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第三十四話 旅立ちと成長

『暇潰したい神さま。』にアクセス頂きまして、ありがとうございます。


良かったら今日も暇潰しにお使いください。どうぞ――。

★★★


 広大な平原をゆったりとラージスライムのウォーベットに乗りながら、ジーク達は"次なる街へ"向かっていた。しかし、そこに明確な指標はなく、なんとなくどこかの街に辿りつけばいいなーくらいのフワフワした旅路であった。


 時には森を抜け、途中で見かけた洞窟に入り、地底の湖で癒されたり。時には岩山を超え、そこに住む『ロックリザード』の集団と一戦交えたり。それはそれで刺激的な日々を過ごす。


 だが、ジークはとても楽しいと感じていたけれど、一緒に旅をしている仲間の"カナル"と"アーク"はどこか『ポルフィオジナ』の事が気になるのか、時々上の空である様子を見せた。


 

「あー、二人ともやっぱりまだ気になる?」


「……コドモタチ、シンパイダ」

「ジーク様。俺たち悪い事なんて、す、"少し"しかしてないのに、なんでこんな目に合ってるんだろうな」


「その悪い事を、"少し"したからじゃないかな」


「……フハハ」

「もうっ!俺は真面目に言ってるんだぞっ!」



 ジークの言葉にクリーム色のプリンヘアーのカナルは顔を赤らめてプリプリと怒りを表した。



「……カナル、アキラメロ」

「だってっ!マルクとエキスは街を守るためにいっぱい頑張ったのに!俺とアークだって色んな手伝いをしただろっ!なによりジーク様が一番――」


「あー、僕の事はいいんだよカナル。マルクもエキスもあれくらいは余裕だから気にしてないと思う。でも、二人には済まない事になって申し訳ないよ。折角いい居場所が出来たと思ったのにね。」


「……オレハ、タビガスキダゾ?」

「……俺も、孤児院から追い出される形になったのが納得いってないだけで、こうしてみんなで冒険するのは好きだからいいんだ。ジーク様達が一緒ならそれでいい。ただ、あの時のジーク様はどう見ても辛そうだった」


「………」


 まさか、そこまでカナルが自分の事を見ているとは思わず、ジークは面食らった表情をして、少し「ぷっ」っと吹き出した。それに対して、またカナルはムッとするも、ジークは今度はすぐに謝って、そして「ありがとね」とお礼を言う。カナルはジークが心からそれを言っていると感じ、頷きを返すと嬉しそう頬を赤らめて空を見上げた。


 ダンジョンマスターに捨て駒のように扱われた心良き女性型リッチさんの"エマ"の事とか、思っていたよりも知り合いの冒険者が亡くなったりケガを負っていた事とか、親を失い脇道で蹲るように寝ていた子供達とか、悲しい事、どうにかしなきゃと思った事が積み重なって、思ってた以上に無理をしていたのだと今になってようやく気付いたのだ。



 あの街でジーク達は孤児院を作り上げ、完成を祝った後――今回の騒動の責任を追及された。


 知らない内に、教会の関係者が中心になって街の住人達を巻き込み、被害を被って損をした者を煽り、感情に訴えかけてジーク達に大勢が詰めかけて来たのだ。


 ――事の原因は、『ダンジョンクリスタル』を手に入れた事の情報を上手くかき消せなかったこと。教会は『ダンジョンクリスタル』を"不浄の塊"であると断じ、今回の『魔物の氾濫(スタンピード)』はそれによって引き起こされたのだ!と噂を流したのだ。孤児院建設などで忙しくしていたジーク達には、秘密裏に広がるソレの動きに気づくことが出来なかった。


 気づいた時には孤児院に多くの者が詰めかけ、このままでは折角完成した大事な居場所が壊されでもしてしまいそうだった……。


 噂を流した教会、噂を信じた街の住人、噂に乗せられる者達、それら全てを強制的に"二度と無駄口を叩けない様に黙らせる"事は簡単だったが、それでは何の為にドラゴンゾンビや魔物と戦ったのかと、助けた意味がなくなってしまうではないかと。ジークは思いとどまった。


