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第三十話 エマの気持ちと『目覚めを待つ者』

『暇潰したい神さま。』にアクセス頂きまして、ありがとうございます。


良かったら今日も暇潰しにお使いください。どうぞ――。


追記、サブタイトル微修正。

★★★


 女性型リッチのエマは、各ダンジョンにマスターからの作戦を伝えた。


 基本的には『低位ダンジョン』『中位ダンジョン』『上位ダンジョン』この3ヶ所で一斉に『"魔物の氾濫(スタンピード)"』を起こすだけである。簡単簡単。


 今、マスターが各30層からなるダンジョンに魔物を奥から産み出して、数をポコポコ増やしている筈。そしてダンジョン内の全ての魔物も、私からの作戦発動により、今頃みんなが奥へと集合しているだろう。


 たぶん、珍しい事に各ダンジョンの20階層ぐらいまでは魔物が一切いなくなって、その代りその下の階層は見た事もない程に、魔物でぎゅうぎゅうになっていくことだろう。

 


 私たちは前々から『"魔物の氾濫(スタンピード)"』の練習を重ねてきた。マスターは本気で"神"を殺す事を目標にしているらしいので、その為の下準備には余念が無かったのだ。以前から小規模な氾濫をダンジョン内で起こしては、各ダンジョンの指揮官クラスの魔物に度々練習をさせ、今では少し"お馬鹿"な魔物達でも『あっちへ突撃ー!』と言えば"あっちに突撃"して、『こっちに突撃ー!』と言えば"こっちに突撃"するくらいには、意識が浸透して出来るようになった。


 ――えっ?何をバカなこと言っているのかって?……いやいやいや、本気で最初の頃なんか、みんな本能のままにしか行動してくれなかったんですよ?凄ーく大変でした。……指示出す前に四方八方に散らばってて、気付いたら誰も居なくなってた時には本気でキレましたね。今ではいい思い出です。


 だから今の私たちならば、外へと続く街の4ヶ所の門を占拠して逃走する者を無くし、圧倒的な数の暴力で包囲した後は街の中心に向かって一斉に攻める――と言う事も出来ます。包囲されて前後左右全てから魔物が押し寄せる恐怖と言うのは、敵にどれほどのダメージを与える事になるのでしょうか。たぶん成功したらヤバいことになります。


 ――まぁ、『化け物達』がいるので、たぶんそれは無理なのでしょうけど……。


 マスター考えていたこの街の攻略方法では、今はもう通用しないと私は予想している。だが、それを伝える事はしない。なぜなら、私は盛大に失敗して欲しいからだ。


 復讐を目指すマスターにとっては残酷な話かもしれないが、私はスライムやゴーレム(?)達と一緒に楽しそうにするジーク達の姿に、少し心を動かされていた。『クリスタルさん』と同じように、自分も本当は――と思ってしまっている。だから、マスターにも復讐だけじゃない"道"を見て欲しいし、もっと私たちを見て欲しい。楽しい事を見つけて一緒に生きて欲しいのだ。……盛大に失敗すれば、もう神に挑もうなんて思わなくなるよね?





 ――でも、そんなのは過ぎた願いだったのでしょう。……私はその時はまだ知りませんでした。


 マスターがその"失敗を無くす"ためにDP(ダンジョンポイント)を使って、『ダンジョン特製の"爆弾"』と言う物を大量に用意していたことを……。


 そして、マスターの"任意"で爆発させることが出来る"それ"は、"トラップアイテム"の一種であり、それをマスターは魔物達に配って食べさせました。――もうそれだけで、彼が何をしようとしているのか、分からない者はいないでしょう……。





 ――ねぇマスター、私たちはあなたの"道具"でしかないのでしょうか。


 ……私たちはあなたと一緒に"生きていたい"と、こんなに願っているのに。


 あなたが復讐に駆られ、憎し怨敵と評す"神"と、あなたの行いのどこに違いがあるのでしょうか。


 ……その"爆弾"と言うのを抱えたまま、戦場に送られる私たちは、ちゃんと生き残れますか?


