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第二十三話 ジーク君と悪夢。

『暇潰したい神さま。』にアクセス頂きまして、ありがとうございます。


昨日は、全然頭が働かず、一向に筆が進みませんでした――。フラフラします。

徹夜してなんとか今、更新できましたが、色々見直し、出来てないです。誤字とか酷そうです。ごめんなさい。

寝て起きたら少しづつ直します(希望的観測)。

そんな感じで申し訳ございませんが、良かったら今日も暇潰しにお使いください。

★★★


 —―コンコンコン。


「失礼しますよ、オンガさん。――おっ、べランドもいたのか」


「あらぁ~!どうしたのリンクス。まだ『新人講習会』の初日でしょぉ~?帰って来るには幾らか早すぎるんじゃないのぉ~ん?」


「いやはや、案の定予定外の事が起こりましたよ。街を出てたった十分ですよ十分 !これは"対処"せざるを得ないかと――」


「あらぁ~ん、詳しく聞きたいわねぇ~。あの子達は、今は下にいるのかしらぁ~ん?」


「はい。この後、とあるものをもってここに来てもらおうかと思ってます」


「あららぁ~、そうなのぉ?……ふむ、ならべランドォ~、さっきの早速準備し始めてくれるぅ?予定より早いけど、物は揃ってるはずよぉ~ん」


「分かりました。じゃあ俺達は準備をしてきます。お前らいくぞ。—―リンクス、また後でな」


「ああ、こっちはゆったりと話してるから、急がなくてもいいぞ。ただ、抜かるなよ」


「分かった。任せておけ」


「……それでぇ~ん?何が起こったの~?」


「はい。実は――」



★★★



 マルクとエキスが1mの薄紫色の魔石に乗って、コロコロして移動しながらギルドへと向かっていると、周りの冒険者も街の住人もみんながこちらを凝視してくる。きっとマルクとエキスの愛らしさに目を惹かれているのですね。分かります。


 エキスが持っていた"ヒノキスティック"はコロコロする時に邪魔になりそうだったので、今はカナルが持ってくれている。なんか本人カナルが目を血走らせて「ぜひ俺に持たせてください!死ぬほど持ちたいんですっ!!」と凄い圧で迫って来たので、仕方なく渡してあげたのだ。カナルがそんなに"ヒノキスティック"好きだとは思わなかった。また今度ゴブリンを見つけたら、是非ともカナル用も確保してあげよう(使命感)。





 色々な意味で周囲の注目を集めながら、ギルド内へとジーク達が入っていくと、これから仕事に向かうであろう冒険者の群れが擦れ違って一斉にギルドを出て行った。


 この時間帯、普段ならば忙しく5つの窓口はどこも長蛇の列が出来ている筈なのだが、今日はとある一つの窓口にだけ誰も近づこうとしていない。一体何がどうしたのだろうか?……とジークが奥を覗くと、そこにはミアさんが"夜型形態"に"朝から"なってしまっていた。――さすが冒険者達、危険なモノを避ける習性が極まってるね。


 ただ、ジークからすると、その状態のミアさんは無理してる感じで心配になるというだけで、危険などは露ほども感じない。



「リンクスさん。僕、少し声を掛けてきていいですか?」


 ジークがそう言うと、リンクスも『誰に?』とは聞き返しては来なかった。


「そ、そうか……頼んだ。――じゃあ、俺は一足先にギルドマスターの部屋に行って来るよ。都合がついたらジークもその子達と魔石をもって来てくれ。あ、その前に、三人とも今日は急な事ですまなかった。カナルとアークは俺らが報告している間、良かったら酒場の方で先に飯でも食べててくれ。ギルドからの奢りだから好きな物を食ってくれていいからな。……ギルドマスターの部屋に行くのは、俺とジークだけでいいだろう?あの人、部屋に入って来た者には容赦なく身体触ってくるからさ、被害者は少しでも少ない方が良いと思うんだ……」



