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第十六話 処したいジークと処されたくない盗賊

『暇潰したい神さま。』にアクセス頂きまして、ありがとうございます。


今回、急にキャラを増やすことにした為に、大して物語が進みませんでした。

短めになってしまったので、おまけ感覚でお楽しみいただければ幸いです。

それでも良かったら暇潰しにどーぞ――。

★★★



 夜、宿屋への帰り道で、またもや盗賊(?)に襲われたジーク達は、結果的にケガ一つ追うことなく撃退することに成功した。


 だが、敵の殺意は前回とは比べられない程高く、下手をしたら大切なマルクやエキス、ウォーベットがケガをしていたかもしれない。これはもう呑気に放置していていい存在ではないと感じ、マルクとエキスには逃走した盗賊の追跡に向かわせ、自分とウォーベットはこれから瀕死状態で倒れている者達とちょっと愉快なお話タイムである。



 マルクとエキスによって瀕死にされた5人の男達は、地面で仰向けのまま手足が氷魔法でくっついていた。体勢は微妙に異なるものの、無理にでも引きはがして逃げようとすれば、皮膚が一緒に剥がれてしまうだろう。……痛たたた、その光景を想像するだけでも痛々しい。


 もちろん盗賊達もそこまでする者は居なかったようで、ほぼ全員が今は大人しく寝っ転がっている。



 —―だが、それには少し大人し過ぎる様な気もした。


 ……少し不審に感じたジークは、ウォーベットに乗ったままその人達へと近寄ってみる。



 すると驚いたことに、既に彼ら5人のうち4人が息をしてなく、なんとなくだけど毒で死んでいるように伺えた。


 『情報を漏らさないように死ぬ』、そんな事を普通に選択できてしまう連中なのか。

 それを見たジークはさっきまで以上に、敵の事が気に食わなくなった。


 ……とても不愉快です。



 ジークは、胸の中にムカムカとした気持ちを隠しながら、5のうち残った1人の少年へと近づく。



「……ぅぐっ……ぅぅ……ぇぐっ……」


 歳の頃はまだ15、16歳の成人したてと言うところだろうか。氷で身動きを封じられ仰向けのまま、彼は涙を零していた。



「……すみませんラジーさん、すみませんダートさん、すみませんナックさん――」



 彼は涙を零しては仲間の名前を呟き、ひたすらに謝っていた。



「何を泣いているのですか?」


「……ぐっ……うるさいっ……お前さえ、お前さえ死んでれば……俺は、俺達はっ!」


「いやいやいや、嫌に決まってるじゃないですか。そもそも襲ってこなければ良かったでしょうに――。」


「…………」

 