 私がこの思いを抱く時にはもう、私はあなたにそれを伝えることが出来ない状態かもしれません。


 ……それでも私は、あなたを憎む事ができないでしょう。ただ少し、寂しくなってしまうとは思います。


 産み出された喜びと、平和だった頃のダンジョンでの日々、それらの思い出を大切にします。


 最後のその時まで――。



★★★



 『迷宮都市ポルフィオジナ』のダンジョンが人知れず準備を進める中、ジーク達は『低位ダンジョン』からの帰り道であり、街の中心にある冒険者ギルドへと向かっていた。


 いつものように、ジークはラージスライムのウォーベットに乗り、わちゃわちゃ達はジークに引っ付いてわちゃわちゃしている。今はジークの両肩にそれぞれがぴょこっと座っていて、時々ジークの耳をちょんちょんと突いてきて、ジークが微笑みながら「なーにー?」と突かれた方を向くと、首を横にフルフルして『なんでもないよぉ~♪』と嬉しそうにイタズラして来た。そして、その隙も逃さず、もう一方がガバッとジークの後頭部に抱き付く。と言う遊び(?)をしている。


 そんな様子をウォーベットを挟んで両脇にいるカナルとアークも微笑ましく思いながら歩いていた。



 ただ、そんな彼らを良く思わない者も多く、時々不審な視線や悪意の様なものを感じる。だが、今ではそれにも慣れてしまったこともあり、あまり気にしないようになった。そう言う視線などは特に冒険者達から多く送られてくるものであり、冒険者ギルドの中に入ると今以上に増えるのは間違いないのだ。


 そんな予想通りに、ジーク達がギルドの中に入ると、一斉に入口へとギョロっと視線が集中してザワザワとした喧騒が増えた。色々な所から話が聞こえる。



「あれがそうなのか?」

「ああそうだ。あいつらが【エリクサー】を発見したって奴等だ」



「『追い詰める者達(イシュカリ)』がまた返り討ちになったって?」

「あいつらもバカだよなー!いい加減に諦めればいいのによー」



「見ろ!今カナルちゃんが俺の事を見たぞっ!」

「お前、ちゃんと目がついてんのかよ!どう見たって俺だろうがっ!」

「いや、俺だろ?」「俺だ」「俺に決まってる」……その他複数。

「はぁー、カナルちゃん、アホ可愛い。持って帰りたい。」

「「「お前抜け駆けしてみろ?明日には土の中で眠ることになるぞ?」」」

「ひぃぃぃぃぃ」



「あー今日もどっかの馬鹿がケンカ吹っかけてくれないかなー。俺はあの巨大な『ダンジョンクリスタル』の美しさに、すっかり魅了されちまったよ」

「止めとけ止めとけ。それならダンジョンに行けばいい話だ。」

「かぁーお前は何も分かってないな!戦いの中で振り回される『ダンジョンクリスタル』が良いんじゃねえかっ!ダンジョンの止まってるクリスタルなんて、態々見たいなんて言わねえよ!」

「じゃあ、お前が直で飛び込んで来いよ。一番の特等席で見えるぜ」

「――その手があったか」



「"アレ"の情報を一切漏らさないんだろう?金は積んだのか?」

「ああ、それでもダメだったらしい」

「ギルドからの圧力には?」

「そっちも全然」

「じゃあ暴力は?一緒に行ってみっか?」

「「「死にたきゃお前一人で行って来い」」」



 ――などなど。それ以外にも至る所でジーク達関連の事が噂され、時々はいきなり臆面もなく聞き出そうとする輩もいたが、そう言う相手には四肢破壊込みでエキスが『ダンジョンクリスタル』を味わわせてあげた。――ほら、今も。


 ……だが、痛い思いをしているにも関わらず、何度も来る奴がいるから不思議である。『クリスタルさん』には【魅了】の状態異常効果でも付加されていたのであろうか?一時期が呪いの武器だったからありそうではあるけど……。