 どうしよう、そんな話聞きたくなかった。凄く行きたくないです。



「「「………」」」


「あ、あと、今日はここで解散ってことにしよう。『新人講習会』は一日ずらして、明日同じ時間に南門で集合でどうだ?」


「……ワカッタ、オレ、ソレデイイ」


「お、俺はジーク様の奴隷だから!一緒に行かないと――」


「あー、カナルも酒場で待ってていいよ。危険だし、お腹も減ったでしょ?」


「で、でも!俺っ!」


「ギルドマスターは体臭もキツメだよ?部屋に行ける?」


「どうか酒場で待機させてくださいっ!!」



 一言でカナルも納得してくれたので、とりあえずはミアさんへ挨拶をしてから、ギルドマスターの部屋に嫌々行こうと思う。



 ――案の定、近づいたミアさんは、とても虚ろな表情で目の奥は死んだ魚の様になっている。夜の時間帯に強面冒険者の髪を引っ掴んで、とんでもなく暴言を撒き散らしていた時と同じ状態だ。—―えっ?しっかりと聞いているじゃないかって?……やだなぁー、ちょっと何を言っているのか分からないよぉ。――閑話休題。


 さて、ではとりあえず前回と同様に『体力回復ポーション』を飲んでもらって、まずは元気になってもらおうかな。


 ――と言う事で、ミアさんの目の前にポーションの小瓶を置いてみたは良いんですけど、それがどうやら今回はダメだったみたいで、ミアさんが突然泣き出してしまった。



「(ぼ、僕、なにかやっちゃいけない事したのかな!!!)み、ミアさん!えっ!大丈夫ですかっ!?」



 ジークが声を掛けると、ミアさんはカウンターに蹲まり、本格的にガチ泣きの体勢に入ってしまう。


 当然、辺りには他の窓口にギルド職員と、その受付に並ぶ列を成した冒険者達がこっちを見ていた。


 そして、かなり複数の男性達が、突然指をポキポキ鳴らし始めたり、オラオラする準備をしだしている。



 —―あれ、これ死亡フラグじゃないかな?


 目の前の女の人を泣かしてしまったと言う混乱と、周りのむくつけき男達から発せられる青筋浮かべたプレッシャーに冷汗が止まらない。『ち、違うんだ!俺は悪くねぇ!!』と言っても、いったい何人の人がジークの言を信じてくれるだろうか?――いや、全く信じまい。


 たぶん、なにかしら、知らない間に傷つけてしまったのだろう。

 ……何気ないたった一言とか、仕草だとかが思いもよらない結果を引き起こしてしまう事って時々あるからね。そして、そういう時は甘んじて罪と罰を受けいれる方が解決が早い。と言う処世術をどこかで聞いたことがある――要は、『速攻で謝れ』だ!!この方法に限る!(この方法しか知りません)。



「ミアさん!ごめんなさいっ!!」


 ジークが腰を90度に折ってそう言うと、ミアさんは首をブンブンと横に激しく振った。


 ――あの、それって『違うの!あなたは何も悪くないの!!』と『そんなので謝っているつもりなの?絶対に許さないからっ!!』のどっちなんでしょう。


 ただ一つ言えるのは、周りで見てる人達の比率で言うと、8割くらいは後者として捉えてるようだ。

 ……アハハハ(白目)。


 既に、青筋浮かべてあったまってる方々は、ジークを取り囲むような肉壁となって周囲30cm程まで近寄って来ている。一方、こんな時にジークを守ってくれる筈のマルクとエキスはと言うと、ジークへと詰め寄る男達の列整理と人員誘導要員としてなんでかテキパキと働いていた。……因みに彼らは『列に並んでください!』『最後尾はこちらです!』と言ったプラカードを掲げているけど、――君達それはどこから出したのかな?



