第三十九話 拠点作りと全力戦闘。
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★★★
ウォーベットが毒々スライム君を見送った後、そのまま森へと入ったジーク達は、思いのほかこの場所を気に入り、魔物も多く訓練に適していると感じたので、先ずは"拠点"を森の中に築くことにした。――け、決して森の中で迷って、外に出れなくなったからしょうがなく、とかではない。だ、断じてない。
そうと決まれば早速と、ジークはまずわちゃわちゃ達に周囲を"整えて"貰うようにお願いする。
――すると先ずは、マルクがそこらの木々にぺシペシしていき、ぺシペシされた木々はいきなり地面からヨイショ!っと勝手に這い出てきて、マルクの後ろをカルガモの様に歩いて追いかけ出した。
追いかけられるマルクは楽しそうにぴょんぴょんと逃げながら、エキスが鮮やかな手刀で草を刈り取ってくれた場所へとその木々達を誘導すると、みんなそれに従って仲良く順々に横たわっていった。樵が見たら泣いちゃうレベルでサクサクと辺りの伐採はこれで終了である。
それを見ていたカナルとアークとエマの三人は目を最大まで見開いて驚いていたが、ジークは嬉しそうに笑っていた。マルクから話を聞いたところ、以前に大きな魔石を貰った時に、"森の精霊"に感謝されて、それから大体の森はマルクと仲良しらしい。――マルクのジェスチャーでそれを教えてもらったジークは、エキスに手伝って貰いつつ一生懸命に説明するマルクの姿がまるでお遊戯をしているみたいに愛らしかったので、二人一緒に抱きしめて褒めてあげた。
ジークの腕の中でジタバタして喜ぶわちゃわちゃ達は、前よりも少しずっしりと重くなっており、ちょっとづつ成長しているのだと教えてくれた。……もしかしたら、そのうち二人一緒には抱っこ出来なくなってしまうかもしれないな。と自分の非力な腕を少し残念に思いながらも、わちゃわちゃ達の健やかな成長を感じてジークも嬉しくなる。
見渡す周辺、森の中の辺り一面に空きスペースが出来たので、今度はそこにテントを張るか、それとも木材達で家でも造ろうか、と言う話になった時――マルクは『魔法で作る?』と小首を傾げて、エキスは『棍棒が増えた♪』と先ほどの木々を嬉しそうに棍棒に加工し始め、アークとカナルとエマは『て、テントで……』と各自の意見が出た所で、最後にウォーベットさんが『いい案があるよぉ~♪』とプニプニ触手で挙手してくれた。
みんながウォーベットの方を向き、どんな案なのかな?と期待していると、ウォーベットはおもむろに空きスペースの真ん中へと歩いていくと、そこで……モコモコ……ポンッ!と一気に巨大化し、ジーク達の目の前で"スライムハウス"へと変化した。
――ただスライムハウスとは言っても、まだ細かい造形までは出来ないらしく、ウォーベットさんが球体状に大きくなって入口が開いているだけなのだが、それでもジーク達は十分に凄いと感じた。
ジーク達が拍手喝采でウォーベットさんを讃えると『今はこれが限界だよぉ~、次はもっと頑張って大きくなるからねぇ~♪』とウォーベットさんも嬉しそうにプルプルしている。実際に中に入ってみると驚きは更に大きく、微妙に床や壁には弾力の差があり歩き易く、机や椅子等も凄く硬質化していて少し重たい物を置いても全然平気だった。
そして、もちろん各自のベットはウォーベット特製の"最高級ベット"ばかりであり、何処で寝たとしても安眠間違いなしの寝心地であった。……ただ、折角沢山の部屋があるのに、何故か結局みんながジークの部屋に集合してしまい、一緒に団子状態で眠っていたが、――まぁ、それはいつもの事なので特に問題もないだろう。
……えっ?スライムの中にずっと入ってたら捕食されるんじゃないかって?……いやだなぁ、ウォーベットさんはそんなことしませんよ。精々スキンシップの時に全身を甘噛みしてくるだけです。肉食でも草食でもない魔食系スライムなので、基本的には魔力しか食べないのです。
――そんなこんなで、拠点も出来たジーク達は、翌日から本格的に訓練をすることにした。
ただし訓練とは言っても、なんとなく森をフラフラして、見かけた強そうな相手に手合せをお願いすると言うものだ。これにはウォーベットさんとカナルとアークが凄くやる気を満ち溢れさせている。
カナルが索敵と遊撃をこなし、ウォーベットさんがメイン盾の役割と二人の援護、アークが大きな角材でアタッカーと言う、一見すると何の変哲もない分担で魔物を狩っていくのでとても順調であった。