 それに孤児院でこれから暮らすことになる子供達や孤児院の院長を任せることになるコロコさん、孤児院の建設に関わってくれた、エルフのディリさんやドワーフのボゼルさんと両クランのメンバー達、そんなみんなに迷惑をかけてしまう。彼らが街で住みにくくなってしまう。


 ――だから、全ての汚名を被り、ジーク達は街を去ることにした。


 後の事を、コロコさんとディリさんとボゼルさんに任せて、声の大きさと影響力だけが強そうな教会のお馬鹿さんに、誰を敵に回しているのかを思う存分"知らしめた"後に、『正しき古木(オルト)』と『酒狂いと暴虐者(ドランカー)』の両クランの方々にちょっとだけ"演技"に協力してもらって、追い立てられるように街を出てきたのだ。


 コロコさん達は、ジーク達がその計画を話して『出ていく』と告げた時は、信じられない程に泣いていた。「何から何まで助けてくれたのに、そんなあなた達に恩を仇で返すしかない私たちとこの街はなんて愚かなんだろう――ごめんなさい。本当にごめんなさい――」と泣き崩れたのだ。そんなコロコさんを支えながら、ディリさんとボゼルさんは涙ぐみつつ「任せろ。絶対に守り切る」と誓ってくれた。


 コロコさんは、最後に二度とこんな事は繰り返さないと言った。孤児院の名をあの狐耳剣士さんの名前から頂いて、"一生消えない戒め"にするのだとか。今更だけど、"アーリー"さんって名前だったんだな……面白い人だったのに、助けられなかったよ。『良い奴から死んでいく』とは誰の言葉だっただろうか。それを凄く思った。


 

 ――そんなこんながあって、今ジーク達は自由連合国『サンアシモロ』から帝国『ナウラステル』への方向にだいたいで向かいつつも冒険を楽しんでいた。この国を出る事にしたのは、『ポルフィオジナ』は大きな街なので情報が他の街に行くのも早いだろうと思ったからだ。好き好んで面倒ごとに首を突っ込みたいわけではないので、人があまり通らない道を中心に進んでいる。



 そう言えば、最も大事な事を伝え忘れていた。前回のドラゴンゾンビ狩りによって、経験値的なものを大量に手に入れたわちゃわちゃ達が、なんと『進化』したのだ。進化してもわちゃわちゃ達の可愛さは変わらないので、Bの連打はしない。


 どっちかと言うと、"成長"と言った方が的確かもしれないけど、エキスは"白い光"に、マルクは"黒い光"に、それぞれ急に包まれて、一瞬で大きくなったのだ。


 エキスは280mlのホット飲料スタイルだったのが、550mlぐらいの2倍のサイズになり、"あんよ"も少し伸びたのでピョンピョンとジャンプしなくてもスタタタタ―っとだいぶ走れるようになった。――可愛いから今後もぴょんぴょんしてもいいのよ?


 そして、進化の影響なのかスタタター!をすると塹壕みたいな窪みができ、腕を地面に降り下げるとそれだけで巨大な穴が空いた。たぶんここに雨でも貯まれば"湖"となるだろう。まだ少し力の調整が上手くいってないらしく、そこかしこで"自然破壊"に勤しんでいるが、可愛いので許して欲しい。


 一方マルクも進化をして、190mlのOLジューススタイルから500mlの良く見る細身な大きさになった。身体に走る蒼穹の線は前よりも鮮やかな感じがして、とても綺麗だ。黒い身体によく似合うね。そして、大きくなったからか少しスカート状に腰の部分が広がっていて、恥じらいも出てきたのであろうか、だいぶ動きが大人しい。お淑やかになっている。