 拡声器さんが頑張ったのか、本当にたった一日で街中に拡散してしまった情報のおかげで、最近では『上位ダンジョン』へと潜る人がかなり増えた。『あんな子供たちが行けるのだから!』と、今では『低位』や『中位』に通っていた人たちがみんな『上位ダンジョン』に挙って集まってしまっている。人数が増えたことによって、魔物が少なく(・・・・・・)なったようで、人的被害も今の所大きいものはないのだそうだ。元々高品質のアイテムが多いので儲けも多く、今街は『上位ダンジョン』のフィーバータイムである。



「ふぉふぉふぉ、来おったか」


「コンニチハ」

「爺ちゃんっ!今日も俺、レベルが上がったぜっ!だいぶ森でも動けるようになったっ!」


「ふぉっふぉっふぉ。そうかそうか。頑張っているみたいじゃのぅ。カナルもアークもだいぶいい顔をしとる。……だが、世間はお主等のおかげで『上位』への関心が高まっておると言うのに、お主等はそれに引き換え『低位ダンジョン』で基礎的な冒険者活動か。分からんものじゃのぅ。……またなにか企んでおるのか?『目覚めを待つ者(スリーピーヘッド)』の"マスター"よ」


「あー、僕は何も。僕達はただ冒険を楽しんでいるだけですから。――それより、今日も買い取りお願いします。"ポンデさん"」


「ふぉふぉふぉ。そうかそうか。どれ、見せてみぃ……どれどれ」


 ジークは今日の収穫物である、少し良さそうな剣や杖を冒険者ギルド22番窓口の白髪ライオン型お爺ちゃんの"ポンデさん"に渡して鑑定してもらった。基本的に宝箱から手に入れた"武器防具"やアクセサリー"は、ギルドでいくらの値が付くのかを聞いてから、周りの商人へと持って行って値段を比較し、高く買い取ってくれる方に売るが、『低位』で出るものはそこまで高品質ではないので、今は構わず売ってしまおうと考えている。


 あ、それからジーク達はようやくパーティと言うモノの申請をすることにした。パーティ名は『目覚めを待つ者(スリーピーヘッド)』と言う事になった。カナルが名付け親なのだが、僕が長い間ずっと寝たままだったかららしい。グヌヌ、反論できない。


 勝手に組んで勝手にパーティを名乗る事も出来るが、ギルドに申請して周りに周知させた方が優遇され易く、有名になると余計ないちゃもんもつけられ難くなるのだとか。ジークはわちゃわちゃ達とウォーベットがいるから安心だけど、カナルとアークにも余計な"火の粉"が掛からないようにする為には、ちゃんと申請しておいた方がいいと、ジークは判断したのだ。




 結局、やはり剣や杖の値段はそこまで高くは無かった。でも、予定通り気にせずに売る事にする。

 その後は少しだけ、白髪ライオン型お爺ちゃんとの雑談だ。ジークはギルドの、お爺ちゃんはジーク達の、動向をそれぞれ互いに探っているのだ。


 『ユパジルバーバ』での一件でも分かった事だが、冒険者ギルドと言うのは冒険者を守る為だけ(・・)の組織ではないと言うことだ。色々な思惑があり、時には冒険者に対しても牙を剝く。油断だけはしていけないし、情報の取捨選択と管理はしっかりしておかないと痛い目をみるのだ。


 特にこのパーティには、熱血直情型猪突猛進系のお馬鹿さんとアホの子、戦闘面ではマルクとエキス、移動と夜営と癒し担当でウォーベットさん、と言うメンバー構成になっているので、ジークの担当は自ずとリーダー役として"指揮官的な囮"になり、情報戦や微妙な駆け引きをメインに戦いつつも、時と場合により戦闘面でもフォローする感じで、計らずとも『万戦不死(エターナル)』にいる"器用貧乏"の代名詞――"軽戦士"アイードと同じ様な役割になってしまった。彼ほどには上手く出来ないが、みんなを守るためにもジークは頑張る所存である。



 ――そんなこんなで、雑談をしていると、わちゃわちゃ達を攫おうとした不届き者が"また"いたようで、アークとカナルも混ざってボコボコにしていた。



 ジークも騒ぎに目を引かれ犯人の方を向くと、"その人"を見て堪らずため息が出てしまう――。




★★★

またのお越しをお待ちしております。

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