「それも、口を割らない為に死ぬことを選べるなら、最初から盗賊なんてやめて普通に冒険者として命をかけてた方がまだ健全だった」


「ふ、ふざけるなっ!俺たちは盗賊なんかじゃないっ!俺達は闇ギルド『黒死鳥』の――」


「ほぉ、闇ギルド『黒死鳥』の――?」


「…………」


「…………」


「……なんでもない」


「やっぱり盗賊でしたか。」


「……ぐっ、ち、違う!だが、俺はなにも話すつもりはないっ!例え殺されようとも――」


「いや、無理しなくていいですよ。服毒出来なくてさっきまで泣いて謝ってたじゃないですか」


「う、うるさいっ!黙れっ!」


「うんうん。まだ若いですしね。死にたくないって気持ちもわかりますよ」


「え、偉そうにっ!お、お前なんか俺よりよっぽどガキだろうがっ!」


「そのガキからすると、一人だけ毒飲めなかった事を謝るより、まず僕に謝って欲しいですけどねー。」


「……お、お前は標的で、俺たちはただ命令に従っただけだ。だから俺はお前に、こ、これっぽっちも悪いなんて思ってないからな!」


「はいはいはい。まぁ、だいたいの事情は分かりましたから。もういいですよ。」


「なっ!お前、俺からいったい何を聞きだしたと言うんだっ!!」


「……な、なんか、貴方と話していると気が抜けますね。僕はこの後も忙しいんで、ここらで失礼したいんですが――」


「な、なにっ!お前どこに行く気なんだ!――ま、まさかっ!」


「えっ?あー、そのまさかです。ちょっと今から闇ギルド『黒死鳥』を壊滅させて来ようかと」


「はっ!お前如きにそんなことが出来るわけがない!」


「ほぅ、まだ強い人が残っているのですか?」


「当たり前だ!ギルドマスターや幹部の方々と比べれば、お前なんか足元にも及ばない!」


「ほぅ。……でも、あなた達は実行部隊の要なのでは?そのあなた達が居なくなれば、闇ギルドの戦力は半減も良い所でしょう?」


「馬鹿め!この街にはまだ30人の…………あ。――あぁぁぁぁ!!」


「ふははっ。……情報提供ありがとうございました。普通ここまで簡単にいかないんと思うんですけど、あなたは最高にチョロかったです」


「あああああああ!俺は!俺はぁぁぁぁぁ――」


「ドンマイっ!きっとそのうち良い事がありますよ」


「ねえええよ!!絶望してるんだよぉぉぉぉぉ!!」


「そうですか。――では、僕はトドメは忘れないタイプなので、そろそろ――」


「えっ!?」


「えっ?」


「お、俺も殺すのか?み、見逃してくれないのか?」


「んー。『盗賊は生死を問わず衛兵に突き出して、身包みは全部剥げ!』って教えてもらったんですけど。見逃さなきゃいけないルールはないですよね?」


「だから俺は盗賊じゃねえよ!暗殺者だっ!」


「なおダメでしょうに。ふふふ、貴方ほんとにお馬鹿さんですね。……んー、そこまで生き残りたいですか?」


「ああ!な、なんでもする!だから殺さないで――」


「ん?」


 今、なんでもって言ったね――。

 って、盗賊はみんなこれを言うんだろうか。前回もやったから今回はいいよもう。

 それより、彼をどうしようか。見逃して、復讐されるなんてのは一番笑えない話だ。

 ……んー、でもいい方法が全然思い浮かばない。


 やっぱり、処してしまうのが一番良いんじゃ――。



「怖えよ!お前無表情になるなよ!!今絶対に殺そうと思ってただろおおおお!!」


「………」


「お願いだから返事してよぉぉぉぉぉ。嫌だぁぁぁぁ、死にたくなんてないよぉぉぉぉぉ。今まで沢山、沢山我慢して生きてきたんだ!こんな最後なんて嫌だよぉぉぉ。」


「……んー、僕じゃいい方法が見つからないんですよね。逃げられたり復讐されたりなんかしたくないですし――」


「じゃ、じゃあ!俺を"奴隷"にすれば!!それなら、俺はお前に危害を加えることが出来なくなるだろ!」


「えー、いらないです」


「えええええ!!!」


「そもそも奴隷なんて必要ないですし、あなたも本当は嫌でしょう?」


「そんなの!生き残れるなら俺はそれでもいい!だから必要ないなんて言うなよ!!」


「えー」


「それも女の奴隷なんて普通なら金貨とか払わなきゃ買えないんだろ?それも俺みたいな戦闘技能(微妙でも)もあれば値段も跳ねあがるらしいぞ。てかなにより――俺、美少女だろっ!!!」


「んんん?」


「な、なんだよぅ」


「……あなた、男の子じゃないんですか?」


「俺は女だ!嘘だと思うなら調べてみればいいだろう!――だがな!身体は好きにできても、心まで好きにできるとは思うなよっ!!」


「………」



 ふぅ……どうやら色々と思い違いをしていたようだ。"彼"は"彼女"だったらしい。あ、調べませんよ?

 『俺っ子が実は美少女だった!!』ってこういう時のあるある話ですけど、実際に目の前にしたときは結構わかんないものなんですね。正直言って吃驚だよ!


 だが、彼女が言っているように【奴隷契約】だけしてもらって、あとはお店に任せれば僕に対して危害を加えることが出来なくなるからいいかもしれない。なんかもう殺し難くなっちゃったって気持ちは正直あるんだ。


 それに、敵はまだ30人以上いる。そっちの方が今は重要――。



「あー、わかりました。じゃあ、君は殺さずに奴隷商人の所で【奴隷契約】を結ぶ事にします」


「おおおおお。」


「じゃあ、朝になったら冒険者ギルドに集合してそれから奴隷商人の所に行きましょう。さっき言った通り、僕とこの子はこの後忙しいから……」


「お、俺は?それまで何を――」


「貴方は、その人達を弔ってあげてください。僕だと燃やして終わりだったんです。あなた、一応世話になったみたいですし――ゆっくりお別れくらいはしたいですよね?……まぁ、敵である僕に言われたくないでしょうけど……」


「……あ、いや、うん。そうする。……でも、俺を一人にして良いのか?逃げちまうかもしれないぞ?」


 ほんとに逃げる人はそんな事確認しないでしょ……と思いつつ、ジークは彼女の傍へと近寄り、鎖骨のところに指を当てる。



「えっ?なにっ?いきなりっ!!……あんっ」


「変な声出さないでください」



 鎖骨をなぞる様にジークが指を動かすとそこには小さな紋様が刻まれた。


「これは逃亡防止の居場所が分かっちゃう簡単な【ルーン】です。これでもう逃げられないから、朝になったら冒険者ギルドにちゃんと来るんだよ。いいね?」


「は、はい。ごしゅじんさ――」


「まだ奴隷にした覚えはないです。身動きを封じる氷は、もうそろそろ溶けると思うでのあとはよろしく。――あっ、エキスもちょうど戻ってきた。よし!行こうかウォーベットっ!」 



 タイミング良く戻ってきたエキスは、ジークへぴこっと敬礼!をして『敵の潜伏場所発見!作戦は順調です!!』と言う気持ちを表した。


 ジークはエキスを撫でて褒めると、ウォーベットに乗ってマルクの待つ敵の潜伏場所へと颯爽と向かって行く。



 スライムに乗って闇夜に消え去るジークの後ろ姿を、頬を赤に染めた少女は静かに見送った――。




★★★

またのお越しをお待ちしております。

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