 ただ、同じく手足が伸びたので一応スタタタタ―ッとピョンピョンはしていて、自分の動きを確かめていた。一緒にエキスと仲良くピョンピョンする様は以前と同様に無邪気で大変可愛らしいと思います。そして、進化したことによって"魔法"も前にも増して強力になっているみたいで、たぶん【水属性魔法】を使って低級下位の水を出してみただけなのに、予想以上にその放水が激しかったらしく、足の踏ん張りが効かずに、マルク自身がぴゅーーっと飛んで行ってしまった。――みんな心配して急いで追いかけたけど、飛んで行った方のマルクはとても楽しそうだった。


 あと、極めつけはエキスが空けた大穴に、マルクがちょっと局地的な豪雨を降らせてみたら、"湖"がほんとに出来てしまったのには驚いた。広大な平地にわちゃわちゃ達が数分でやってくれましたよ。野生の動物たちはこれで水の心配が少しの間なくなるぞ。やったね!


 ま、自然に出来たものではないので、その内干上がってしまうかもしれないが、その責任までは負えない。


 そんな二人を見ていて、ウォーベットさんが微妙にプルプルしていたけど、どうやら少し羨ましいらしい。『もっと強くなりたいよぉ~』っと言っている気がするので、旅の途中で訓練につき合うのはやぶさかではない。いつもウォーベットさんにはみんなお世話になっているので積極的に協力していく所存である。



 ――そんな感じで、色々確認していた時だ。ジークはふと気になることをそのまま口に出した。


「そう言えば、エキスの手に入れた『クリスタルさん』とかよく見てみたいな。他にも今回でなにか手に入れたものがあればオススメとかある?マルクもエキスもなんか色々とお宝を持ってそうで楽しみだな」

 

 『なにっ!楽しみですとっ!』っとジークの言葉にマルクとエキスは急な反応を見せると、急いで『お気に入り物箱』をガサゴソしだす。


「コンボウ、オオイ」

「マルクは魔石関係だなっ!大小様々で色とりどりだぜっ!」


 カナルとアークも、マルクとエキスがポイポイっと出して見せる品々に目を引かれているご様子。そして、二人が言う様に、それぞれ特徴があるみたいで、エキスは『ヒノキスティック』『クリスタルさん』を中心に棍棒関係(?)の品物が沢山ある。"ちょっといい形の木の枝"だったり、"巨大な石の柱"だったり様々だ。また、マルクも色々な色の魔石や、"魔石っぽい石"とかどこから拾って来たかは分からないけれどいくつか"宝石"も見られた。二人はとても嬉しそうに色々見せてくれたのでジークは2人をぎゅーっといっぱい褒めてあげた。抱きしめられた二人は少し大きくなったもののまだまだジークの腕に収まるサイズで、嬉しそうにジタバタしてからぎゅぎゅーっと抱きしめ返してきてくれる。ほのぼのして癒されます。





 ――っと、その途中で、ジークはマルクとエキスが出した、"とある二つの物"に目を奪われた。



 それは偶々、エキスとマルクが広げた品物が隣り合っただけなのだろうが、それでも運命的な感覚をジークに抱かせる。



 ――片方は魔石だ。とても赤く、どこか宝石をちりばめた様なキラキラとした輝きをもつ。

 もう一方は、白く棒状の物だ。表面はツルツルしており、肌触りがとてもいい。だが、一目でジークにはそれが"骨"であること、それも肩関節から肘関節までの"上腕骨"であることが分かった。



 どちらも、どこかで見た事がある様な気がした。


 そして、ジークの目線に気づいたマルクとエキスは、ぴょんっとジークの腕から離れると、それらの品を持ってジークへと掲げて見せる。そのつぶらなキャップ頭が言葉を話すことは無いものの、ジークは2人が何を言いたいのか直ぐに察した。



「"エマ"、なんだね――」



 いつの間に回収していたのかは分からないが、二人が掲げていたのは、『魔道王(リッチ)』と言う魔物の珍しくも女性型。ダンジョンマスターによって命を散らされた"エマ"の"魔石"と"上腕の骨"だった――。





 

★★★

またのお越しをお待ちしております。

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