決めて振り返ると友人は「ダメならお尻で滑って下りれば良いから、じゃあね~」と軽やかに滑っていったのだった。
をぉいぃ!
・・・そりゃあさ、恋人じゃあないよ?手取り足取りキャッキャうふふなんて考えないよ?だけどさぁ、さすがにもうちょっとこう、なんかあるだろう!それとも何か、これが正式なスノボのレクチャーだとでもいうのか。世のスノボプレーヤー達はこんな無理ゲーを乗り越えてきたってのか。尊敬しかないな!
それから2時間、私はひたすら転びながらもなんとかコツをつかみ、ようやく楽しみを見出せるようになった頃、友人から昼食の呼び出しがあったのだった。
山の中腹にあるレストランにようやくのことで到着すると、友人達はすでに食事を終えて酒盛りを始めていた。
「滑れるようになった?」
このぉ、ぬけぬけと言いおる。友人達はご機嫌で私にも酒を勧めてきたが飲むものか、ようやくコツをつかんできたところなんだ。しかしその後2時間経っても一向に酒盛りが終わる気配はない。いやな予感がして恐る恐る聞いてみる。
「そろそろ滑りに行かない?」
「う~ん、もういいかな、疲れたし」
お前ら一体何しに来た。なぜ1日リフト券を買ったのか。ナイターに備えて休憩か。私は友人達を置いて一人滑りに行くことに決めたのだった。
そうして1時間ほど一人で滑っていると友人から連絡が来た。
「そろそろ帰るから戻ってきて」
えっ!?まだ早くない?ナイターはこれからだろ!?しかしどうやらそのスキー場はナイター営業をしていないようだった。
こうして、私の初めてのスノボはその3分の1が飲まない飲み会で終わったのだった。帰りの車の中、そういえばこの運転手もしこたま飲んでいたな、と思い出したがいやそんなはずはない。次からは一人で来よう。絶対にだ。
いつもお読みいただきありがとうございます。
長らくお付き合いいただいたこのエッセイですが、1月20日の投稿をもって完結とし、その後は不定期更新とさせていただきます。
今後の活動を考えると定期的な更新が難しく、中途半端に続けるよりは一度〆ようと考えました。
あと少し、お付き合いいただければ幸いです。