 ――もはや辞世の句を詠む程の時間しか残されていない感覚でジークが頭を下げていると、突然、ミアさんがガバっ!と顔を上げ「ぢがうっ!」と叫びながら、カウンターに向かって90度腰を折っているジークの後頭部をガシッと鷲掴みにして引き寄せた。



「「「ひぃぃぃぃぃぃ」」」



 ジーク+過去にミアさんに泣かされた経験者らしき者達の悲鳴が轟く中、ミアさんはジークをそのまま抱きしめて「ぢがうのっ!ぼーじょん!!嬉じがったのっ!」とポーションを見せながら、何度も鼻声で繰り返す。目元を真っ赤にして必死にそう言うミアさんに、見ていたみんなが『ぷっ』と少し吹き出してしまうのはしょうがない事で、ギルドの中は最終的に笑い声で包まれた。




 ――そして、みんなが笑っている中、ジークはミアさんのフカフカに幸せを感じていると、ミアさんは誰にも聞こえないようにそっと、ジークの耳元で呟いた。『上に行く時、気を付けて』――と。


 

「(上……ギルドマスターの部屋か……それもミアさんが態々こんな状況で言う意味……)」



 ミアさんの突然の言葉に、目を見開いてジークが驚いていると、ミアさんは更に少しだけ続けて『ごめんね。私は君だけ(・・・)の味方にはなれない。どうするのが正解かわからないの。私にはせめてこれを伝える位しか出来なくて――本当にごめんね』と、一度だけ強く抱きしめてから離れた。



「(これは、命の危険まであるのかな?……本格的に気を引き締めて赴かなければいけない気がする。)」


 ジークはそれを教えてくれただけで、ミアさんには感謝しかなかった。だから、お返しに『充分だよ。ありがとねミアさん』と小声で伝えた。離れた温もりを少し残念に感じながら、ジークはミアさんがこれ以上心配しなくてもいいように笑顔で応える。その笑顔を見て、ミアさんは大部落ち着いてきたようだ。


 そしてそのまま、仲間のギルド職員から、一旦休憩を促されたミアさんは、素直に従うと奥の方へ去っていく――。


 ミアさんを他の冒険者達と一緒に見送りながら、ジークは背筋に冷たいものを感じずにはいられなかった。まさかここのギルドの中でなにかされるとは思わず、油断していたことが否めないからだ。


 —―だがしかし、油断さえなければ、こちらには"最高の武器達"がいる。もう何も怖くない。……フフフ、これはフラグにはしない。



 さぁ、不本意だけど、精々愉快な時間を楽しもうじゃないか――。 



★★★



 一階が騒がしかったのが気になったのか、リンクスが戻って来るとジークへと声を掛けてきた。


「ジーク、何かあったのか?」


「あー、ミアさんが元気になったので、みんなで喜んでるだけですよ」 



 ジークはおっとり系の無邪気な笑顔を装い(・・)つつそう応える。リンクスは「そうか。それはなによりだ」と、頷きながら微笑んでいる。



「じゃあ、そろそろギルドマスターの部屋に行こうか!」


「分かりました。マルク、エキス、そろそろ行くよー。こっちおいで。うんうん。2階に行ってマルクが手に入れた魔石を見せに行くからね。たくさん褒めてもらおうね。『……ただ、要"警戒"。"反撃"は"自由"に行え』」


 ジークが微笑みながらしっかりと後ろについてくるのを確認し、リンクスは腹に一物あるのを感じさせないように背を向けて先導した。ただ、ジークの最後の方の小声は聞こえなかったらしく、"警戒"を告げられたわちゃわちゃ達の雰囲気の一瞬の変化と、背を向けたリンクスへと黒い笑みを浮かべているジークの表情には気づかなかった。





 —―2階の一番奥にあるギルドマスターの部屋に到着し、リンクスが扉を開いた時、ジークが先ず感じたのは"違和感"だった。


 その部屋からは、微妙に甘い香りが漂ってきて、それだけで既にイラッと来るのにもかかわらず、他にも何かがなんとなく肌にピリつく感じがある。


 そして、それはわちゃわちゃ達も同じ様で、魔石を持つマルクも、傍にいるウォーベットを守って貰っているエキスも、警戒を数段階強めた雰囲気に変わった。


 もちろんそれは、持ち主であるジークだけが分かることであって、扉を開けてくれているリンクスも、部屋の奥で「あらぁ~ん!いらっしゃぁ~い!」と言っているオンガもまだ気づきはしていない。