またその時々に応じて、同族を見かけたら1対1で戦うと言う流れが出来ており、ウォーベットさんはこの森に棲む色々なスライムたちをバッタバッタとなぎ倒していく。特に敵のスライムは素早さをメインにして戦うものが多く、ウォーベットもそれを参考にして動きを真似し、新たなるスキルを得ようと模索していた。
カナルとアークは初めは凄く苦戦していた。敵は毒を持つ者が多く、攻撃する時も防御する時も気を付けなければ、その毒で一瞬のうちに勝負がついてしまう危険性があるからだ。
二人は相談をして連携を話し合い、慎重に慎重を重ねて危なげなく戦っていたが、そのうち少し強い敵との長い膠着状態になってしまい、ジークがうつらうつらとしてしまった事で状況は急激な変化を見せた。
――『主が退屈そうにしてる?』『なんとっ!それはいけない。なんとかしなければ!』『戦いがもっと激しい方がお好み?』『そうかもしれない。カナルとアークにもっと頑張ってもらうか』『お手伝いする?』『そうだな。"背中を押してあげよう"』『うん。わかった』――と、わちゃわちゃ達はやり取りを終えると、慎重に戦っていたカナルとアークの二人を、敵に向かって優しく"投げた"。
エキスは物理的にアークを剛速球よろしく投げ飛ばし、マルクはカナルを【風属性魔法】で大体同じ速度に調整して吹き飛ばしたのだが、突然吹き飛ばされたアークとカナルはこれに大変驚いた。
――いや、驚いたじゃ済まなかった。絶叫した。
「「ぎゃあああああああああああああああああ」」
ただ二人が偉いのは、投げられて泣き叫んでいても、ちゃんと相手の魔物の事を視界に捉えており、魔物にぶつかる際にはアークは大上段から角材を振りおろし、カナルは黒い短刀で抉る様にと、どっちも攻撃が出来た事だ。あまりにも酷い絶叫だったので、ジークも「んぁ!?」と驚いて直ぐに目を覚ました。これにはマルクとエキスも感心したのか、今後もこの方法は使える。と頷きを交わし合っていた。
――当然、戦闘が終わるとアークとカナルがプリプリと大きく怒っていたが、そこはジークがちゃんとマルクとエキスに聞いて代わりに説明してフォローする。
「あー。2人が慎重に戦っていることはとても評価できるし、連携も素晴らしいってさ。――ただ、今は折角強い敵がそこら中に居て、常に自分の全力を試せる機会だから、もっと違う戦い方をするべきらしい。身体的にも魔力的にも自分の最大限の力で相手にぶつかって行く事で、色々と見えるものがあるし成長も早くなる。例え、腕が飛ぼうが内臓が『こんにちは!』しようが、マルクがいればすぐに治るから心配しないでぶつかって行って欲しいんだって。あと、もしもの時はちゃんとエキスが神懸り的なフォローで救助に入ってくれるみたいだよ。――ほらね、マルクとエキスが任せろって言ってるでしょ?」
「「「………」」」
アークとカナルはそれを聞いて凄く嫌そうな顔をしていたが、自信満々にぴょんぴょんしているマルクとエキスを見て、どこか諦めたように次の戦いに赴いていった。
そして、戦闘を繰り返す度にエキスとマルクから細かな指導が入り、二人とも動き方と武器の振り方、あと【身体強化】や【風属性魔法】を使っての緊急回避方法などを教わっていく。
今までは魔法も大して使えなかった二人だが、常に瀕死と全力の狭間で戦うこのトレーニングでかなり鍛えられ、直ぐに新しいスキルもいくつか覚えた。それ自体は大変に喜ばしい事なのだが、実際アークは何度も身体に"大穴"が空いたり、カナルは"手足"や"首"が千切れかけると言う状況に陥り、決して笑えるような余裕はなく、何度も何度もマルクとエキスのお世話になり、精神的にも肉体的にも急激に成長したのを感じた。強くならなきゃ生きていけないと言うこの状況は、本当に成長の度合が凄いらしい。
その甲斐もあり、段々と二人のケガも少なくなって、動きも見違えてくるのをジークは感心して見ていた。因みにウォーベットさんはほぼダメージ0であり、二人が治療中も一人で狩りを行っている程勤勉で優秀であった。戦闘回数も一番多いので成長もサクサクである。
――後々、この日の事を振り返った二人が語るに、『あの時は本当に地獄だった』と、思い出しては泣き笑っていた。
……一方、そんな状況を微笑ましく見ていたジークの隣で、エマはドン引きしていた。
「(……えっ?これは本当に訓練なのですか?ご、拷問の間違いでは?――ええっ!まだ頑張っちゃうのですか!?し、死にかけたばっかりなのだから、もう少し休んでも――って、やるんかーい!お、お二人はまだ普通の人間だと思ってたのにっ!やっぱりあなた達も『化け物』ですかっ!!!)」