 ジークは試しに探りを入れて聞いてみる。


「あー、この部屋、甘い匂いがして気持ち悪いです。ぅっぷ……入ったら気分が悪くなりそうなんで、部屋に入らずこのまま廊下から報告するだけじゃダメですか?」



 それを聞いた"者達"には一瞬動揺が走るが、あくまで平静を装うように――。


「……アハハ、そぉだよなー!もうオンガさん!いくら体臭が臭くて気にしているからって部屋にまで香水振り撒くのはやり過ぎだって、いつも言ってるじゃないですか!ジークがこういうのも無理ないですよ!!」


「……あららぁ~ん、ごめんなさいねぇ~ん。……ただリンクスちゃーん。貴方この報告が終わったらちょっと個人的にお話が出来たわぁ~ん。覚えておいてねぇ~ん。さてぇ~、それじゃあジークちゃ~ん、報告は短時間で終わらせるから、今回は少しだけ我慢して"ソレ"を良く見せてくれないかしらぁ~」


「……(口が滑った!!)アハハハ。いやだなぁーオンガさん、さっきのはじょうだんですからねー。っと、そう言うわけなんでジーク、少しだけ我慢してもらえないか?」


「あー、そうですね。分かりました。我慢します」


「ありがとぉ~ん!」


 渋々了承したという体で、ジークは頷きを返し、リンクスは分からないくらい小さくだがホッとした表情を浮かべる。ギルドマスターであるオンガは流石に腹芸も得意なのか、表情の全く変化は見られなかったが、"ソレ"と言った時に、魔石ではなくマルクとエキスに視線が向けられたのをジークは見逃さなかった。


「(……狙いは、そっちなのか……)」


 ジークはミアさんから"注意"を受けた時から、ギルドマスターを含め2階に存在する者達全てを"敵"として見なすことに決めていた。そして、その内の一人であるリンクスが、マルクの持つ1mの巨大な魔石に異常に興味を示していたことから、"敵達"は冒険者ギルドにとって莫大な利益をもたらす事になるであろうこの特別大きな『魔石』に狙いをつけているのだと思っていた。



 だが、どうやらそうではないらしい……。


 —―おやおやおや、これは僕にとって穏やかな話に収まらない事が、現時点でもう決定してしまったよ。


 よりにもよって、マルクとエキスを狙うなんてね……。


 まあ、話だけは聞いてみようか……。



「さて、じゃあオンガさん!まずは俺の方から簡単に説明させてもらいますね。ジークもいいか?」


「お願いするわねぇ~ん」

「お願いします」


「うし。まず俺達は早朝に、南門外に集合し、それから『新人講習会』の予定地へと目指す予定でした。ただ、途中で新人の一人であるアーク君が体調を崩しまして、一旦夜営の練習を兼ねて休憩をとることにしたんです。」


「うんうん。それでぇ~ん?」


「はい。それで一旦、俺とカナルで夜営用のテント設営と焚火の準備を、ジークは街に戻ってアーク君の身体を温める為の装備を買い求めに街に戻ると言う分担に分かれて行動しました。


 すると、俺達夜営担当の方で魔物の接近の危険があるという事を俺はカナルから、カナルはジークの持つマルクから聞き、そのマルクが単独で迎撃に向かい、俺とカナルは体調の悪いアーク君を支えていつでも逃げ出せるように準備を行いました。


 ……そして、暫くするとマルクの言うとおりに、おそらく大型の魔物がこの街の近くまで接近していたようで、森の奥からは轟音とけたたましい叫び声、それから"おそらく【ブレス攻撃】"であろう一撃が空を横薙ぎに飛んで行くのが見えました。


 森の木々より上に魔物の姿が飛び出して来ることがなかったので、これまた恐らくですが、強力な【ブレス攻撃】から敵は竜。それも"地竜"か、または翼をまだもたない"上位竜の幼体"であるかと考えておりました。ただ、最終的にマルクの持ち帰って来た1m以上もある魔石を見て、俺の予想では"大型地竜"だったのではないかと思います。


 その後、暫く警戒を続けましたが、とりあえずの危険はないだろうと判断し、ジークもちょうど街から戻って来ましたので、一度ギルドの方へと報告に帰って来た――と言う次第です」