元魔物のホムンクルスが一番この訓練の異常性を認識し、人間的な感性を持っていると言う事がこのパーティ『目覚めを待つ者』の面白いところだ。
――だが、油断してはいけない。そんなエマも"もう"『目覚めを待つ者』の仲間の一員なのだから……。
アークとカナルが何とか巨大な熊の魔物を倒すと、その後ろから直ぐに"ガサゴソ"と森の木々のざわめきが聞こえて来た。その音はかなり広い範囲から聞こえてくることから、どうやら今度の相手は数が多い事が察せられる。
そして、カナルやアークが息も整わないままに構えて、ウォーベットが自然体で待ちかまえていると、ひょっこり顔を出してきたのは何処かで見た様な真っ白い骨の顔の――敵は『スケルトンソルジャー』であった。
それも、続々と出てきては隊列を組みながら行進して来るので、元はここにやってきて死んだ何処かの兵士達だったのかもしれない。
――すると、そんなアンデット達の登場に、アークとカナルとウォーベットはチラッとエマの方を向き、ササッと後ろへと下がっていく。
「(……えっ)」
いつの間にか"同族"はその人の担当。――みたいな流れが出来ていたので、自ずとエマへと敵は譲られたみたいだ。この空気は行くしかない。
「(いや、あの、私は別に良いんですけど……なんて、言える雰囲気じゃないよね。ハハハ……)……よ、よーし!私の出番ですね!元リッチとしての実力をちょうど見せたいと考えていたんです!"いくらでもかかって来なさい"!!」
そう言うと、ぞろぞろと100人程出てきた『スケルトンソルジャー』達に向かって、エマは華麗に【火属性魔法】で巨大な火柱を8本も出し、方陣陣形を組むそいつらを一気に囲んで瞬く間に焼き尽くした。
森の中でそんな強力な"火"を使ったにもかかわらず、それは範囲内だけを灰燼に帰し、辺りには一切燃え広げることも無かった。流石は元『魔道王』と言うだけの、完璧なる魔法制御である。
「「「おおおおおおお」」」
「はぁ、はぁ、はぁ、ど、どうですか。私もこれくらいなら……」
その見事な魔法にジーク達全員から歓声が送られ、その小さな身体で雄々しく頷きを返して仁王立ちするエマだったが、……実は少しだけ無理をしており、その顔色は少し悪く、肩で息をし、魔力枯渇の症状が少し見られた。
――そして、そんな状態に追い打ちをかけるように、他の場所から"ガサゴソ"と先ほどと同じような音が鳴り響く……。『いくらでもかかって来い』と言うセリフがマズかったのだろうか、おかわりが来てしまったのだ。
「えっ。まだこんなにいたんですか。もう無理……」
と思わず素直な心の声がダダ漏れてしまったが、100人近い『スケルトンソルジャー』の再登場には流石の元リッチさんと言えども、即連続で相手をすることなど不可能である。せ、せめて少し休憩をしなければ……。
――だがしかし、そんな甘えた思いは、無情にも肩をポンポンと叩かれて消え去り。叩かれた方を見ると、マルクが青い液体の入ったポーション瓶を差し出してきていた。
「……こ、これは『魔力回復ポーション』ですか……えっ、が、頑張れってこと、ですよね!は、はい!分かってます!!任せてください!"これくらいなら全然余裕"です!!はあああああーーとりゃああああー!!」
気合を入れ直して再度【火属性魔法】を放つエマは、またも華麗かつ見事に『スケルトンソルジャー』達を消滅させてみせる。エマの両足は既にガクガクだ。――ただし、決めポーズだけは忘れない。
「「「おおおおおおおおおお」」」
「はぁはぁはぁ、はぁ、こ、これで終わりですか――んっ?」
――ガサゴソ。ひょこ。
2度目も完璧に倒し切ったエマが草音のする方を向くと、そこにはまたまた『スケルトンソルジャー』が現われた。目と目があった瞬間にブワッと冷汗が噴出したのはここだけの秘密だ。
「(えっ。なんですかこれ。もう無理ですって、ほんっきで無理ですから、ぜったいにむりですからぁー!!)」
内心で大量の汗をかきつつ、しかし横を見ると、マルクが再び"青いポーション瓶"を差し出してくる。……エマは、じっと数秒間その瓶を見詰めると、ある種の覚悟を決め、それを一気にグビッ!と呷るように飲み、魔法を、使用した――が。
――ガサゴソ。ひょこひょこ。
「ヌオオオオオオオオオーーー!!!」
小さいメイドさんはその後10回程続く連戦を繰り返し、精神力の全部を使い果たす程に真っ白に燃え尽きて、泡を吹いて倒れるまで頑張った。
しかし、倒れた夢の中でも『スケルトンソルジャー』が襲い掛かって来たので、今回の事で奴等が完全に嫌いになったエマだった――。
★★★
またのお越しをお待ちしております。