「なるほどねぇ~ん。もし、その竜が街へと向かって来ていたのだとするなら、間違いなく大変な自体になっていたでしょうねぇ~。あなた達、よくやってくれたわぁ~。連絡も迅速だから、早速森に冒険者に行って貰って竜の死骸を回収しましょう。今ならまだ魔物に食われる前に貴重な素材の数々が手に入ると思うわぁ~ん。ジークちゃんも期待して待っててねぇ~」


「あ、いえ、僕は要りませんよ」


「えっ!いらないのか?竜だぞ!!それももし大型の地竜ともなれば、その希少価値は計り知れないし、強い装備も作ることが出来るぞ?」


「あー、はい。やっぱり僕はいりません。特に何もしてないですし、僕にはこの子達がいますから。それに竜の素材なんて、まだ扱いきれる物じゃないです。見つかればそのままギルドで活用してください(それに、もし残ってるならマルクが放っておくはずがない。恐らく"キレイ"にしてきたんだろう。探すだけ無駄だ)」


「あらぁ~ん。ありがたいわぁ~ん。それに殊勝な心掛けって美しいわねぇ~ん。ますます食べたくなっちゃったぁ~」


「ひぃぃぃぃ」


「オンガさん!あんた冗談は顔だけにしてくださいよ!!今は大事な報告をしているんです」


「……リンクスちゃーん、あなたの真面目さって好きだけど、ほんとにこれが終わったら楽しみだわぁ~」


「……(しまった。本音が)。そ、それよりも、オンガさん!ま、まだ重要な話が残ってるんじゃないんですか?」


「……そうねぇ~ん。遠回りな話はワタシも好きじゃないし、本題にいきましょうかぁ~」



 きたか……。



「ジークちゃん、貴方の持っている"ソレ"、譲ってもらえないかしらぁ~?」


「……ソレとはなんですか?マルクが持っている魔石の事ですか?それでしたら、一度リンクスさんにもお断りしてますが、申し訳ないで――」


「違うわぁ~ん。そっちのちっちゃい子達の方よぉ~。あ、その小っちゃい子達用に大きい魔石が必要なら、やっぱりその魔石も一緒の方が良いかしらねぇ~ん。もちろぉ~ん、代わりにそれ相応の報酬は、国からちゃんと用意してもらうわぁ~ん。どぉ~嬉しいお話でしょぉ~?それに、竜の素材を丸々回収出来たら、もしかしたら国王様から褒章だって貰えちゃうかもしれないわねぇ~。これはとても名誉な事よぉ~ん。どうかしらぁ~ん?」


「おおおっ、国からの報酬と褒章ですか!それは凄いですね!そうなれば、ジーク、お前一生安泰だな!こんな話は滅多にない。一考してみる価値はあるんじゃないか?」


「………」


「そうそう~、焦って"馬鹿な"答えだけはしないようにねぇ~ん。聞いた話じゃ、その小っちゃい子達、単独で竜を撃破できるのでしょぉ~?そう言うのはね、国の為に使うのが世のため人の為なのよぉ~。それにもしも何らかの理由でその子達の強すぎる力が暴走してしまったら、あなたの力だけじゃ抑えきれないでしょぉ~?ギルドマスターとして、貴方のステータスはちゃんと把握してるのぉ。正直な話ぃ、"ソレ"はあなたには過ぎたる力だわぁ~。……だから、その子達の事はちゃんと相応に管理してあげるから、ワタシに全部任せなさいなぁ~。悪いようにはしないからねぇ。」


「ジーク、君はその年にしては賢い子だ。今、オンガさんが何を言っているのか、ちゃんと分かるだろ?俺は素直に従った方が良いと思う。下手に反抗なんてものはしない方が良い。君は知らないだろうけど、俺とオンガさんはAランク冒険者と同じくらいの力量をもっているし、君を今、監視しているのは俺ら以外にもいるんだ。それに先ほど聞いたけど、君は随分とミアさんとも仲が良いそうじゃないか。当然、ミアさんにも迷惑はかけたくないだろう?だから――」





 オンガとリンクスは満面の笑みでそう言うが……。




 ――おいおいおい、こいつらは一体何を言っているんだ?

 一方的に宣うその勝手な言い分を、まさか本気で言っているわけじゃないよな?

 

 それに、ミアさんに迷惑?まさかこれは今、僕は脅されているのか?

 マルクとエキスの事もこいつらが"管理"するだと?


 それと、いったいその国からの報酬と褒章に、何の価値があると言うのだ?

 それを天秤にかけた時に、マルクとエキスに吊り合うと、本当に思っているのか?


 あり得ないとは思うが、もしも、もしもの話しだ、それを本当に心から、こいつらが本気で思っているんだとしたら――、


 "こいつらはなんて、なんて大馬鹿者なんだろうかっ"。


 —―誰が好き好んで、自分の"大切な存在(マルクとエキス)"と"国の報酬と褒章(ゴミ)"を交換し、こいつらの様な屑共に譲るというのだろうかっ!



 その陳腐な脅し文句と、こいつらが言う力に屈して、この子達の事を、僕が、手放すと考えているのだとしたら、もはや救いなんぞ、どこにもない――。


 貴様らは僕へ、最大級の侮辱をした――。


 ……楽に死ねると、思うなよ。



 ジークは、これまでに無い程、プッツンとキレた。そして、その口から出るのは、もはや人の声とは思えない重苦しさを帯びている。



「――お前たち、どこまでふざけているんだ?」


「「……っ!!!」」



 一瞬前まで、普通だった(・・・・・)、いや、普通の子供だと思っていたソレ(ジーク)を見て、オンガとリンクスは絶句した。


 目に見える大きな変化はない、ただ、存在自体がもう同一人物には思えなかった。


 まるで鮮血の如き赤い髪に、光よりも輝く白髪を交えて、心の奥底まで見通すかの様に碧く透き通った虚ろなる瞳、そして紡がれたこえは恐怖そのものであった。


 『開けてはいけない箱』、『覗いてはいけない深淵』、今のジークを見ている二人の感じるイメージは、まさにそれと同じナニカである。


 自分たちはとんでもないことをしてしまった。と、その時になって二人はようやく気付きだす。


 それでも、ギルドマスターとしての意地だろうか、オンガは何とか声を振り絞った。

 そこには普段の口調の装飾は最早みられない。

 リンクスに至っては、心臓を止めない様に意識しないと、もう呼吸すらままなくなっていた。



「お、おまえは、"魔族"、なのか?」

「かひゅ、かひゅ、かふ、はっ、はっ、は、」


「魔族?ほぅ、お前達には僕が魔族に見えるのか?残念だが、僕はただの人間だよ」


「お、おまえが、"ただの"人間なわけがない、こんな」


「ほぅ?何を震えているんだ?僕はまだなにもやっていないぞ?僕はただ、"怒り"をもって接しているだけだ。お前たちは、自分が一体何を宣ったのか、ちゃんと理解しているのか?この真なる"怒り"はもはや止まらないぞ?見逃して貰えるなどとは思うなよ?」


「な、なにをいっている!!ギルドに逆らうと言うのか!……グッ、このままではダメだっ。ベルンドっ!作動しろっ!!」



 余裕が無くなり口調まで本来のモノに戻ったオンガは隣室まで響くような大声を出して"合図"を出す。


 —―すると、室内自体に魔道具でも仕掛けていたのか、特定の人物を縛る効果を持つ魔方陣が、ジークを含めてわちゃわちゃ達やウォーベットにまで発動した。


 しかも、これはただ物理的だけに縛るわけじゃなく、発動して縛った対象の魔力までも霧散させて使用不能にする効果まである。よって、これが発動した瞬間から、対象者は物理的にも魔力的にも行動不能になる。


 オンガ達は、目的が強制的に成功したと確信した。


 これでジークが使っているであろう、この不思議な苦しい圧迫感もなくなる筈……。


 —―だが、無くなる筈のそれは、オンガ達の思惑を裏切るかのように消えはしない。



「ど、どうして!まだ、消えない!!これは、いったいなんのスキルだ!!」


「スキル?僕はまだ何もしてないぞ?なにかの魔法を発動したのはそっちの方だろう?おかげで僕は身動きも取れないし、魔法も使えない。この状態で、なんのスキルを使えというんだ?――とりあえず、うっとおしい。エキス、今すぐ、この部屋以外の2階部分を全て吹き消せ!邪魔だっ!!」

 

 ジークからの指令に、"動けないはず"のエキスは、軽々とピシッと敬礼!を決めると、部屋の向こうに居るであろう"者達の方向"へ向かって、わぁーーーっと突進し、壁際でピタッと急停止した。


 —―すると、その瞬間からそこは、まるで元から何もなかったかのように、消え去った(・・・・・)


 ギルドの2階に残るのは、一番奥にあったギルドマスターの部屋のみである。

 もちろん、破片等が隣家などを傷つけないように、エキスは完璧に調整して、塵さえ(・・・)残さずに消した。



 そして、オンガ達がその光景に驚く暇さえ与えぬまま、ジークはマルクへと更なる「反撃」を命じる。


 それにより、ジーク達にかかっていた、"程度の低い魔法"はマルクに書き換えられ、逆にオンガとリンクスへと魔法が跳ね返されることとなる。


 しかも、ただ跳ね返しただけではなく、マルクはオンガとリンクスの全てを掌握した(・・・・・・・)

 二人はもう、動く事、魔法を使う事はおろか、息をするのも目を閉じるのも、血流の流れすらマルクの思うがままとなる。



「(これはいったい!何が起こっているの!ワタシ達の目の前に居るのはなんなの!!)」


「(こんなの!こんなの化け物じゃないかっ!!は、話しと違う!!こんなのどうにかできるわけがない!!う、動けない!!呼吸も無茶苦茶だ。苦しい。身体中を虫が這うような、この悍ましい気持ち悪さがあるのに叫ぶことも出来ない!ひたすら"受け入れ続けなきゃいけない"この地獄!!い、嫌だ!だ、誰か、助けてくれ!!!)」



 そんなリンクス達の悲鳴や思いは誰にも届かない。

 唯一お互いだけが、その気持ちを共有することが出来るが、そこに救いなどありはしない。

 そして、精神までがマルクの手のひらの上で弄ばれている様で、狂う事すら許されることもない。



 ――逃げることも助かることも、もう決して無い。

 その身を支配するのは、恐怖のみ。

 消して終わらない悪夢だけが、ずっと傍にあり続ける。





 ――彼らは一般的に見たら、悪いことはしていないのかもしれない。

 ただこの街を、自分たちの国を守ろうと思っての行動であり、強大な力をもつ2体の"ゴーレム"を回収し、万が一にもステータスの低い子供が暴走させるような事が無いように未然に防ぎたかっただけ、原初の行動理念はたったそれだけだ。


 ――ただ、彼らは間違えた。かける言葉を。

 そして、測り違えた。ジークの事を。


 彼らは最初からもっと疑ってしかるべきだったのだ、こんな強大な力をもつ武器を、ただの子供(・・・・・)が持つわけがないと。

 そして、同時に知るべきだった、この世界はステータスを中心に物事が回るが、それ(ステータス)だけが『力』の全てではないと。


 しかし、それはもう幾ら後悔しても遅い事。

 彼らに救いはもうありはしない。

 足の先から頭の天辺まで、ひたすらゆっくりと、傷んでは戻されながら、やがて全てが擦り切れるまで――




 ただ彼らは終わりを願い続ける――。






 ――その日、王国第二都市『ユパジルバーバ』において、その街の冒険者ギルドに所属するAランク冒険者数名と、ギルドマスター"オンガ"は建物の2階部分と共に、人知れず消え去った。


 街には数々の噂が飛び交ったが、それらの噂は、どれ一つとして正解に辿りつくことは無く。

 その正解を知る者達は、己が胸の中に"その存在"を隠した。

 何故なら、次に消えるのが今度は自分かもしれないから……。


 彼らが言いようのない恐怖に怯える日は、まだしばらく続くことになるだろう。


 それ(・・)がもうこの国にはいないと、知ることになるまで――。



★★★

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